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「どうなる?オンライン診療」(くらし☆解説)

土屋 敏之  解説委員

◆病院に通わなくても診察を受けられる、いわゆる「オンライン診療」が最近、広がっています。一方で不適切な診療も行われていると見られることなどを受けて国が先週、制度の見直し案をまとめました。

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 オンライン診療は患者が自宅や外出先からスマートフォンやパソコンなどを使い診察を受けられるものです。最近はスマホのアプリで医療機関を探せるものも色々出ており、それを使って病院の予約を入れ、スマホのカメラとマイクを使いテレビ電話のような形で診察を受けて、薬の処方箋を出してもらうなどの形です。支払いもクレジットカードで済ませることもできます。
 そもそもオンライン診療は遠隔医療とかネット診療とも呼ばれ、医療機関がない離島やへき地で有効な手段になることが期待されてきました。2015年に厚生労働省が「離島・へき地に限らない」とする通達を出したことが事実上の解禁とも受け止められて、今は大都市圏を中心に急激に広がっています。
 去年春にはオンライン診療を行うための国の指針が作られ、診療報酬の改定で保険診療の点数も設定されました。

◆オンライン診療はどんな制度で行われている?

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 まず現在のルールでは、保険が効くか効かないかに関わらず初診はオンラインでなく、医療機関に行って対面での診察を受けるのが原則です。これはスマホの映像や問診だけでは、医師が直接患者を診たり触診したり色々な検査をするのに比べて他の深刻な病気が隠れていないかなどを見極めるのが難しいためです。
 そして、保険診療の対象になりうる病気は限定されていて、実際よく行われているのは高血圧・糖尿病などの生活習慣病やぜんそくなど慢性の病気です。最初は対面診療で病気の診断をしっかり行い、医師が患者の状態を把握している、そして定期的に決まった薬を出している状況で毎回わざわざ通院しなくてもいいんじゃないか、というケースをオンラインに切り替えるといったイメージです。
 薬は院外処方が原則です。医師はオンラインで診察した後、現状では処方箋を患者に郵送し、患者はその処方箋を持って近所のかかりつけ薬局などで薬を出してもらう形になっています。

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一方こうした国の指針に照らして不適切な診療も行われていると見られています。例えば、最初から一切通院する必要がないとネット上でうたっている施設が少なからずあること。
 また、患者の様子を映像で診ることなくチャットなど文字情報のやりとりだけで済ませるケース。これは正しい診断ができないおそれが高くなります。そもそもチャットだけでは相手先が本当に医療機関・医師なのかさえもはっきりしないでしょう。
 そして、院外処方でなく医療機関から患者に直接薬を宅送するとしているケースもあります。

◆患者の側からするとその方が便利では?

 確かにそういう面はあります。そもそも薬の扱いを巡っては以前から様々な議論がありますし、最近は電子処方箋を進めていこうという動きもあります。ただ、医療機関で処方するようないわゆる強い薬は本来は薬剤師がきちんと患者に副作用などの説明をして渡すことになっています。また別の問題として、処方薬を転売する目的で患者になりすましてオンライン診療を受け、宅配で簡単に手に入れられるようになるのでは?などの懸念もあります。特に保険診療の場合、国民が負担する医療費が適切に使われているかという問題にもつながります。
 こうした中、厚生労働省が医師など有識者を集めた会議で指針の見直しを行ってきて、先週、新たな案がまとまりました。

◆どう指針を見直す?

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 見直し案ではまず、医師と患者双方が本人確認をきちんと行うことを盛り込んでいます。また適切にオンライン診療を行うには、医師には情報通信機器やセキュリティなども含めた知識が必要だということで、来年度から国が指定する研修を受けることになります。
 そのほか幾つかの変更が加えられますが、ひとつ大きな議論になったことがありました。

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 それは「初診は対面診療」という原則の例外、つまり初診からオンラインを認めるか?です。実は現在、禁煙外来だけは条件付きで最初からオンラインが認められています。
 これを緊急避妊薬、いわゆるアフターピルにも認めてほしいという要望があり検討されたのです。緊急避妊薬は72時間以内に服用する必要があるとされますが、例えば性犯罪の被害にあった女性が直後に医療機関に行って診察を受けること自体ハードルが高いなど、対面診療が困難な場合もあるということで、議論の末、条件付きで認められることになりました。
 ただし、専門医などの間からは緊急避妊薬は完全に妊娠を防ぐわけではなくリスクもあることなど懸念の声もあり、色々な条件がつきました。まず、オンラインで処方できるのは産婦人科医か研修を受けた医師に限定されます。また、処方は一錠に限られ、薬剤師の面前で服用する、約3週間後には通院すること、などです。

◆今後はどうなっていく?

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 新たな指針は早ければ来月にも実施される見込みですが、今後も年1回をめどに検討が行われます。さらに、そもそもこうした指針があっても守っていないケースをどうするのか?全体像の把握を急ぐ必要もあります。
 オンライン診療は近年、規制緩和の流れの中でビジネスとしても拡大が期待され、大都市圏で利便性を求める若い患者の利用が中心になっているとも見られています。一方で、切実なニーズがある離島や医師不足の地域医療の現場で、オンライン診療を生かす方策はまだ十分と言えないように思います。
 国民の健康をどう守るかという本来の視点で、オンライン診療の活用のしかたをさらに幅広く議論していってほしいと思います。

(土屋 敏之 解説委員)

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