NHK 解説委員室

解説アーカイブス これまでの解説記事

「2019年 くらしはどうなる?」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

新年一回目のきょうは、今年のくらしについて、今井解説委員。
 
k190108_01.jpg

【タイトルをみると、番組マスコットの“みみちゃん”が、不安そうな顔になっていますが、今年のくらしは、どうなるのでしょうか?】
くらしを取り巻く環境を見ると、日本の景気回復。この1月まで続くと、長さでは、戦後最長となるのですが、実感がない。ということに加えて、先行きに、「円高・株安」と「消費税率の引き上げ」。この2つの不安の雲が広がっている状態です。

k190108_02.jpg

【そもそも景気は、まだ、いいのですか?】
一時の勢いはなくなっています。でも、去年=2018年は0.9%。今年=2019年も、1%の成長は続けるというのがOECDの見通しです。おととし=2017年の実績が1.9%ですので、勢いはなくなっていますが、それでも、まだ回復は続いているし、続くだろうという見通しです。

【景気は、悪くはないということですね】
そう。横ばいといってもいいかもしれませんが、悪くはありません。ただ、ここにきて、急速に大きな不安の雲が広がっています。それが、このところの円高・株安です。
去年の秋には1ドル=114円前後だった為替は、年明けの4日に一時104円台になりました。秋に2万4000円を超えていた株価も、一時2万円を割り込みました。

【円高・株安と言われても、くらしへの影響はあまり感じませんが】
確かに、円高の方が輸入品が安くなるとか、投資をしていないから株価は関係ないという方もいると思います。ただ、
▼ 急激に円高になると、企業が海外で稼いだ利益を、円に換算した額が目減りして多くの企業の業績を押し下げますし
▼ 株安も、資産を持っている人だけでなく、全体的に不安が広がることから、消費を押し下げる心配があります。

【では、なぜ、円高・株安が進んでいるのですか?】
背景には、世界経済への不安があります。
まず、中国です。アメリカとの貿易摩擦の影響もあって、去年一年間の新車の販売台数が、28年ぶりに前の年を下回る見通しになっています。明らかにブレーキがかかっているという見方が強まっています。
一方、今は、好調なアメリカについても、利上げの影響で住宅投資が減り始めていますし、貿易摩擦の影響も心配されています。

k190108_03.jpg

きのう、きょうと、円高・株安の動きに歯止めがかかってはいますが、不安定な状況は続くのではないかとみられています。

k190108_04.jpg

【それは、心配です。もうひとつ。家計にとって大きな不安は、消費税率引き上げの影響です】
そうですね。こちら、家計のバランスで見ていきたいと思います。

k190108_06.jpg

まず、消費増税。財政の健全化と、社会保障の充実という、将来の安心のためではありますが、家計にとっては負担が増える要因になります。
このため、政府は、予定通り引き上げた場合、前回=8%に引き上げた後のように、消費の冷え込みが続かないよう、今回、直接、家計の負担を和らげる対策を数多く決めています。

【この番組でも取り上げましたね】
はい。まず、
▼ 食料品などについては、軽減税率を導入して、8%に据え置くことが決まっています。
それに加えて、このように、例えば、
▼ 幼児教育や保育の無償化
▼ 年金が少ないために低所得となっている高齢者には、ひと月最高で5000円の支援金
▼ 加えて、中小のお店でカードなど現金以外で支払いをした場合に、最大5%分のポイントが還元される制度
▼ 所得が低い世帯や子育て世帯向けには、2万円を払えば、2万5000円分使える(つまり、5000円分お得な)商品券の発行。こういった対策が盛り込まれています。

【手厚い対策ですよね】
バラマキという批判もでるほどで、手厚い対策です。
こうした対策。小さいお子さんがいる、いない。所得が低いかどうか。といったことで、対象になる家庭は様々。影響も様々ですが、あくまでもイメージのために、家計調査をもとに、ざっくりと一世帯あたりで割った試算を見ると、
▼    増税で、年間で3万6千円負担が増える一方、負担の軽減は1万9千円分。
▼    差し引きすると、1万7千円分負担が増える。こういう試算もあります。
(中部圏社会経済研究所試算)

k190108_08.jpg

【これだけ増税対策があっても、全体的には、家計の負担は増えるのですね】
増税ですからね・・・・

【負担でいうと、もうひとつ。物価は、今年どうなりそうですか?】
物価でいうと、国際的な原油の価格が、去年秋以降、急速に下がっています。これを反映して、ガソリンや灯油の価格は、すでに9週連続で下がっています。今後、少し時間をおいて価格に反映される電気料金などにも値下げの影響が広がる見通しです。また、政府は、携帯電話の通信料について、大幅な値下げを求めています。

【すると、物価は下がるのですか?】
残念ながら、そうではないようです。原材料や物流費の値上げ、そしてパート社員の時給の引き上げもあって、今年、決まっているだけで、家庭用の小麦粉や、小麦粉を使う麺類。それに、アイスクリーム、食塩など、身近な食品の値上げが相次いで予定されています。飲み物も具体的な検討が進んでいますし、外食も一部のメニューで値上げの動きが続いています。
全体で見ると、物価は上がる見通しで、消費増税の影響もあわせると、2019年度の物価は、1.2%程度上がるというのが、国内の主なエコノミストの予測の平均です。

k190108_11.jpg

【負担は増えますね・・・】
しかも、消費増税の負担を和らげている対策。期限が区切られている対策もあって、来年以降になりますが、それが順次終わるにつれて、負担はもっと膨らむことになります。

k190108_12.jpg

【そう考えていくと、やはり、こちらの収入。賃金が増えてくれないと生活は、どんどん厳しくなりますね】

k190108_00.jpg

そうですね。人手不足の影響でアルバイトやパートの時給は、各地で、過去最高を更新しています。あとは、これに加えて、働く人の60%あまりを占める正社員の賃金をどの程度底上げできるかが大事で、その意味でも、今年の春闘が大きな焦点になります。

【見通しはどうなのでしょうか?】
企業の業績も、勢いは落ちていますが、今年度全体で見ると、今のところは、過去最高の利益に近い水準は達成できそうです。企業が抱える現金・預金も265兆円と、過去最高を更新しています。いざという時に備えたいという意識が強く、なかなか使わないためです。安倍総理大臣は、経団連に、6年連続の賃金引上げを要請していて、経団連も「企業の労使が決めることだけれど、賃金引上げの重要性は認識している」としています。

【そうすると、期待できますかね】
ところが、心配なのは、この円高・株安です。企業は、いったん上げると下げにくい正社員の賃金引上げには、もともと慎重ですが、先行きが不安だと、一段と賃金引上げを渋る傾向がこれまであったからです。

k190108_13.jpg

ただ、企業にとっても、ここで消費を冷え込ませるわけにはいきません。消費増税を乗り切るためにも、例年以上に、思いきった賃金引上げを実現することが求められていると思います。

k190108_14.jpg

(今井 純子 解説委員)          

キーワード

関連記事