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「新元号 どうなるの?」(くらし☆解説)

増田 剛  解説委員

今年は、皇位継承が行われる年。4月30日に天皇陛下が退位され、翌5月1日に皇太子さまが即位されます。
これに伴い、元号を今の「平成」から新しいものに改める「改元」も行われます。新しい元号はどうなるのか。
政治担当の増田解説委員に聞きます。

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Q1)
増田さん、新しい元号に改まる改元は5月1日ですが、新しい元号が何になるかは、事前に公表されるそうですね。

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A1)
そうです。安倍総理は今月4日、年頭の記者会見で、皇位継承に伴う新しい元号を4月1日に閣議決定し、ただちに公表する方針を明らかにしました。皇位継承前に新元号を公表するのは、憲政史上初めてのことです。
安倍総理が、新元号を皇位継承の1か月前に公表する方針を決めたのは、国民生活に影響が及ぶことを避けるためです。
元号を利用している税や社会保障などの行政システムの改修に十分な準備期間を確保する狙いです。

Q2)
その新元号ですが、増田さんは、見当はついているんですか。

A2)
正直、わからないんです。実際、政府は、新元号について、情報管理を徹底しています。政府高官は「事前に漏れて報道されるようなことがあれば、必ず差し替える」と強調しています。
ただそれでも、新元号を探るための手がかりはいくつかあります。
それを知るため、そもそも元号とはどういうもので、どのように選ばれてきたのか、歴史的経緯を振り返ってみます。

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元号は、紀元前の中国、漢の武帝の時代に始まったとされ、最初の元号は「建元」といわれています。皇帝が領土や領民とともに時間や時代も支配する、その支配の象徴だったんです。中国の影響を受けた日本や朝鮮半島、ベトナムなど、東アジアの漢字文化圏に広まりました。
日本では、西暦645年に孝徳天皇が定めた「大化」が最初の元号です。「大化の改新」の「大化」です。
この大化から今の平成に至るまで、日本では、1370年あまりの間に247の元号が使われてきました。
こちらのようになります。
「大宝律令」の「大宝」、「建武の新政」の「建武」、「応仁の乱」の「応仁」、聞き覚えのある元号も多いと思います。

Q3)
歴史の教科書に載っていたのを思い出しますね。

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A3)
現在、元号が使われている国は、世界で唯一、日本だけです。
日本では、かつて、天皇の代替わりだけでなく、自然災害や戦乱などを理由に改元が行われました。幕末の孝明天皇のように、在世中に8つの元号が使われたこともあります。かなり頻繁に改元が行われていたんです。
ただ、明治の改元の際に、こうした慣習は改められ、天皇一代に元号を一つとする「一世一元制」が採用されました。明治22年に制定された皇室典範で「一世一元制」が明記され、42年に公布された「登極令」で、皇位継承後ただちに元号を改めることや、元号は天皇が定めることが法制化されました。
ところが、戦後、日本国憲法が施行されるのにあわせて、旧皇室典範が改正され、登極令も廃止されます。元号は、戦後長らく、法的根拠を失った状態になりました。

Q4)
それでも、元号は使われていましたよね。

A4)
はい。慣習として使われていました。

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ただ昭和52年に行われた世論調査で、元号制度が「あった方がよい」と回答した人が8割近くを占めたこともあり、政府は、法制化に向けて舵を切ります。昭和54年、「元号は政令で定める」と「元号は皇位の継承があった場合に限り改める」という2つの項からなる「元号法」が成立しました。
ここで重要なことは、1300年にわたり、天皇が最終的に決めることになっていた元号の位置づけが変わったことです。
元号は、政府が法律に基づき、政令で定めることになりました。
そして法律の施行後、政府は「元号制定手続」を閣議報告し、新元号を選ぶ際の基準を明らかにしたんです。

Q5)
どんな基準ですか。

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A5)
はい。▽国民の理想としてふさわしい良い意味を持つ▽漢字2文字▽読みやすい▽書きやすい▽過去に元号やおくり名として使われていない▽俗用されていないとなっています。
俗用されていないというのは、会社や大学、土地の名前などに使われていないということです。
また「元号制定手続」では、元号には出典が必要だとしています。単に読みやすく書きやすい漢字をパズルのように組み合わせるのではなく、中国や日本の書物など、何がしかの典拠から引いてくる必要があるんです。

Q6)
かなり厳しい条件ですね。

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A6)
そうなんです。過去の元号を調べてみると、これまでの247の元号で実際に使われた漢字は72文字だけです。この72文字を、使われた回数が多い順に並べると、▽「永」が最も多く29回、次いで▽「元」と「天」が27回、▽「治」が21回などと続きます。同じ漢字が何度も使われていることから、「よい意味を持ち、読みやすく、書きやすい漢字」というのは、極めて限られていることがわかります。

Q7)
ほかに、新元号の手がかりはありますか。

Q7)
はい。政府は、新元号を選ぶにあたり、事前に、漢学や東洋史など何人かの学者に候補名を考案するよう極秘に依頼します。これが誰かは明らかにされていませんが、文化功労者クラスの大家といわれています。ちなみに、明治以前は、菅原道真の末裔が考案することが多かったそうです。
平成の改元を振り返ると、こうした大家が提案した候補名が、「平成」「修文」「正化」の3つの案に絞られました。この中から、「平成」を選ぶにあたり、アルファベットの頭文字が重要な要素となったことが知られています。「修文」や「正化」は、アルファベットにした時の頭文字が「S」で、「昭和」の「S」と重なってしまい、不都合が起きると指摘されたんです。
今回もこの考え方を踏襲するのであれば、明治のM、大正のT、昭和のS、平成のHと重なる元号は選ばれません。つまり、サ行、タ行、ハ行、マ行以外から始まる元号が採用される可能性が高いんです。そして、もう一つの手がかりは、落選候補です。

Q8)
落選候補と言いますと。

A8)
はい。過去に新元号の候補として考案されたものの、採用されなかった「未採用元号」のことです。

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「日本年号史大事典」を編さんした京都産業大学の所功名誉教授によりますと、実は、「平成」は、幕末の「慶応」という年号が決まった時に15あった案の一つでした。「大正」も「明治」もかつての未採用元号で、大正は5回目、明治は11回目に採用されました。所名誉教授は「過去に出典つきの元号案として提案されながら、採用されなかった案は500以上あり、それらが活用されることもあり得る」としています。

Q9)
では、実際のところ、新元号は、誰が決めているのでしょう。

A9)
これも、正直、はっきりとはわからないんです。

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平成の代替わりの際は、昭和天皇が崩御した昭和64年1月7日、当時の小渕官房長官が内閣法制局長官と協議。事前に有識者が極秘に選考していた複数の元号案を3つに絞り込み、竹下総理大臣に報告しました。そして各界の有識者からなる懇談会にかけ、衆参両院の正副議長からも意見を聞き、全閣僚会議と閣議を経て、新元号が決定されました。
この過程で、誰かがイニシアティブを発揮したのか、それとも、「あうんの呼吸」で決まったのかは、よくわかりません。
ただ安倍総理は、新元号を選定するにあたって、この平成の改元の際の手続きを踏襲するとしています。

私は、新しい元号は、次の時代の理想や希望を表明するものであってほしいと思います。今の日本にふさわしい元号を選び出すことができるかどうか、あと2か月、注目したいと思います。

(増田 剛 解説委員)

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