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「デジタル教科書どう使う?」(くらし☆解説)

西川 龍一  解説委員

くらし☆解説、きょうのテーマは「デジタル教科書どう使う?」です。タブレットなどで使うデジタル教科書が、この4月からこれまでの紙の教科書と同じようにすべての小中学校などで正式に教科書として使えるようになるということです。担当は、西川 龍一 解説委員です。
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Q1.デジタル教科書は、もう学校で使われているような印象があったのですが、違うんですね?
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A1.確かに授業中タブレットなどを使って学んでいる学校もすでにありますが、実はこれまで正式な教科書とは認められていませんでした。それがこの4月、新年度から紙の教科書と同じ正式な教科書として使えるようになるということなんです。デジタル教科書は紙の教科書の内容をデジタル化してタブレットやパソコンなどの端末で使えるようにしたものです。ここ数年、急速に普及している電子書籍と同じようなイメージです。

Q2.そうすると紙の教科書は使わなくなるということ?

A2.紙をやめてデジタル教科書だけになるわけではありません。紙の教科書は引き続き使わなければならないことになっています。デジタル教科書を使うにはタブレットなどの端末が必要ですが、学校によって配備状況が違っているからです。

Q3.子どもたちみんながタブレットを持って登校するわけではないということ?

A3.そこは自治体や、学校によって違ってくると思います。ただ、正式に教科書と認められることで普及は進むでしょうし、デジタルならではのメリットを生かした学習がしやすくなります。

Q4.デジタルならではのメリットですか?
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A4.デジタル教科書を閲覧するタブレットには、教科書に関連した色々な教材をインストールすることができます。たとえば音声や動画で英会話の様子を見て発音を学んだり、理科の実験の様子を確認したりと言った使い方もできます。
紙の教科書では大事なところにラインを引いたら消すことができませんが、デジタルなら簡単です。同じように教科書に書き込みをするのも何度でもやり直しができます。

Q3.繰り返し学習などにも良さそうですね?

A3.ただ、デジタル教科書を利用することには、紙の教科書にはない心配事が指摘されてきました。このため文部科学省は正式にデジタル教科書の使用を認めるのを前に、有識者会議でデジタル教科書の利用についてのガイドラインを作り、公表したんです。

Q4.どんな心配があるのですか?
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A4.保護者にとって一番心配なのは、健康面への影響ではないでしょうか。大人でも長時間パソコンの画面に向かっていると目が疲れますよね?目が悪くならないか心配だと思います。このほか、▽タブレットやパソコンなどを使って読むことになるデジタル教科書特有の問題をどうするかや▽指導する側の先生たちが気をつけることなどが示されました。

Q5.まず、健康面ですね。確かにデジタル教科書になって目が悪くなったというのでは困りますからね?
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A5.このため、紙の教科書の代わりにデジタル教科書だけを使える時間を授業時数の2分の1未満にすることにしました。画面が見えにくい場合には、教室の明るさに配慮することや、画面を見る際に距離を30センチ以上離すよう指導することなども求め、子どもたちの目や身体への影響が出ないよう求めています。

Q6.デジタル教科書特有の問題というのは何でしょう?

A6.先ほど紹介したメリットの裏返しです。デジタル教科書は、一つのタブレットやパソコンに複数の教科書をインストールして閲覧することになります。電子書籍が1つの端末に何十冊もの本を取り込んで持ち運べるのと同じことができるわけです。

Q7.去年、教科書が厚くなったり、教材が多かったりして、小学生のランドセルが重すぎて困っていると言うことが話題になりましたけど、解決策になるんじゃないですか?

A7.そういう考え方も確かにありますが、紙の教科書も持ってこないといけないので、そうはいきません。さらに問題は、複数の教科書が一つの端末に入っているとなると、例えば国語の時間に別の教科の教科書を読むことも簡単ということになります。

Q8.確かに、机の上に別の教科書が出ていれば先生は簡単にわかりますが、同じタブレットを見ている状態ではわからないですね?
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A8.ほかにもその端末がネットにつなげることができる状態になっていれば、授業とは関係のないサイトを閲覧するといったこともあり得るわけです。このため、授業中、デジタル教科書を使わない時は、端末を閉じたり、机の中にしまわせたりするなど、デジタル教科書だけに頼る授業にならないよう求めました。もっともデジタル教科書の場合、子どもたちの端末を先生の端末とつなぐことで何を閲覧しているか見ることができたり、ネットの閲覧を制限するよう設定したりすることも可能です。学校にはこうした配慮が必要になります。

Q9.そのことは3点目の指導する側の先生たちが気をつけることにつながりますね?
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A9.中には、こうした機器の操作に不慣れな先生や機械が苦手という先生もいます。デジタル教科書は、紙と違って導入はじめがもっとも大変です。教科書を閲覧するソフトのインストールや初期設定、ソフトや内容の更新が求められる場合もあります。機械そのものに不具合が出た場合に、教科書が使えない子が出るといった事態は避けなければなりません。このためこうした場合に迅速に対応できる支援員を適切に配置することなどサポート体制を整備すること、さらに先生たちが情報通信機器の操作に慣れてデジタル教科書を効果的に活用できるような研修を充実させることも求めています。文部科学省によりますと、こうした支援員は昨年度全国で2800人配置されていますが、これで十分と言えるのかは不透明です。

Q10.やはり学校で使うとなるといろいろなことに配慮する必要があるんですね?
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A10.そうは言っても、ここまで社会の情報通信技術が進む、いわゆるICT化が進んでいる以上、デジタル教科書は使わざるを得ない面があることも否定できません。何より、デジタル教科書や、それを読むためのタブレットなどを使いこなすことは、ネット上に様々な情報があふれる情報化社会の中で欠かせない情報活用能力や、子どもたちが必ずしも答えが一つでないことを主体的に探究する新しい授業の形であるアクティブラーニングを進めるうえでも欠かせません。今回、文部科学省は、小中学生へのデジタル教科書の無償での配布はしないことにしています。教科書と認められても地域や学校によってデジタル教科書を使ったり使わなかったりといった状況は解消できない可能性があります。全国の小中学校の中にはICT環境の整備が不十分なところも少なくないだけに、デジタル教科書導入によってこうした格差が生じないような配慮が求められます。

(西川 龍一 解説委員)

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