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「住まいと服装の工夫で熱中症対策」(くらし☆解説)

中村 幸司  解説委員

本格的な夏を前に熱中症対策について考えます。
熱中症の対策では、こまめな水分補給が大切ですが、生活の様々な面でも「できる対策」「必要な対策」があります。そこで“住まい”と“服装”に注目して、熱中症対策をみてみたいと思います。

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◇室内でも必要な熱中症対策
熱中症は、屋外だけでなく住まい、つまり住宅の中でも対策が必要です。2018年、全国で救急搬送された人の熱中症の発生場所を見ると、およそ40%が「住居」でした。この中には、一部、住居の外の敷地内という場所も含まれていますが、住宅の中にいても熱中症には注意しなければならないのです。

◇住まいの熱中症対策
住宅での熱中症対策でどのような工夫ができるのでしょうか。まず、太陽の光が入ってくる窓についてみてみます。

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真夏は、日が高いので、南向きの窓からは、あまり直接の日射は入ってきません。むしろ、西向きや東向きの窓の方が、夏場は、日差しが多く入ってきます。特に気温が上がった午後に日があたる西向きの窓は要注意です。
西向きの高さ2メートルのガラスの引き戸があると、午後3時から4時ころでは1000ワットのストーブ2つが窓の外にあるような感じになります。何もしないと部屋の中が相当暑くなりそうです。
対策としては昼間ですと、カーテンやブラインドを閉めるということが考えられます。ただ、日射の遮り方で効果が違ってきます。

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同じブラインドでも、窓の内側で遮った場合は、熱の51%、つまり半分は室内に入ってきてしまいます。ブラインドと窓ガラスの間の熱などが部屋に入ってくるからです。
これに対して窓の外で遮ると、18%しか入ってきません。遮る場所によって、大きく違うのです。

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このため、「すだれ」や「よしず」を使って、窓の外で日の光を遮るのが効率的とされています。このとき、風で飛ばされると危険ですので、固定の仕方には注意してください。

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窓の他にも、壁や天井・屋根が暑くなります。鉄筋コンクリートのマンションでは、壁や天井の室内側の表面が、31度ないし32度以上にもなることがあります。このため、部屋の温度が下がりにくくなります。

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上のグラフは、2011年7月の2日間の東京都内の気温の変化を水色で示しています。この日、部屋の中の温度がクーラーなしで、どのように変化するか測定した結果が、緑色と紫色の折れ線です。「木造の戸建ての住宅の室内」(緑色の線)は、夜になると、やや気温が下がります。「鉄筋コンクリートのマンション」(紫色の線)は最上階の室温です。1日中、31度と33度の間くらいでほとんど変わりませんでした。
鉄筋コンクリート造の方はかなりの高温です。一方で木造の戸建て住宅もよく見ると、ほとんど28度以下になっていません。都市部では、夜になっても外気の温度があまり下がりませんので、建物の構造にかかわらず、クーラーなしで過ごすのは危険だということがわかると思います。

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上のグラフの右の黄色い円内を見てください。気温が一定時間に下がっているのが分かります。これは、室温を測定していた期間中に一時的にクーラーをつけてしまったため、下がったとみられています。
クーラーを使えば、鉄筋コンクリートでも室内の気温は下がるのですが、注意して見てほしいのは、クーラーを切ったら、すぐに元の気温に戻っている点です。寝るときに、タイマーで時間が経ったらクーラーが切れるようにしている人もいると思いますが、クーラーが止まった後に、部屋が再び高温になることが考えられるのです。
建物は、日当たりや断熱材の使い方などで状況違うので、一概には言えませんが、下の階より上の階、さらに西向きの部屋は、より夜中の温度に注意してほしいと思います。

◇高齢者とクーラー
お年寄りの中には、クーラーを使いたがらない人もいますが、ここまで暑いとクーラーを使った対策が必要だと思います。お年寄りは、部屋の暑さを感じにくくなっているともいわれています。温度計を室内に置いて、28度を超えないように適切にクーラーを使うようにしてほしいと思います。
つけっぱなしにすることに、抵抗感がある人もいると思いますが、クーラーのリモコンで設定温度を調節すれば、冷えすぎないようにもできます。家族や近所の人が、お年寄りのクーラーの使い方などを注意して見てあげることも大切だと思います。

◇服装の熱中症対策
もう一つのテーマ、服装ではどのようにするとよいのでしょうか。

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服装による熱中症対策の考え方は、
▽体から熱を逃がして、
▽外からの熱を遮断すること、
▽汗を早く有効に蒸発させること、
上記3点が大切とされています。

◇考え方3点にみる具体的対策
体から熱を逃がす具体的な方法を見てみましょう。

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暑いとき人の体は、主に顔や首、手足から熱を放出しています。したがって、室内にいるときは、赤い部分を中心に皮膚を露出させると体の熱を逃がしやすくなります。長袖より半そで、長ズボンより半ズボン、住宅では、はだしが良いということになります。

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屋外では、特に外からの熱、つまり日光を遮断することが大切になります。
効率的なのが日傘です。そして帽子です。帽子はつばが広く、後ろに覆いがあると顔や首に光があたらないので、なお良いとされています。
服装は、白っぽい色で、長袖を腕まくりで調節して、長ズボンなどで日差しを遮るようにします。
長袖・長ズボンですと、体の熱を逃がしにくくなります。そこで、熱中症対策には、ゆったりとした服が勧められています。体の動きによって服の中の空気が換気されて、熱がたまらないようにします。効率的に空気を入れ替えるには、襟元や袖が大きくあいたものが良く、シャツの裾をズボンの中に入れないようにするとより涼しくなります。
ただ、そうしたスタイルは、仕事では難しいかもしれません。クールビズの普及で以前より比較的ラフな服装が仕事でも一般的になってきていますから、うまく着こなしてほしいと思います。逆にネクタイは、換気に重要な襟元をふさいでしまうので、熱中症対策には適さないことが分かると思います。

そして、汗を蒸発させるには、どのような工夫があるのでしょうか。

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特に汗が大きな玉になるくらい、汗をかいたときが問題です。汗が流れ落ちると皮膚表面で蒸発しません。せっかくの汗が体温を下げる役割をしてくれないのです。

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こういう時は、肌着が効果があります。1枚着るので、余計暑いように思いますが、肌着が汗を吸って、その汗が蒸発するとき体から熱を奪ってくれます。
胸や背中は、汗が蒸発しにくいので肌着の効果が大きいとされています。肌着を着た時も、上にゆったりで、通気性の良い服を着ると熱や湿気がこもりにくくなるので、より涼しく過ごすことができます。

部屋の中にいるときと屋外、汗を多くかくときなど、状況に応じて服装を工夫することが大切です。

近年、日本の夏は厳しい暑さが続くことが多くなっています。
住まいや服装の着方などを工夫して、併せてクーラーを適切に使いながら、こまめな水分補給をして、熱中症にならない生活を心がけてほしいと思います。

(中村 幸司 解説委員)

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