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「太陽光パネル火災に注意」(くらし☆解説) 

土屋 敏之  解説委員

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▼1月末、消費者庁の安全調査委員会、いわゆる「消費者事故調」が、家庭用の太陽光発電システムで火災などが度々起きていることを公表した

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 報告されたケースの1つです。千葉県の住宅で住んでいる方が洗濯物を取り込もうとベランダに出たところ、異臭がしてパチパチ音がしたそうです。軒先から煙が出ていて、119番通報しました。消防の調べなどによると、太陽光パネルにつながる配線が過熱して出火したと見られ、パネルだけでなく屋根や屋根裏まで延焼していました。

▼なぜこうした火災が起きる?

 太陽光発電は、太陽の光のエネルギーが半導体のパネルに当たることで電気に変換されて電流が流れる仕組みですが、製造・施工の際に問題があったり経年劣化が進んで接触不良など電気の流れが悪くなると、そこから発熱するといったことが考えられます。
 住宅用太陽光発電は今や200万世帯以上に普及していますが、消費者事故調はこのうちおよそ10万世帯を占めるあるタイプでリスクが高いと指摘しています。

▼どういうタイプにリスクがある?
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 太陽光パネルは大きく分けて、最初から屋根と一体で作られているような「屋根一体型」と、家を建てた後で屋根の上に置く「屋根置き型」があります。「一体型」の中にはさらに3種類程あって、その1つの「鋼板等なし型」と呼ばれるタイプがリスクが高いと見られました。見た目では一体型か屋根置き型か、ぐらいしかわかりませんが、この「鋼板等なし型」は住宅用太陽光全体の4.5%にあたり、およそ10万棟あります。
 実際に火災などを起こしているのはほんの一部なので過剰に怖がる必要はありませんが、万が一にも火災が起きたら大変ですので、そうしたリスクについて知っておいてほしいと思います。

▼火災はどれぐらい起きている?

 火災までは至らなかったものを含めて火や煙が出たという報告は、平成29年までの9年間で全国で127件ありました。そのうち調査の結果、屋根などにまで延焼が広がっていたケースは7件あり、この7件は全て「鋼板等なし型」でした。これは鋼板、つまり不燃性の材料が間に挟まれておらず、しかも屋根と一体で近接しているため、パネルなどから発火した際に木造の屋根板まで火が燃え広がりやすいことが考えられます。そこでこのタイプについて消費者事故調の報告書では国に対応を求めています。

▼どんな対応が求められている?
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 まず経済産業省に対し、メーカーを通じて鋼板等なし型の所有者(住民・消費者)に、他のタイプへの変更を促す、それが難しい場合は保証期間を過ぎているものは応急点検を促すよう求めています。
 また消費者庁には消費者にこうしたリスク情報などを提供するよう求めました。さらに所有者にも、自宅の太陽光パネルが「鋼板等なし型」かどうか確認すべきだとしています。

▼消費者側が自分から何かしなくてはいけない、ということ?

 これが微妙な所です。経産省は業界に対し既に報告書に沿った指導を行っており、メーカーによっては既にリスクがあるパネルの所有者全てに連絡して点検やパネルの交換を進めている所もあります。そうした連絡が来た人はそれに対応して点検や交換することができます。しかし、別のメーカーではホームページに情報を載せだだけで直接連絡はしていないとのことで、対応にばらつきがあります。
 ですから家を建てた際に一体型のパネルを付けたという方や心配な方は、メーカーの ホームページを自ら確認したり販売店の窓口などに問い合わせてみるとよいでしょう。保証書などには「鋼板等なし型」かどうかは普通書かれていませんが、型番を言えばどんなタイプかメーカー側ではわかります。

▼「鋼板等なし型」でなければ心配ない?
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 他のタイプは今回の火災リスクに関する応急点検の対象ではありません。ただし、これとは別に、全ての太陽光パネルの所有者は定期的な点検を行う必要があります。

▼全ての太陽光パネルで点検が必要とは?
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 2017年に固定価格買取制度(FIT制度)の法律が改正され、一般住宅でも太陽光発電システムの所有者は保守管理義務を負うことになりました。その保守管理のため点検を行うことになっていて、ガイドラインでは4年に一度を目途に点検することとされています。これは、一般住民であっても消費者であると同時にFIT制度で売電している事業者という面もあるため、事業者として設備をきちんと管理する義務があるとされたのです。
 2017年以前に太陽光パネルを設置した人たちにも、さかのぼってこうした義務が課されたのですが、このことはほとんど知られていないのではないかと思われます。

▼点検するにはお金もかかるのでは?
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 それも課題です。購入時の保証内容やメンテナンス契約などにもよるため一概に言えませんが、新たに点検を頼むと通常1回数万円かかるとされます。
 一方で、鋼板等なし型の火災リスクというのは今回指摘された、購入時にはわからなかったことなので、それを後からユーザーに負担を負わせるのはおかしいのでは、と感じる方も当然多いと思います。この鋼板等なし型の応急点検や交換の費用も、メーカーによって対応がまちまちで、一定の条件でパネルを無償交換しているメーカーがある一方、自社の製品では火災は起きていないとして、ユーザーから依頼があった場合のみ有償で対応するとしているメーカーもあります。所有者、つまり消費者の不利益にならない対応をすべきだと思います。

▼そもそも安全な製品にして欲しい

 消費者事故調の報告書でも、経産省に対しメーカーにより安全性の高い製品への切り替えやきちんとしたリスク評価をするなどの対応を求めています。
 パリ協定によって一層の温暖化対策も求められる中で、住宅用の太陽光発電は地域分散型の再生エネルギーとして、さらなる普及が期待されます。より安全で安心して使えるよう国や業界は対策を急いでもらいたいと思います。

(土屋 敏之 解説委員)

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