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「2019年の政治と国民の視線」(くらし☆解説)

太田 真嗣  解説委員

今年は、平成の次の時代を迎える節目の年です。政治の舞台でも、夏の参議院選挙や秋の消費税率の引き上げなど、大きな山がいくつもあります。有権者は、そうした政治の課題をどう見ているのか?ことし最初のNHKの世論調査をもとに、政治担当の太田真嗣解説委員です。
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≪2019年の政治 いくつもの大きな山が≫
今年の主な政治日程をまとめてみました。今月22日に予定されている日ロ首脳会談を始め、天皇陛下の退位、皇太子さまの即位など、この様に大きな日程が、まさに『目白押し』です。安倍総理は、順調に行けば今年11月に総理の在職日数が史上最長となる計算ですが、その前にも、夏の参議院選挙、そして、秋の消費税率の引き上げという、大きな山が控えています。
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≪今年初めての安倍内閣の支持率は?≫
1月のNHKの世論調査で、▽安倍内閣を「支持する」と答えた人は、先月より2ポイント上がって、43%、また、▽「支持しない」も、3ポイント下がって35%でした。数字を見ると、若干、改善しているようにも見えますが、統計的には、いずれも誤差の範囲内。支持率は、ほぼ横ばいです。
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有権者とすれば、まさに『様子見』ということではないでしょうか。例えば、安倍内閣の支持率を左右する要素として、『経済』がありますが、今回の調査で、ことし日本の景気がどうなると思うかを聞いたところ、▽「良くなる」は10%、▽「悪くなる」は26%で、▽「変わらない」は52%となっています。
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いま、日本経済は戦後最長の回復期にあるとされていますが、今後、米中の貿易摩擦の影響で、世界経済の減速が懸念される上、今年10月には、消費税率の引き上げも予定されています。そうした景気への不安が現実のものとならないよう、政府・与党としては、今月下旬から始まる通常国会で、今年度の補正予算案や新年度予算案を、早期に成立できるかが一番の課題です。また、安倍総理は、各国の首脳が集まる、6月の大阪G20サミットで、議長を務めます。世界経済の持続的な発展のため、国際的な協調体制を築くことができるか、外交手腕が問われることになります。

≪日韓関係≫
今回の調査では、いま、日韓の間でこじれている問題について意見を聞いています。
まず、太平洋戦争中の“徴用”をめぐる問題について、政府は、どのように対応すべきかを聞いたところ、▽「あくまで2国間で話し合う」が20%、▽「国際社会の場で解決する」が53%、▽「対抗措置を講じる」が17%でした。
また、先月、海上自衛隊の哨戒機が、韓国の駆逐艦から照射管制用レーダーをあてられた問題について、どのような対応を取るべきかを聞いたところ、▽「日韓双方の当事者で話し合う」が28%、▽「国際機関に訴える」が56%、▽「静観する」が6%となっています。いずれも、「国際社会の場で
解決を…」という声が多くなっていますが、これを裏返してみれば、「多くの人が、日韓・当事者間での解決は難しいと感じている」ということです。
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日本は、韓国に対し、国際法に則って適切に対応するよう強く求めていますが、韓国は、ことし、日本の植民地支配からの独立運動が始まって100年の節目で、「韓国・ムン政権は、世論を意識し、引くに引けない状況になっている」という見方もあります。ですから、日本としては、引き続き、国際社会に対し、日本の正当性をアピールしていくことがとても重要です。同時に安倍総理は、ことし、日ロの平和条約の締結や拉致問題の解決など、「戦後外交の総決算に取り組みたい」としています。そうした大事を前に、韓国との関係悪化は決してプラスではありませんから、主張すべきは主張しつつも、これ以上、問題が拗れないような知恵と努力が必要だと思います。

≪日ロ関係・北方領土問題≫
安倍総理とロシアのプーチン大統領は、平和条約を締結した後に、歯舞・色丹2島を引き渡すとした、1956年の『日ソ共同宣言』を基礎に交渉を加速させることで合意しています。
そこで、日ロの平和条約を出来るだけ早く締結すべきかどうかを聞いたところ、▽「できるだけ早く締結すべき」は30%、▽「急いで締結する必要はない」は28%、▽「どちらとも言えない」は31%となっています。
意見が分かれている背景には、交渉の先行きが見えないことがあります。これは、先月(12月)のNHKの世論調査ですが、ロシアとの平和条約交渉について、政府はどのような姿勢で臨むべきかを聞いたところ、▽「4島一括返還」と、▽「2島先行返還」が共に38%だったのに対し、▽「2島のみ
の返還」は10%に止まっています。ただ、北方領土の返還について、ロシア側は、依然として厳しい姿勢を崩しておらず、難しい交渉になるのは間違いありません。
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政府・与党内には、ロシアとの平和条約交渉で実績をあげ、この夏の参議院選挙に弾みをつけたいという期待論もありますが、安倍総理としては、ロシア側の出方や、国内世論の動向などに細心の注意を払いながら、難しい選択を迫られることになりそうです。

≪夏の参議院選挙 どうなる?≫
1月の各党の支持率では、自民党が35%と安定しており、いまのところ、“自民党1強”の政治状況に変化は見られません。ただ、今年は、春の統一地方選挙と夏の参議院選挙が相次いで行われる、12年一度の“亥年の選挙”で、与党、特に自民党には、「亥年の参院選は苦戦する」というジンクスもあり、幹部から警戒の声も聞かれます。
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ただ、対する野党の方も厳しい状況が続いており、支持率が最も高い立憲民主党でも、二桁に届いていない状況です。参議院選挙は、1人区の行方が勝敗を決めるとされますが、このような状況で野党がバラバラでは、とても巨大与党に対抗できません。このため、安倍政権との対立を鮮明にしている各党は、候補者の一本化に向けた調整を急ぐことにしていますが、思惑の違いもあり、どこまで進むかは、これからです。さらに、注目は無党派層。これまでは選挙が近づくと割合が減る傾向がありますが、依然40%を超えて高止まりの状態が続いています。

≪通常国会と内閣支持率≫
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その上で、もうひとつデータを紹介したいと思います。これは、政権に返り咲いた第2次安倍内閣以降の1月と7月の内閣支持率を、年ごとに比較したものです。通常国会は、例年1月に始まって夏まで続きますから、“通常国会の成績表”と言っても良いでしょう。これを見ますと、1月と比べ、7月の方が、▽支持率・低下、▽不支持率・上昇の傾向が見られ、森友・加計学園問題がクローズアップされた、2017年は、半年間で支持率が20ポイントも低下しています。ちなみに12年前の亥年の参議院選挙の時も、第1次安倍内閣でしたが、その時の内閣支持率も、1月ー7月で13ポイント低下しています。国会開会中は、国民の注目も集まり、かつ、野党の追及も受けますから、政府・与党にとって、支持率を維持することは決して簡単ではありません。
翻って、このところの国会のあり様をみますと、国会が、「政府の監視機能をきちんと果たしていないのではないか」、あるいは、「十分な政策論争が行われていないのではないか」という厳しい声も聞かれます。ですから、今月下旬からの通常国会で、▽政府・与党は、丁寧な国会運営を行い、有権者が納得できる成果をあげられるか、対する▽野党は、政権の問題点を浮き彫りにし、存在感を示すことができるかが、その後の選挙の行方を大きく左右することになりそうです。

(太田 真嗣 解説委員)

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