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「どこまで決まった? キャッシュレスでのポイント還元制度」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

キャッシュレスで支払いをした場合の新たなポイント還元制度について、今井解説委員です。
 
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【この制度。以前、この番組でも取り上げましたが、消費増税対策のひとつですね】
そうです。来年10月に消費税率が10%に引き上げられた後、消費が落ち込まないように、政府が打ち出した対策のひとつです。一言で言うと、キャッシュレスで買い物をした人に、ポイントを還元する。その還元分の費用は、国が補助するという内容です。

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【具体的なこと。どこまで決まったのですか?】
基本的な枠組みが決まりました。
まず、期間ですが、来年10月1日に、消費税率が上がった後、2020年6月末までの9ヶ月間です。
クレジットカード、コンビニなどの電子マネー、それにスマートフォンのアプリを使ってQRコードなどを読み取って決済する仕組み。現金ではなく、こうした方法で支払いをすると、ポイントが還元されます。
対象のお店は、中小・個人の店。具体的には、
▼ 小売業なら、資本金が5000万円以下か従業員が50人以下。
▼ サービス業なら、資本金が5000万円以下か従業員100人以下の事業者になります。

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【サービスも対象になるのですね】
そうです。中小の条件に当てはまれば、小売店だけでなく、飲食店や旅館、ガソリンスタンド、個人などのタクシー、美容院など、幅広い業種が対象になります。
また、家電製品とか宝石といった高額なものも、中小の店で買えば対象です。軽減税率の対象となる「食料品」なども、ポイント還元の対象になります。

【結構、幅広いものやサービスが対象になるのですね】
はい。ただ、対象外になるものもあります。例えば、
▼ そもそも消費税が非課税となっている病院での「医療費」や「調剤薬局での薬」、「学校の授業料」。これは、カードなどで支払っても、この制度でのポイントは還元されません。
▼    また、換金性が高い商品券
▼    さらに、他に消費増税対策として減税などが決まっている住宅や自動車
こういったものも対象にはなりません。

【ネット通販は対象ですか?】
中小の店から買う場合、クレジットカードなどで支払えば、対象になります。

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次に、ポイントの還元率ですが、原則、購入額の5%になりました。ポイントで還元して、次の買い物のときに使える、あるいは、ためて景品と交換できるようするほか、その場で、その分の値引きをすることも認めることにしています。

【増税は2%ですから、それ以上に、お得になるということですね】
そういうことになります。ただ、コンビニやガソリンスタンド、外食などのチェーン店は、還元率が2%になります。

【なぜですか?】
チェーン店の場合、個人がフランチャイズの形で経営している店は、中小の扱いになる。つまり、ポイント還元の対象になりますが、本社の直営店は、大企業の扱いです。買い物客が混乱しないよう、政府は、直営店についても、本社がポイント分を負担するよう求めましたが、9ヶ月の間、5%分を負担するのは厳しいということで、結局、2%で妥協した形です。

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【それにしても、利用する側からみると、かなり複雑ですね】
そうです。具体例で見てみましょう。
本体価格1000円の文房具。単純化するために、3つの店で同じ本体価格で売られているとします。今は、どこで買っても、税込みだと1080円を払うことになります。10%への増税後は、
▼    デパートやスーパーなど大きな店で買う場合、ポイント還元の対象にはなりませんので、1100円を払うことになります。
▼    それが、ポイント還元の対象となる中小の店で、クレジットカードなどで買うと1100円の5%分。55円分のポイントが還元される。あるいは、値引きとなるので、事実上、1045円になります。
▼    また、コンビニなどチェーン店だと、1100円から2%分が還元されて、事実上1078円になるというイメージです。

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【本体価格が同じものを買うのに、どこで買うのかによって、事実上支払う額が変わってくるのですね】
そうです。しかも、注意が必要なのは、中小のお店すべてがポイント還元の対象になるとは限らないという点です。

【なぜですか?】
この仕組みに参加するかどうかは、お店側から、手をあげる方式になっているからです。
今後のスケジュールを見ると、政府は、まず、予算案が成立したら、(メドは、3月ころです)すぐに、
▼    クレジットカードやQRコードなどの決済事業者に、この仕組みに参加するかどうか、手をあげてもらいます。同時に、それぞれ、どういうポイント還元の仕方をするかも決めてもらいます。
▼    その上で、4月以降、この仕組みに参加するかどうか、店に手をあげてもらうことにしています。

【参加しない店もでてくるということですね】
そうです。というのも、クレジットカードなどを使えるようにするには、店が決済事業者に加盟店の手数料を払わなくてはいけないからです。国は、この仕組みに参加する決済事業者に対して、対象となる9ヶ月の間は、手数料を3.25%以下と、低くするよう条件をつけています。しかも、店側には、手数料の3分の1を補助します。ですが、9ヶ月たった後は全額負担になりますし、手数料が上がるかもしれません。このため、中小のお店は、参加しないとお客さんが大幅に減るか。それとも、長い目で見て費用の方がかかるのか。考えて、手をあげるかどうか決めることになると思います。
また、チェーン店では、コンビニは、大手3社がすべて参加する方向ですが、例えば、外食チェーンなどの中には、直営店の割合が高いところもあります。本社の負担が重く、参加しないところもでてくるかもしれません。

【どの店が、ポイント還元の対象なのか、わかるようにしてほしいですね】
そうですね。消費の落ち込みをなんとしてでも食い止めたいという狙いに加えて、海外と比べて遅れているキャッシュレスの決済を、この際一気に進めたい。中小企業にも目配りをしたい。様々な立場の人たちの思惑が積み重なった結果、複雑な仕組みとなりました。国は、ポイント還元の対象の店であること。そして、どの方法で支払いができるのか。どういう方法でポイントを還元するのかを示すポスターをつくって、店頭やネット上でわかりやすく表示したいとしています。ぜひ、混乱が起きないようにしてほしいと思います。

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【それでも、いつ、そして、どこで買えばお得なのか、迷いそうです】
買いたいモノ、買う店が決まっていて、それがポイント還元の対象の場合、増税後に買った方がお得なケースはあると思います。ただ、量販店などの場合、ポイント還元の対象外ですが、もともとの価格が中小と比べて大幅に安いケースがあることに加えて、政府が、増税後のセールを事実上推奨しています。どちらが本当にお得か、冷静に見比べる必要がありそうです。さらに、現金でないと、つい買いすぎてしまうので、カードを持っていない。QRコードなどで払うと情報漏れが心配。そういう方もいると思います。

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制度に振り回されず、冷静に検討し対応することが消費者にも求められることになりそうです。

(今井 純子 解説委員)

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