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「2019年 社会保障はどうかわる」(くらし☆解説)

藤野 優子  解説委員

今年は10月に消費税率の引き上げが予定されているのを受けて、社会保障も様々な見直しが行われます。藤野解説委員。

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【今年はどんな見直し?】

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良くなるのは、子育て世帯と低所得世帯。一方、負担が増えるのは、比較的高所得の世帯、そして、給付が抑制されるのが高齢者の受け取る年金。
政府は、「全世代型」の社会保障への転換を進めるとしているが、この「全世代型」の意味というのは、これまで手薄だった現役世代向けの支援をもっと手厚くして、高齢者でも比較的経済力のある人には負担を増やしたり、働ける人には支え手に回ったりしてもらおうというもの。こうした改革を今年加速していくとしている。

【拡充される子育て支援】

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柱は幼児教育の無償化。
消費増税が予定通り実施されれば、今年10月から始まる。
消費増税分の財源を毎年7800億円あてて、

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▼幼稚園や認可保育所に通う3歳から5歳までの利用料を無料にするとしている。
▼認可外保育施設を利用している人については、3歳から5歳まではひと月3万7000円までの補助が受けられる。ただし、認可外施設は質にバラつきがあるため、安全性や質を考慮した上で補助の対象範囲を考えるべきだという自治体からの要望もあり、いまも協議が続いている。

【待機児童解消は?】
政府は、2020年度末までの待機児童解消を目標に掲げていて、

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▼新たに7万人分の認可の保育所を整備する方針。
▼施設があっても、保育士不足で閉園するところもあり、ひと月3000円保育士の賃金も上げるとしている。
ただ、すでに無償化を実施している地方自治体や海外の主要国をみると、無償化した後、待機児童が増えたり、利用時間が長時間化したりしている.無償化によって待機児童の解消に遅れが出ないか。ここは、早めに検証が必要。

【低所得者への支援・年金生活者支援金】

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まずひとつは、年金生活者支援金。

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年金が少ないために低所得となっている高齢者などは、一人あたりひと月最高で5000円の支援金が受け取れるようになる。こちらも消費増税分の財源が毎年5600億円あてられるので、今年10月分からの実施だが、実際の支給は12月になる予定。

対象となるのは、世帯の全員が住民税非課税で、年金などの収入が年間およそ88万円以下の65歳以上の人などが対象。およそ770万人が受け取れるようになる。

注意が必要なのは、支援金の金額が保険料を納めた期間に応じて決まること。このため、保険料を未納だった期間が長かった人は少ない金額しか受け取れない。
ただ、この制度は、非正規で働く人の増加などで、所得が少なく保険料を納められない人が増え、今後、低所得の高齢者が急増することが懸念されているので、新たに作られたもの。だが、これだけでは低所得の高齢者の十分な支援にはならないので、やはり新たな対策が必要になると思う。

【低所得者の介護保険料の軽減拡充】

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65歳以上の人たちの介護保険料の軽減策が拡充される。
世帯全員が住民税非課税の人たちの保険料が、世帯の所得に応じて、最大7割軽減される。対象はおよそ1100万人。これも消費増税にあわせて実施されるので10月から。

【大企業に勤める人の介護保険料があがる】

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40歳から64歳までの大企業に勤める人が支払う介護保険料が2020年度まで段階的に上がる。対象者はおよそ1300万人。どのくらいの負担増になるかは企業の規模によって異なる。

【高齢者の年金が4月から目減り】

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それから、今年の社会保障の変更点の中で広く影響が出るのが、高齢者の受け取る年金の給付が全体的に抑制されて、今年4月からの年金の受け取り額が実質目減りする見込み。

なぜかというと、物価の伸びより、年金の伸び、増額が抑えられる抑制策が実施されるから。正確な年金額は今月中旬に決まるが、去年一年の物価の伸びは1%前後になる見通しに対し、年金は0.1%の増額、もしくは据え置きになる見込み。仮に、年金が0.1%の増額だったとしたら、0.9%分は抑制されるので、毎月の年金で買えるものは減るので、節約しなければならなくなる。

ただ、いまの年金制度は、現役世代の支払う保険料で高齢者の年金の財源をまかなう仕組み。現役世代は減り続けていくので、このままだと現役世代の負担が過重になってしまう。それで、年金を少しずつ抑制していくことによって現役世代の負担を抑えようという目的で、この抑制策が導入された。今後もこの抑制策は続く。
今年春ごろには、年金の新しい将来推計が公表されて、将来、年金の受取額がどのくらいまで目減りしていくのか明らかになる。それを受けて、制度改革の議論も今年は進められる予定。

【2040年に向けた改革論議も】
この他、今年はいよいよ高齢化のピークを迎える2040年代に向けた社会保障改革の議論も本格化する。その中では、▼意欲のある高齢者には70歳まで働いてもらえるようにするための雇用改革や、▼年金の受取り開始の年齢(今は60~70歳の間であれば選べる)を希望すれば75歳以上に遅らせることができるようにすることなどが検討課題になっている。少子化で支え手が減少し続けるなか、負担も全世代でどう分かち合っていくのか。今年の議論の行方に注目したい。

(藤野 優子 解説委員)

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