NHK 解説委員室

解説アーカイブス これまでの解説記事

「どうすればいい?計画運休」(くらし☆解説)

中村 幸司  解説委員

2018年9月から10月1日にかけて日本列島を縦断した台風24号では、JR東日本が首都圏の全線で電車の運転を取りやめることを事前に発表する「計画運休」が行われました。台風が接近してきた時の計画運休をどうすればいいのか考えます。

K181011_01.jpg

◇今回の計画運休と経過
首都圏の全線でJR東日本が計画運休するのは初めてのことでしたので、様々な反応がありました。計画運休は必要だったと考えられますが、課題もいくつか見えてきました。

K181011_02.jpg

台風24号は、9月29日から10月1日にかけて、上の図のような進路をたどりました。

K181011_03.jpg

首都圏では、JR東日本が、30日(日曜日)の正午すぎに、「午後8時以降、順次運転を取りやめ、午後10時ころまでに首都圏のすべての運転を終了する」と発表しました。

◇計画運休をしたのはなぜか
計画運休をした理由は、一言で言えば安全のためです。

k181011.jpg

そもそも強風の中、運転すると車両の転覆などの危険があります。JR東日本には、風速25メートル以上、一部は、30メートル以上で運転をとりやめるという規定があります。

このとき、特に問題になるのが、駅と駅の間で電車を止めざるを得なくなった場合です。

K181011_06.jpg

線路の点検をして運転再開しようにも、強い風のため、点検すること自体が危険です。駅の間に止まったとき、乗客を降ろして線路を歩いてもらうことがありますが、これも危険でできません。つまり、長時間、閉じ込められる恐れがあるのです。
今回は、台風接近が、夜でした。途中の駅で運転をとりやめると乗客が帰れなくなってしまうということもあります。
こうした事態にならないよう事前に運転とりやめを知らせたということです。

◇もっと早く計画運休することを知らせることにはならないのか
台風24号で、計画運休を早めに知らせたケースがあります。JR西日本です。

K181011_07.jpg

JR西日本は、近畿地方に接近する前日(29日)の午後2時すぎに「30日の午前8時以降、順次止めて、正午までに京阪神のすべての列車の運転を取りやめる」という計画を発表しました。

なぜ前日に発表したのでしょうか。

K181011_08.jpg

JR西日本は、計画運休実施のルールを2015年に決めていたのです。非常に強い台風、中心気圧でいうと概ね950ヘクトパスカル未満の台風が、京阪神に接近することが予想されるときは、前日の夕方までに運休を発表するというものです。
JR西日本は、過去に計画運休を試みたことがあります。2014年の台風19号のとき、前日に「京阪神のすべての列車の運転を取りやめる」と発表し、計画運休を実施しました。しかし、予想したほど強い風は吹かず、結果的には「計画運休は必要なかった」と批判もあったといいます。
JR西日本は、批判は受け、社内でも改めて検討を行いましたが、やはり早めに知らせた方が、利用者があらかじめ準備ができるなど、メリットは大きいとして、前日の夕方に知らせることを決め、2015年に公表しました。

一方、JR東日本は別の考えなのです。

K181011_09.jpg

JR東日本は「今のところ、1日前に計画運休を判断する考えはない」としています。
それは、「安全が確保されている間は、できるだけ運行を継続する方が利用者のため」という考えに基づいています。さらに気象の予測精度も理由です。早めに計画運休を決めても、運休が必要なかった場合、その影響は非常に大きいので、ある程度の見極めができるところで判断することにしています。
どちらがいい、悪いという判断は難しいと思います。
ただ、JR東日本の情報の伝え方にも工夫の余地はあると思います。たとえば、計画運休を最終的に決めていなくても、可能性がある程度でてきた段階で、そのことを早めに発表するという方法です。こうすれば心構えもできます。
これについてJR東日本は、「どういった伝え方がよいのか、検討していきたい」としています。

台風24号では、JR以外の鉄道会社も計画運休を行いました。

K181011_10.jpg

しかし、JR西日本のように、計画運休について何を基準に判断し、どのタイミングで発表するかといったことについて、事前に決定した方針を公表している鉄道会社は、ほとんどありませんでした。
そうしたことが、計画運休の情報が思うように伝わらなかったなど、今回の課題の背景にあると思います。これを機会に、十分な議論を始める必要があると思います。

◇運転再開の課題
台風24号では、計画運休とは別に、翌日の月曜日は、朝からダイヤが乱れて、混雑しました。運転再開についても課題を残しました。
JR三鷹駅では、電車に乗れない人たちが駅の外まで続いていました。JR東日本は、9月30日の夕方、「翌日は始発から平常運転の予定」と発表していました。しかし、倒木などが見つかったため、始発電車を回送に切り替えて、客を乗せずに走らせて安全の確認をしました。
このため、10月1日未明になって「始発から全線で運転見合わせる」と発表を変更しました。「平常運転」と「全線見合わせ」では、まったく逆です。
昼までには、ほとんどの路線で運転が再開されましたが、32の駅で入場規制をするなどの混乱がありました。
始発からの運転再開の情報の伝え方について、JR東日本は「反省点があった」と話しています。

◇鉄道各社に求められること
今回の対応を見ると、鉄道会社にはいろいろ検討してほしい点が見えてきます。台風24号では、広い地域での計画運休を余儀なくされ、運転再開の判断もこれまで以上に慎重さが必要でした。最近は、以前より勢力の強い台風が上陸するケースがありますので、台風への備えを一層進める必要があると思います。

K181011_11.jpg

そして、情報を早く正確に伝えるため、鉄道会社が情報発信をホームページやSNSなど、どのような方法で、どのタイミングで行うのか、あらかじめ決めておいて、利用者に知らせておくことが必要だと思います。
そういったことをしておけば、受け止める利用者たちも心構えができて混乱がより少なくできます。

台風24号は、週末にかけて接近しました。平日だった場合、学校があります。企業などへの影響も大きくなります。特に、子どもが学校から帰れないということになれば、さらに混乱は大きくなってしまいます。
鉄道会社側の検討とあわせて、学校・自治体・企業なども、こういう時にどう対応するか、
人の集まる行楽地やイベントの会場などでは、大勢の人に情報をどう伝えるかなど、私たちも、ひとりひとりが事前に考えておくことが大切になっています。

(中村 幸司 解説委員)

キーワード

関連記事