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「新内閣発足へ 『山積』する課題 国民の視線は?」(くらし☆解説)

太田 真嗣  解説委員

安倍総理大臣は、あす(11日)、内閣改造と自民党の役員人事を行うことにしています。そうした中、国内外で山積する課題を国民はどう見ているのか。9日に公表された、今月のNHKの世論調査から読み解きます。

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【安倍内閣の支持率】

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いまの安倍内閣の支持率は、▽「支持する」が、先月より1ポイント下がって48%。一方、▽「支持しない」は、逆に2ポイント上昇して33%となりましたが、全体として見れば、大きな変化はありません。
安倍総理大臣は、先月、佐藤栄作・元総理を抜いて、総理の在任期間が戦後最長となりました。いま、米中対立の激化や、悪化した日韓関係、また、国内でも、消費増税、あるいは年金不安といった課題が山積していますから、ここは、しっかり腰を据えて、政権運営にあたってほしいということだろうと思います。

【日韓関係】

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今回の調査で、いまの日本と韓国の関係について、「どのように感じているか」を聞いたところ、▽「非常に懸念している」は32%、▽「ある程度懸念している」が36%で、▽「あまり懸念していない」は15%、▽「まったく懸念していない」は9%でした。「懸念している」=「心配だ」という方は、全体の7割近くに上っています。

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その上で、「政府は、韓国に対し、どのような態度で臨むべきと思うか」を聞いたところ、▽「関係を改善するため、歩み寄ることが必要だ」は35%。それに対し、▽「歩み寄ってまで、関係改善を急ぐ必要はない」は55%で、「毅然として対応すべき」といった声が半数を超えています。

実際、政府や与党の関係者に話しを聞いても、「今の韓国の政治状況を考えると、ムン大統領が、日本に対する態度を軟化させるのを望むのは難しい」という見方が多くあります。政府は、「国際法や国内のルールに則って冷静かつ適切に対応していく」としています。同時に、対立が長期化の様相を見せているからこそ、そうした『政治の問題』と、『国民レベル』、あるいは『文化交流』などは、「きちんと分けて対応する」というのが、日本の毅然とした態度を示す上でも、大事なポイントだと思います。

【消費増税・軽減税率・ポイント還元制度】
来月の消費増税にあわせて、政府は、食料品などを対象とした軽減税率や、キャッシュレス決済を推進する『ポイント還元制度』を導入しますが、消費者などから、「制度が複雑で分かりにくい」という声も出ています。

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そこで、これらの制度について、どの程度、理解しているかを尋ねたところ、▽「理解している」と答えた人は、▽「よく理解している」…8%、▽「ある程度、理解している」…43%、をあわせて、51%でした。これは、逆に言うと、制度のスタートが迫っているのに、未だ半分ぐらいの人しか制度を理解できていないと見るべきでしょう。さらに問題なのは、これらの制度、中小の小売店などが主な対象となりますが、自営業の方では、「理解していない」が半数を超えており、「まったく理解していない」と答えた人も20%近くいることです。自営業の方は、新制度の導入に伴って、自ら対応しなければならないことが多くあります。全体より、制度を「理解している」という回答が少なかったのも、実際に、「制度の複雑さを、より実感しているから」ということの表れなのかもしれません。

政府は、「増え続ける社会保障費などを支えるためには、安定した財源となる消費増税が必要だ」としています。その上で、「景気の腰折れを招かないよう、12分の対策を講じる」方針です。ただ、制度を整えても、それが充分利用されなければ、思うような効果は出ませんし、仮に、「制度を知らなくて損をした」となれば、かえって国民の不満を招くことにもなりかねません。また、専門家の間には、「こうした政府の対策だけでは、個人消費の拡大にはつがらない。国民の将来への不安を払拭することが必要だ」という指摘も出ています。

【年金制度】
では、その将来への備えはどうなっているのでしょう。

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政府は、先月、私達が将来受け取る年金額の見通しを公表しましたが、今後、少子化の進展などで年金の水準は徐々に下がっていき、およそ30年後には、厚生年金は、およそ2割、国民年金は、およそ3割、年金が目減りする見通しです。「今後、年金の支え手が少なくなるので、いまの給付水準を維持することは難しい」というのが理由です。

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そこで、今回、年金の給付と負担について、考えを聞いたところ、▽「将来の給付水準を維持するためなら、負担を増やしてもよい」は40%。一方、▽「給付水準が下がっても、負担は増やしたくない」は43%と、意見が分かれました。
全体で見ると、まさに、「世論は二分している」といった感じですが、これを年代別で見てみますと、60歳以上では、「給付を維持すべき」という声が多く、年代が若くなるほど、「負担を増やすべきでない」という声が増えているのが分かります。2つの意見の対立は、「どちらの選択が正しいか」というより、いま、自分が、『保険料を払う側』にいるのか、あるいは、『年金を受け取る側』にいるか、といった、立場の違いが大きいのかもしれません。

政府は、年金制度の改正について、年内にも具体策をまとめ、来年の通常国会に法案を提出したい考えです。まずは、こうした世代間の壁をどう乗り越えるか。そして、年金制度に対する不安、あるいは不信感を取り除くためにも、国民の幅広い理解と納得が得られる十分な議論が求められます。

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【内閣改造・自民党役員人事】
安倍総理は、あす(11日)、内閣改造と自民党の役員人事を行い、新たな陣容で、内外の諸課題に臨む方針です。
安倍総理は、「安定と挑戦」を、今回の人事のキーワードにあげています。まず、その『安定』の方から言うと、これまでも政権の中枢を担ってきた、麻生副総理兼財務大臣や、菅官房長官、党側では、二階幹事長などを留任させ、政権の骨格は、今回も維持する方針です。注目は、もう一方の『挑戦』の部分を、国民にどうアピールするかです。

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ちなみに、今回の調査で、「新内閣は、何に最も力を入れて取り組むべきか」を聞いたところ、▽社会保障が28%と最も多く、次いで、▽景気対策が20%、▽財政再建が15%などとなっています。

また、安倍総理は、憲法改正の実現に向けた議論も前に進めたい考えで、今後、自民党として、どのような体制で臨むかも今回の人事の焦点のひとつです。
安倍総理は、新内閣を発足させた後、記者会見を行うことにしています。ここで取り上げた、日韓関係、消費税、そして、年金改革も、もちろん、新内閣の重要課題となりますから、安倍総理が、どのような方針を示すかも、あわせて注目したいと思います。

(太田 真嗣 解説委員)

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