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「自動運転 近づく実用化」(くらし☆解説)

三輪 誠司  解説委員

自動車の自動運転について、国は来年にも一部の地域で実用化することを目指しています。その自動運転では、運転席にはこれまでどおり人が乗ります。しかし、運転そのものは自動で行われます。緊急事態などの場合は、人が手動に切り替えて運転します。すでに実験車両が公道を走っていますが、実用化ということは実験段階ではなく、市販車の一部にこうした機能が搭載され、一般の人が乗ることができるということになります。ただ、高速道路や特定の地域に限るという条件はついています。

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警察庁は、道路交通法の改正案を先月公表しました。自動運転の運転席に乗っている人は、安全確認や手動操作への切り替えができることを条件として、携帯電話の操作や、カーナビの画面で映像コンテンツを楽しむことができるという内容です。

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こうした動きは、人が運転を機械に任せ始め、時間を有効に利用できるようにするという流れの一つと考えることが出来ると思います。

その次の段階で国が目指しているのは、運転席がないという完全自動運転です。車内はリビングのようになり、食事や仕事、仮眠を取ることが出来るようになるかも知れません。車で出勤する人は、朝食は車の中で済ませるという人も出てくるなど、これまでとは全く異なる生活習慣が生まれる可能性があります。

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実は、このレベルの実用化は、少子高齢化対策の一つです。日本は車がないと生活が出来ない地域がほとんどです。しかし高齢化によって車の運転が困難になると、買い物にも行けません。このため、自動で車が走ってくれれば、こうした課題を解決できる可能性があると考えられています。公共交通機関の運転手も不足しますので、自動運転のバスが運行されるかもしれません。

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ただ、運転席に誰もいないと、緊急の時に対応できません。自動車事故は、歩行者の飛び出しや、別の車の暴走などが原因となることもあります。アメリカでは、自動運転の車による死亡事故が発生していますので、心配する声も上がっています。その懸念を払拭できるように、メーカーは安全対策を進める必要があります。

それに加えて、自動運転の車と、人間が運転する車などと共存させる方法を考える必要があると思います。

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自動運転が実用化されても、いきなりすべての車が自動化されるわけではありません。今までのような車や、自転車などと一緒に道路を走ります。そのとき道路交通はどうなっていくのかということです。全国で初めて、自動運転の路線バスを営業路線で走らせる実験を行っている前橋市の様子を取材してきました。

実験で使われている車両は、12人が座れる小型のバスを改造した車両です。周囲や屋根に、障害物や信号を検出できるセンサーやカメラがついています。

運転手は乗っていますが、自動運転の際は、自動でハンドルが動きます。

スピードは時速20キロ。極めて安全運転です。信号が変わり始めると、無理に渡らずに止まり、青になっても急発進しません。というのも、コースの中には、5 つの道路が重なる大きな交差点もあり、無理に横断すると渡りきれないからです。ただ、他の車よりもゆっくり走っていることもあり、じれったそうにしている後続の車もありました。

この車、自動運転で40キロまで出せるようになっていますが、バスの場合は、乗客がシートベルトをしめていませんし、立って乗る人もいますので、安全最優先でこのスピードにしたということです。ちなみにこのバス、通常のダイヤを守っていますので、信号などの多い市街地では目的にかなったスピードと考えることも出来ると思います。ただ、円滑な道路交通も安全のために大切なことですから、何キロで走るのが適切か、みんなで議論しなければなりません。

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実験を行っている群馬大学の担当者は、ある程度の分離を考える必要があると話しています。例えば自動運転者の優先レーンを設け、車線ごとの流れを作っていくことが出来ます。

このほか検討が必要なのは、自動運転時代に応じた交通マナーのありかたです。例えば、自動車と歩行者が道を譲り合うような時、運転手は先に行って下さいと手で合図したりします。しかし、自動運転車はできません。「お先にどうぞ」という電光掲示板をつけるなど、人間と意思が通じ合う仕組みが必要です。

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自動運転の安全性に対する大きな脅威は、思い思いに走っている人間の運転マナーに対応しきれるかということかもしれません。私たちも、もうすぐやってくる自動運転時代に備えて自分の運転を見直していく必要があるかもしれません。

(三輪 誠司 解説委員)

 

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