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「着陸はどうなる? はやぶさ2は今」(くらし☆解説)

水野 倫之  解説委員

日本の探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウに到着してからはや半年、当初10月だった着陸の予定は安全にできるメドが立たず、延期。
チームは今後どんな作戦で着陸に挑もうとしているのか、水野倫之解説委員の解説。

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はやぶさ2、実は今月、探査機の運用はお休み中。
地球から見ると、リュウグウとはやぶさ2が太陽と重なる方向にあって、太陽がじゃまして探査機との通信が難しい。
年末まで観測を中断して、地球から見えるようになるのを待っているところ。

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でも実はこの12月の1か月間がこの先のはやぶさ2の運命を決める重要な期間。
この間に着陸方法を決めなければならないからで、チームは連日対策を検討。

はやぶさ2がリュウグウに到着したのは6月末。
全体的に岩が多いことがわかり、チームはまず全球を観測。

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というのも、はやぶさ2はリュウグウに筒のような装置を着地させて砂粒を回収、これを地球に持ち帰るのがミッション。
その筒の長さは1m、太陽電池は幅6mあることから、着地した際に岩が本体やパネルに当たらないよう、まわりに高さ50㎝以上の岩がないことが着陸の必須条件だから。

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そして観測データを元に一旦は、大きな岩が少ない赤道付近の100m四方を候補地に決定。
はやぶさ2と地球との間の通信には往復40分。
着陸の瞬間は、地球からの指示が間に合わないため、カメラや電波を発射して速度や位置を自ら調整しながら降下。
その精度・誤差は50mほどと予想されていたので、中心部分を狙って降りていけば誤差を加味しても安全に着陸できると考えられていた。

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ところがこの100m四方も岩だらけで、高さ50㎝以上のものもあちこちにあることがわかってきた。
結局最初の着陸を安全にできそうだと判断されたのは半径10mの場所だけ。
当初の広い平坦な場所を見つけるというやり方から、狭い地点にいかに着陸するかと戦略転換を余儀なくされることに。
そこで着陸のカギとなってくるのがターゲットマーカーと呼ばれる目印。

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高度20mから落として着陸の目印に。
表面には反射フィルムが貼られ、はやぶさ2が出す光を反射して光る仕組みで、この光を頼りに降りて行けば精度よく着陸できるというわけ。
そしてチームは実際10月下旬に、半径10mの円の中心を狙ってターゲットマーカーを落とした。

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解析の結果、ターゲットマーカーを正確に追尾できることが分かったが、肝心のマーカーの着地点は、弾んでしまったこともあり、この画像で言えば中心から右下方向へ15m離れたところ、円の外側に。
このままマーカーめがけて降りていくと円の外には大きな岩があるので危険。
そこでチームでは着陸を延期して、現在2つの作戦を検討。
①   はやぶさ2にこのマーカーから左上15mを目指せという指令を送ってピンポイントで着地させる方法。
②    もう1回円の中心を狙ってマーカーを落としてみる方法。
はやぶさ2は滞在中3回着陸を予定していて、こんなこともあろうかと5個マーカーを積んでいるので2個予備あり。
ただ地表面の状況によってマーカーの弾む方向も変わるし、ピンポイントで降りる方法もこれまでやったことがないため確証がない。
さらにこの円内に高さ50㎝以上の岩が本当にないのかどうか、もっと画像を解析する必要もあり、現在チームで慎重に着陸方法の検討。
ただ来年6月以降はリュウグウが太陽に近づいて地表が熱くなるため着陸できない。
3回予定する着陸のチャンスはあと半年、楽観できない状況が続く。
チームの津田雄一プロジェクトマネージャーは「あらゆるケースを想定して年明けまでに着陸方法を決定し、1月下旬にも最初の着陸に挑みたい」と話す。

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こうして着陸を延期している間に、はやぶさ2にライバルが出現。
NASA・アメリカ航空宇宙局の小惑星探査機オシリスレックス。
今月はじめ、地球から1億2000万キロ離れた小惑星ベンヌの上空に到着。
その小惑星、リュウグウにそっくり。

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大きさはリュウグウの半分くらい。表面のゴツゴツした感じも似ている。
そして早速成果も報告。
地表面を分析したところ、酸素と水素が結びついた分子が見つかった。この分子は水の成分の一部で、ベンヌに広く分布し、表面にある物質がかつては水に触れていたことを示しているとNASAは見る。
リュウグウでも水の観測は行っていて、ベンヌほど大量にはないことはわかっていて、現在どれくらいあるのか詳細な分析中。
水以外にはその色合いからリュウグウにもベンヌにも有機物が含まれているのは確実とみられ、こうした有機物や水が地球に飛来し、生命のもととなったのではないかという説もあり、生命誕生の謎に迫ることが期待。

(水野 倫之 解説委員)

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