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「日本も貢献 1Kgの定義変わります!」(くらし☆解説)

水野 倫之  解説委員

私たちの体重など質量の単位となっているキログラムの定義が130年ぶりに変わる。
計測の基準を管理する国際組織が、あす、新しい定義を決める見込み。
なぜ定義が変わるのか、暮らしにどんな影響があるのか、水野倫之解説委員の解説。

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現在は「1kgは国際キログラム原器の質量」と定義。
もともとは18世紀に、水1リットルの質量を1キログラムとしていた。
しかし水は温度で体積が変わって不安定。
そこでより変化が少ない定義を作ろうと、1889年に水1リットルと同じ質量で作られた分銅が国際キログラム原器。パリ郊外の国際度量衡局にある。

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直径・高さともに3センチ9ミリ、変化や磨耗に強い白金とイリジウムの合金製で、
ほこりや湿気などの影響を受けないよう3重のガラスの容器に入って金庫で保管。
年に1回、各国から度量衡委員が集まり、金庫の鍵を開けて
「Still there.」、「確かにまだあるね」と言って原器の存在を確認し、
また扉を閉めるのに立ち会うくらい大切なもの。
例えば私たちが乗る体重計の目盛は、メーカーの工場に質量1kgの分銅があって、
それを乗せて1kgを示すよう調整。

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その分銅が1kgであることをどう確認しているのかというと、
最終的には原器にたどり着く。
スーパーのはかりから原油の輸出入に関わる大型のはかりまで、
世界中の質量計測はすべてこの「国際キログラム原器」が基準。
でも日本で体重計作るために、わざわざパリまで行って分銅の調整するの大変なので、
そこでキログラム原器の複製が各国に配布。
日本では茨城県にある産業技術総合研究所で管理されている。
原器は金庫の中の金庫。またその中の桐の箱にあった。
フランスにある原器と同じ材質大きさで、明治23年に日本にきた。
その後配布された2基と質量を比べて変化していないことを確認しながら保管。
こうした原器は10万年は機能すると期待されたが、最近になってパリにある大もとの原器の質量が変動していることがわかった。
その量1億分の5キロ。
変動した理由はわかってない。
ほこりなどがつかないよう定期的に水蒸気で洗浄していることが影響したかも。

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 ごくわずかの違いだがハイテクの世界では無視できない変動。
そこで計測に関わる世界中の機関が協力して、
原器に代わる基準を開発しようということになった。
こうしたことはほかの基準でも起きている。
たとえば長さの単位1メートルも、最初は
北極点と赤道を結ぶ子午線の1000万分の1と定義され、「メートル原器」を作成。
これも変化することがわかり、1983年に、
「一定の時間に光が真空中を進む距離」と再定義。今度はいよいよキログラムもということ。

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で、質量の新しい定義がどうなるかというとある物理の定数をつかう見込み。
あえてわかりやすく言い換えると「1キログラムを原子の数で定義しよう」ということ。
本当に原子の数で決められるのか確認が必要で、日本の研究チームは、様々ある元素の中でケイ素の原子で定義できるかを調べた。
ケイ素は半導体の材料で手に入りやすく原子同士の距離がわかっていて、ある体積の中に何個あるのか数えやすい、さらには加工もしやすいため選ばれた。

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チームは日本の原器で質量1キログラムのケイ素の球を作成。
レーザー計測装置で球の直径を数千回計測して正確な体積を割り出し、原子同士の距離をもとに中に含まれる原子の数を計算した結果、「20兆の1兆倍個あまり」含まれていることを割り出した。
つまり1キログラムはケイ素原子何個分と、定義できることが確認できたわけでドイツやイタリアなども同じように定義できることを証明し、あすの国際委員会で新定義が正式に決まる見込み。

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新定義になると今までの原器は役割を終えてこのケイ素の球が原器の代わり。
仮にこの球をなくしてしまっても、原子何個分が1キロということがわかっているので新たに作ることができ保管も楽になるメリットあり。

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私たちの暮らしへの影響は、はっきりいってない。
というか、日常生活に何も影響しないように慎重に定義を変えることになったということを、わかってもらえれば。
そしてもう一点、おさえておきたいのは、
計測の基準の変更に日本が今回初めて貢献したという点。
計測技術は科学技術力の表れで、
単位という人類共通の財産に
日本も貢献できるようになった意義は大きい。

(水野 倫之 解説委員)

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