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「高度外国人材に魅力的な国は?」(くらし☆解説)

二村 伸  解説委員

日本は今年度から外国人労働者の受け入れを大幅に拡大しましたが、世界中の国が必要としている高度の技能を持つ人たちにとって日本は魅力的な国なのでしょうか、このほど発表されたさまざまなデータをもとに考えます。

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Q.ずばり日本は「魅力的な国」なのでしょうか?

魅力的かそうでないか、見方によって変わるでしょうが、参考になるのがOECD・経済協力開発機構が先週発表したランキングです。
高度の技能を持つ人の中でも、修士や博士の学位を持ついわゆる高学歴労働者にとって魅力的な国、1位はオーストラリア、次いでスウェーデン、スイス、ニュージーランド、カナダの順です。

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Q.日本は、ずいぶん順位が低いですね。

35か国中25位で、韓国やチェコより下です。高度の技能を持つ人材は世界中で引く手あまたで、どうやったら自分の国に来てもらえるか、日本だけでなくどの国も苦労しています。そこで、外国人に魅力的な国かどうか、各国と比較し、何が足りないかを知る手掛かりにしてほしいとOECDがランキングを作成しました。

Q.どうやって順位をつけたのですか。

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OECD加盟各国の就労の機会や所得と税、家族にとっての住みやすさなど7つの項目ごとに点数をつけてランキング化しました。
たとえば、①機会の質は、高学歴外国人が就労しやすいか、失業率や非正規、パートタイムの割合などをもとに計算し、就労が認められない割合が高かったりビザ取得まで何か月もかかったりすると点数が低くなります。
③将来の見通しは、国籍の取得が可能か、一時滞在許可から永住権取得に変更しやすいかなど、将来の可能性についてです。
④家族の環境は、配偶者の入国・就労や子どもの市民権獲得のしやすさ、それに子どもの学力や家族手当などの公的支出も加味されます。
包摂性は、労働力人口、つまり働く意思と能力を持つ人の中で高学歴の外国人の割合や、男女の平等、移民に対する国民の意識などです。外国人が働きやすい環境かを見るものです。

Q.日本は外国人労働者の受け入れを拡大しましたが、高度の技能を持つ人はどのくらい来ているのでしょうか。

日本政府は経済成長と技術革新のために高度の知識や技能を持つ外国人の受け入れを積極的に進め、平成28年には5500人に上り、24年から17倍も増えました。

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最新の数は、去年末時点で1万5000人となっています。さらに政府は2022年末までに2万人をめざしています。
政府が「高度外国人材」と位置付けている人たちは、高度の学術研究、専門技術、それに経営管理の分野で優秀な能力や資質を備えた外国人の研究者やエンジニア、経営者などで、在留期限や家族の帯同、就労などで優遇されます。
ただ、高学歴というだけでは認定されません。お医者さんもそのまま高度外国人材とはなりません。研究や技術、給与などポイントを満たすことで高度が外国人材と認められます。どの国もこうした人材は欲しいだけにより多くの人材に日本に来てもらうためにはまだ改善の余地もあります。

Q.具体的にどんな点で改善が必要でしょうか?

項目ごとの比較を見ると、魅力度が高い国と比べて何が足りないのかよくわかります。たとえば機会の質、就労の項目では日本の魅力度は最下位です。上位の国が9割前後の得点だったのに対し日本のポイントは3割にとどまっています。高度の技能を持っていても日本で専門性を発揮できる機会が少ないというわけです。
もう一つが家族の環境です。

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Q.こちらも順位が低いですね。家族にとって住みにくいということですか?

配偶者が入国、就労しやすいかといった点で日本は順位を下げています。高度外国人材については家族の帯同や配偶者の就労が認められていますが、それ以外の高学歴労働者にとってはまだ他の国と比べて制限が多いのです。日本が高度の技能を持つ人を確保するためには、家族が日本で生活しやすいかといったことも考慮すべきであることがわかります。また、ある調査では、日本では長時間労働を強いられるとか、仕事の評価の仕方があいまいで、昇進が遅いなどといったことも外国人が日本を敬遠する原因にもなっているという指摘があります。

実際に日本で働いている外国人に話を聞いてみました。これから日本の企業で働くドイツ人女性は、「日本はビザの取得や仕事を見つけるのに時間がかかりすぎる。若者にもっとチャンスを与えてほしい。いつも一番下では日本に来る意味がない」
と話していました。また、夫婦二人とも博士号を持っているというパキスタン人男性は、「仕事に就くのは問題がなかったが、子どもができれば保育所の空きがあるか、学校に通うことができるかなど問題がでてくるだろう」と話していました。

Q.日本が他の国より優れている点はないのですか。たとえば収入は日本は良いほうなのではないでしょうか。

その通りです。所得と税では日本は6位です。高度の技能や知識を持つ人は給与などの待遇は良いですね。
また、技能をめぐる環境の項目でも日本は3位です。インターネット環境や英語を話す環境、それに企業の研究開発費用などの点数が良いのです。英語の環境は意外かもしれませんが、高度の技能を有する人たちが働く場ではさほど問題ではないということです。

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Q.より多くの外国人を呼ぶにはどうしたらよいのでしょうか?

今回の調査で日本が他の国と比べて順位が低かった点は、就労の機会や家族の環境です。本人と家族の入国や滞在のための手続き時間の短縮、住宅や子どもの教育、医療態勢の充実などといった生活環境や職場の環境改善などによって魅力を高めることができるのではないでしょうか。

また、今回OECDは、外国人留学生にとって魅力ある国のランキングも作成したのですが、そちらでは機会の質、就労に関して日本は上位でした。

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留学生はアルバイトなど就労の機会は比較的恵まれているということだと思います。それが、卒業後の人たちには狭き門となってしまっているのです。留学生が高度の知識や技術を身につけたあとも日本に魅力を感じて残ってもらえるように環境を整えることも、優秀な人材を確保する1つのカギだと思います。

Q.ランキングからいろいろなメッセージが読み取れますね。

単なる順位づけではなく、どんな分野で優れているか、あるいは劣っているか重要なヒントを与えてくれます。少子高齢化が進み、日本国内の市場が縮小しているだけに、日本が生き残るためには優秀な人材を活用し、世界での競争力を高めていくことが急務です。具体的にどんな分野の改善が必要か、こうしたランキングを分析し、今後の戦略を練っていくことも重要なのではないかと思います。

(二村 伸 解説委員)

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