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「クロマグロ 管理の行方は?」(くらし☆解説)

合瀬 宏毅  解説委員

こんにちは。くらし☆解説です。
今日のテーマは「クロマグロ 管理の行方は?」です。歴史的な低水準にある太平洋クロマグロの、国内での漁獲量の配分を見直す水産庁の検討会が行われています。
合瀬宏毅(おおせひろき)解説委員です。
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Q.クロマグロ、私も大好きですが、なぜ今、こうした動きになっている?
日本近海でとれる太平洋クロマグロは、国際的に獲ることの出来る量が決められ、それを水産庁が漁法ごとや都道府県に振り分けている。ところがその配分が不公平だという声が上がっているのです。
まず、その太平洋クロマグロですが、日本近海で生まれ、成長すると体長1.5mを超える大型の高級魚です。ところが、1960年代には16万トンいた親魚、2010年には1万2000トンと、歴史的な最低水準にまで落ち込みました。
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Q.急速に数が減っていますね。
はい。そこで国際機関では、2024年までに親魚の数を4万3000トンまで回復させることを目標とし、加盟国に漁獲量を割り振りました。
その結果、日本は、30キログラム未満の小型クロマグロについて、4047トンが、30キロ以上の大型マグロについては、4882トンの漁獲が割り当てられた。
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Q.これが国際約束となっているわけですね。
とはいっても、これを実際に守るとなるとなかなか難しい。日本には大規模巻き網船から、小型の沿岸つり船まで様々な漁業者がおり、その調整は難航を極めるからです。
対立しているのは、小型船で一本つりなどを行う沿岸漁業と、大型船でマグロを巻いて獲る巻き網漁の人たちで、この日は沿岸漁業の人たちが、大型クロマグロの配分の見直しを求めて水産庁に抗議に訪れていました。水産庁前には全国の沿岸漁業者が集まり、クロマグロ漁を行う沿岸漁業への配分があまりにも少なく、不公平だと訴えたのです。
こうしたことから、水産庁があらためて配分のあり方について、学識経験者も含めて、議論することになった。
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Q.そもそも国内の配分、どう決められていたのか?
基本的には過去の実績に基づいて、配分されています。こちらは今回の騒ぎの元となった配分案ですが、日本に割り当てられた大型クロマグロ4882トンのうち、万が一、漁業者が配分枠を超えた場合、超過分を吸収するための留保枠として国が押さえる728万トンを除いて、大型の巻き網漁に2813トンと全体の58%が、近海の延縄漁に3%の167トン、そして小規模な船で漁を行う沿岸漁業全体に1174トン、およそ24%を配分した。
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Q.確かに沿岸漁業への配分が少ないですね。
この数字、水産庁は2015、16の2年間の実績をもとに行ったと説明している。
ただ、2015、16年は大型クロマグロの回遊が少なく、小型船の漁には不利だった時期。しかも沿岸にはクロマグロをとる船が2万隻以上いる。国は巻き網漁に配分しすぎで、これではとても暮らせないと反発しているのです。
 結局、今年の分については、国は留保分のうち、370トンあまりを、沿岸漁業に追加配分することで決着しましたが、来年度以降については、検討会で改めて配分を議論することにした。
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Q.検討会はどうなりそう?
先日行われた第一回会合では、これまで寄せられた様々な意見が紹介されました。
このうち沿岸漁業からは、過去の実績ベースを見直し、漁を行う人のクロマグロへの依存度や、地域経済への影響を重視して、自分たちに多く配分すべきだという意見が出されました。
一方で、巻き網業者は、以前から独自に資源管理に取り組んでおり、一方的に配分量が減るのは了解できないという立場です。
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Q.双方とも言い分がありそうですね。
ただ、双方が納得できるような配分案を纏めないといけません。どちらかが不満を抱えたままでは、規制は守られず、資源管理が破綻することになりかねないからです。それは私たちの食卓にも影響します。
そうした意味で、もう一つ課題になっているのが、産卵場での保護のあり方での対立です。

Q.どういうことですか?
クロマグロは4月から8月にかけて、卵を産むために台湾から日本海に回遊してきます。その大型のクロマグロを狙うのが巻き網漁で、高性能な魚群探知機を使い、産卵に訪れたクロマグロを一気に巻いて捕まえます。
 巻き網漁にとっては最も効率的な漁法ですが、しかし卵を産むクロマグロを捕ることは、資源に悪影響を与えるとして、沿岸漁業側は強く反発しています。

Q.確かに産卵期の親魚をとることについては、心配もありますよね。
ただこれにはクロマグロなりの特性があります。
というのも一般的な魚は、親を一定数保護することで、子供の数を増やし資源を拡大します。ところが、クロマグロは、サケなどと比べて桁違いの1500万個に及ぶ卵を持ち、膨大な数を産卵します。
そうした多く卵を産む魚は、親の数より、生んだ卵がどれだけ生き延びて、大きくなるか。つまり水温など卵が育ちやすい環境などが、資源に強い影響をもつとされています。
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Q.そうなのですか。
もちろん、親の数が子の数に影響を与えることは否定できません。しかし、同じ守るなら、大型より小型のクロマグロを保護する方が資源拡大に効果があるとされている。
国際機関でも、親魚を保護するよりは、小さな魚を卵を産む親にまで育てることが、資源量に効果は大きいと、指摘している。 水産庁としてはこうしたことを、沿岸漁業者に丁寧に説明する必要があります。
実際にクロマグロの数、3年前からの規制もあって、増えているんです。
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Q.そうなのですか?
 太平洋クロマグロの親魚の数、2010年には、1万2000トンと歴史的な低水準にまで減少しましたが、規制を始めた後の2016年には2万1000トンとなり、このまま規制を続ければ、2024年には4万3000トンの目標を98%の割合で達成すると、専門家グループは公表している。
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Q.規制の効果が見えはじめているということですね。
はい。こうしたことから、日本としては、先日福岡で行われた国際会議で、現在の漁獲量を15%引き上げることを提案していた。
ただ、規制を始めて3年しか経っていない段階で、漁獲量を増やすことが妥当なのか、結局はアメリカなどの反対で合意することはできませんでした。
水産庁では、資源管理に取り組んだことで、クロマグロが増えたことを漁業者に実感してもらいたいという考えで、来年の会議でも同じ提案を出すことにしています。
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Q.今後管理の行方どうなるのでしょうか?
  3年前に始まったクロマグロの漁業規制は、業者間の対立を生むなど、地域にとって大きな負担をもたらしました。ただ規制を続けた結果、資源が増えてきたのも事実。それは私たち消費者にとっても利益となります。
国際会議で漁獲枠を増やすためには、現状の漁獲枠を守ることが大前提です。そのためにも不公平感のない配分方法をどう作り上げるのか。来月にもまとまる配分の方法に注目していきたいと思います。

(合瀬 宏毅 解説委員)

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