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「『高齢ドライバー』『経済』 国民の視線は?」(くらし☆解説)

太田 真嗣  解説委員

6月のNHKの世論調査がまとまりました。▽相次ぐ高齢ドライバーによる事故、そして、▽経済の状況について、国民はどう見ているのでしょうか?
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≪高齢ドライバーによる事故 世論は?≫
高齢ドライバーによる重大な事故が相次いでいます。75歳以上のドライバーについては、おととし3月から免許を更新する際の認知機能検査が強化されていますが、その後も高齢者による事故は後を絶ちません。
そこで、今月のNHKの世論調査で、高齢者が運転免許を更新する際の条件を厳しくすべきかどうかを聞いたところ、▽「厳しくすべき」は65%、▽「厳しくすべきではない」は3%で、▽「どちらともいえない」は26%でした。これを年代別でみても、若い人ほど厳しい声が多かったものの、60歳以上の方でも、「厳しくすべきではない」という意見は、ほとんどありませんでした。実際、悲惨な事故が相次いでいますから、全体として、『今のままではいけない』と感じているようです。
国は、高齢ドライバーが運転できる車の種類や時間帯、あるいは、地域などを限定した運転免許証を導入できるかどうか検討を続けています。
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≪免許証の自主返納の動きも≫
一方で、高齢者の中には、運転免許証を自主的に返納する動きも増えています。警察は、「認知機能が正常な場合でも、身体能力の衰えなどによって深刻な事故を引き起こすケースがある」として、積極的な自主返納を呼びかけています。「心配する家族から運転を止めるように言われた」といった話しも良く聞きますが、ただ、その一方で、「自動車が運転できないと生活が不便になる」といった理由で、自主返納をためらう人が多いのも事実です。
特に、公共交通機関の整備が遅れている地方に住んでいる方などは、通院や買い物など、車がないと困ってしまう方も多いと思います。とは言え、一番大事なのは、『事故を起こさない』ことですから、まずは、『ドライバーとしての重い責任』というものを、しっかり自覚した、まさに大人の判断が求められます。
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≪“高齢者の足“確保に、政治はリーダーシップを≫
しかし、単に、規制を強化し、高齢者に不便を強いるだけでは問題は解決しません。同時に、▽免許を返納しても生活に困らないような交通ネットワークの確保や、▽先進の安全技術を搭載した車、あるいは、▽コンパクトで運転しやすい超小型車などの普及を急ぐ必要があります。
ただ、現実を見ますと、地方の公共交通機関は、すでに維持することも厳しい状況ですし、こうした、新たな技術の向上や普及を強力に推し進めるためには、資金の援助や、様々な規制の見直しも必要です。
高齢化が進むこれからの日本は、高齢者が元気で活躍できるようにしなければ、地域社会も経済も成り立ちません。高齢者の足を確保するため、まさに、政治がリーダーシップ発揮することが
必要です。
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≪景気の現状、国民はどう感じているか?≫

一方、私たちの暮らしに直結する経済の問題。いまの景気の状況について、国民はどう感じているのでしょうか?
先月の月例経済報告で、政府は、景気の現状について、中国経済の減速を背景に「輸出や生産の弱さが続いている」としたものの、全体としては、「景気は緩やかに回復している」という見方を維持しました。
そこで、景気回復は続いていると思うかどうか聞いたところ、▽「続いている」は10%、▽「続いていない」は53%で、▽「どちらともいえない」が28%でした。
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国民の厳しい視線の背景には、何があるのか。一番大きいのは、米中の貿易摩擦の影響などによる『経済の先行きに対する不安』です。アメリカ・トランプ政権は、先月、中国との貿易交渉が進んでいないことを理由に、中国からの輸入品への関税を大幅に引き上げ、中国も対抗措置を発表するなど、米中の対立が激化しています。強い経済力をバックに相手に譲歩を迫る、まさにトランプ流の外交手法で、いま、アメリカと貿易交渉に臨んでいる日本も決して他人事ではありません。
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≪日米貿易交渉、どう見る?≫
日本側は、去年、アメリカと合意した共同声明に基づいて、「TPP協定などの水準を上回る農産物の関税引き下げには応じられない」としていますが、先に国賓として来日した際の記者会見で、トランプ大統領は、「TPPには拘束されない」などと発言しています。
そこで、今後の協議で日本側の主張が守られると思うかどうかを聞いたところ、全体では、▽「守られる」は、わずか8%、▽「守られない」は39%で、「どちらとも言えない」が41%でした。これを支持政党別で見ても、野党支持層の半数以上、無党派層でも半数近い人が悲観的に見ていますし、与党の支持層でも、「どちらともいえない」が、最も多くなっています。
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安倍総理は、「具体的な交渉はこれからだ」とした上で、「共同声明では、『過去の協定で約束した内容が最大限である』との大前提を明確に合意している」として、TPPの水準を上回る市場開放には応じられないという考えを強調しています。

それに対し、野党側は、そうした日米の貿易交渉の具体的な内容や、ことし10月に予定されている消費税率の引き上げについて、政府の考えを質す必要があるとして、速やかに予算委員会での集中審議を行うよう求めています。
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≪消費税率10への引き上げ≫
では、消費増税について、国民はどう受け止めているのでしょう。
消費税率10%への引き上げに賛成かどうかを聞いたところ、▽「賛成」は29%、▽「反対」は42%で、▽「どちらとも言えない」は23%でした。
消費税率の引き上げをめぐっては、与党側が、子育て支援の充実などを訴えて、引き上げに理解を求めているのに対し、野党側は、「いまの経済状況は、前回、増税を先送りした時より悪化している」と、引き上げに反対しています。消費増税の是非は、この夏の参議院選挙でも大きなの争点のひとつになりそうですが、これまでの調査と比べて見ても、いまのところ、国民の意識に、大きな変化は見られません。
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≪内閣支持率≫
今月の安倍内閣の支持率は、安倍内閣を「支持する」という人は48%。それに対して、「支持しない」は32%で、前の月と比べて、「支持」「不支持」とも変化はありませんでした。
国会は、会期末まで残り2週間あまりで、今後、与野党の対決姿勢が更に強まることが予想されますし、今月末には、大阪G20サミットという大きな外交イベントも控えています。さらに、参議院選挙にあわせた衆参同日選挙はどうなるのか?といった話もありますから、引き続き、政治の動きに注目してもらいたいと思います。                                 
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(太田 真嗣 解説委員)

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