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「広がるの? QRコード決済」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

きょうは、QRコード決済について、今井解説委員です。

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【QRコード決済。ずいぶん話題になっていますね?】
そうですね。買い物や食事をした時に、QRコードと呼ばれるコードを使って、スマートフォンで支払いをする方法のことです。

【どうやって支払うのですか?】
あらかじめQRコード決済を手がけている事業者のアプリをダウンロードします。k190226_02.jpg
その時に、銀行の口座番号やクレジットカード番号を入れるといった、一定の手続きが必要ですが、
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いったん手続きをすれば、あとは、
▼ 支払いの時に店で示されたQRコードをスマホのカメラで読み取って、自分で金額を入力し、支払う。それで支払い完了です。
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▼ あるいは、大きな店などでは、自分のスマホに表示したコードをレジで読み取ってもらう方法をとっているところもあります。
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【スマホだけ持っていればおカネは要らないのですね。消費者から店側に、どうやっておカネが渡るのですか?】
店の後ろに決済事業者がいて、どういう方法で利用者からおカネが引き落とされるかは、この事業者によります。主に
▼ クレジットカードで、あとから引き落とされる方式や、
▼ 銀行口座から、瞬時に引き落とされるデビットカード方式。
▼ あるいは、あらかじめおカネをスマホにチャージして(=貯めて)おいて、そこから引き落とす方式があります。クレジットカードだと使いすぎを心配する方もいますが、前払いだと心配は減るかもしれません。
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そして、このQRコード決済。今後、利用者が急速に増え、2021年度には、2000万人近くになるという予測もあります。

【日常の買い物は、現金で特に困りません。なぜ、QRコード決済が、急速に増えそうだというのですか?】
確かに、日本では、ATMがあちらこちらにあるので、現金払いで困ることはほとんどありませんが、今年は、QRコード決済に強力な追い風が吹いているのです。

【なんでしょうか?】
政府の、消費増税対策です。
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10月から期間限定ですが、中小のお店で、現金以外で支払いをすると、5%分が還元されることが決まっています。増税は2%分です。それを上回る還元ですので、現金以外で支払いをしたいという人が増えると見られています。このため、現金払いしか受け付けないと、お客さんが逃げてしまうかもしれないということで、QRコード決済を導入する店が増えているのです。

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【クレジットカードや電子マネーもありますが、なぜQRコードなのですか?】
まず、店の負担が少ない点があげられます。
▼ クレジットカードや電子マネーだと、店側は、専用の端末が必要になりますが、QRコードだと、印刷した紙をレジに置くだけでも対応できます。
▼ また、決済のたびに払う手数料も、割安ですし、今、手数料無料のキャンペーンをしている決済事業者もあります。
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【店のコストが安いのですね】
それに加えて、もうひとつ。
▼ QRコード決済が広がっている中国からの観光客は、現金を多く持ち歩かない人が多く、QRコード決済だと、より多くおカネを使ってもらえる。そういう期待もあるようです。実際、地域の商店街やタクシー、屋台、観光向けの人力車など、幅広い業種でQRコード決済を導入する動きが広がっています。
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【消費者から見ると、使える店が増えているということですね】
そうです。一方、決済事業者は、利用する人も増やさなければということで、消費者に向けても、様々な“お得”をアピールしています。

【どのような“お得”ですか?】
▼ 例えば、買い物をするたびに、0.5%から2%程度のポイントが還元されて次の買い物のときに使えたり、その場で割引きを受けられたりします。
▼ また、時折、すべての加盟店で使えるクーポンが届いたり、特定の店で支払いが半額になるセールがあったりもします。
▼ さらに、期間を限定して、抽選で全額戻ってくる、20%分のポイントが戻ってくるといった、特別なキャンペーンもあります。

【うまく利用すれば、かなりのお得になりそうですね】
今は、事業者は赤字覚悟でキャンペーンを繰り広げていますので、利用する側から見て、かなりお得であることは、間違いないと思います。ただ、これだけの大キャンペーンは、いつまでも続くわけがありません。その後も、現金社会の日本でQRコード決済が定着するかどうかについては、現金や電子マネーでは得られない、利用者一人ひとりにあった、個別のお得なサービスをどれだけ提供できるか。そこを見極めていく必要があるように思います。

【でも、決済事業者は、なぜ、赤字覚悟でこれだけのキャンペーンをしているのですか?】
事業者は、購買のデータで稼ごうとしていますので、できるだけ多くの利用者を囲いこむ必要があるためです。
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例えば、
▼ 夕方、よく行くパン屋から、自分が好きなあんパンについて、割引のクーポンが届く。食品ロスを防ぐためということで、ありがたいと思う人もいると思いますが、店が、「このあんパンが好きな人」にターゲットを絞った広告を打てるのも、決済事業者が集めたデータがあるからです。店はそれに対して対価を払う仕組みになっています。
これは一例ですが、こうしたデータをもとにした様々なサービスを提供するためには、どれだけ購買データを集められるかがカギを握ります。今、QRコードの決済事業には、これまでのIT系に加えて、銀行やコンビニなども次々、参入しようとしています。生き残るためにも、とにかく利用者を増やそうと、キャンペーン合戦になっているのです。
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【年末にQRコードを使ったクレジットカードの不正利用が話題になりました。情報漏えいも心配です】
情報が漏れる不安があると、利用をためらいますよね。情報が漏れないよう、決済事業者や加盟店などが集まった産官学の協議会が年度内をメドに、対策のガイドラインをまとめることにしています。安心して使えるよう対策をとることは、利用の大前提です。
その上で、便利だということで、利用したいという人は増えていくと思いますが、その際には、注意も必要になります。

【どのようなことですか?】
▼ 自分がどこで、いつ、どのような買い物をしたのか、というデータを渡すことになるわけですから、信頼できる事業者か。自分のデータを渡すだけのメリットがあるのかどうか。きちんと判断すること。
▼ また、そのデータがもとになり、自分に関心がありそうな広告やクーポンがきますので、知らず知らず買い物をコントロールされることにならないか。その点も、考えることが大事です
▼ さらに、消費生活センターには、おカネをチャージしたのに、使いたいときにシステムエラーがでて使えない。といった、相談も寄せられています。通信システムやソフトに障害が起きることもありますし、大きな地震などで停電が起きてシステムが使えなくなることもあります。ですから、スマホだけに頼るのではなく、いざという時に必要な現金は、備えておく必要もありますよね。
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こうした点をきちんと理解した上で、どうつきあうか判断することが大事だと思います。
(今井 純子 解説委員)

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