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「準備していますか 災害時の食料」(くらし☆解説)

合瀬 宏毅  解説委員

テーマは「準備していますか 災害時の食料」です。この夏続いた豪雨や地震などで、改めて食料備蓄を思い返した人も多いのではないでしょうか?合瀬宏毅(おおせひろき)解説委員です。

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Q.岩渕さんは災害用の食べ物、準備していますか?

災害時、ガスや電気などがストップしたり、スーパーなどが被災した場合、困るのは食べ物ですよね。
これは北海道胆振東部地震が発生した当日の札幌市の様子です。食料品などを売るコンビニエンスストアには朝早くから買い物客が押しかけ、パンやカップ麺、それに電池などを次々に買い求めていました。
市内では、停電などで開いていない店も多くあり、この店もこの日は食品などを並べることは出来ましたが、配送元からの流通が寸断されていることもあり、店長は翌日以降、食料や飲料水が届くかどうかわからない状況だと話していました。

Q.大変ですね。

もちろん、地震発生から10日以上たった今では、一部を除いて店も再開し、食料も行き渡っているようですが、震災直後は流通もストップしてしまいます。
ただ、災害時の食料備蓄に関しては、みなさん、あまり危機感はなさそうです。

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これは総務省が去年、全国18才以上の男女3000人に聞いたアンケートですが、大地震などが起こった場合、食料や飲料水などの確保が心配だとする人は57%、準備しているとする人は46%と半分にも足りませんでした。
国は防災基本計画などで、最低3日分、できれば一週間分の食料備蓄を一般の家庭に呼びかけているのですが、あまり浸透していないようですね。

Q.なぜ危機感は薄いのでしょうか?

準備していない理由を聞くと、「何をすればいいのかわからない」とか、「たくさん店もあるし、買えないことはない」、また「置いておくスペースがない」とする人、さらに「国や自治体が何とかしてくれる」と、思っている人も多いようだ。

Q.確かに、避難所などで、食べ物を配っている映像を見かけますよね。

今回の北海道胆振東部地震でも、カップ麺や乾燥ご飯、液体ミルクなど、様々な食料が、被災地へ向けて送られました。
もちろん国も今回、被災地の要望を待たずに、地震発生から1週間の間に26万食を災害対策基本法に基づき、現地に送っている。
ただ、こうした食料が被災地にすぐに届くわけではないのです。

Q.どういうことですか?

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これは3年前に発生した熊本地震の際に、国が行った食料供給量と、避難者の時期とを時系列で並べたものです。
国から被災地の物流拠点に支援物資が届いたのは、4月14日の地震が起きてから3日後。その後増え続け、6日後の4月20日にはピークとなっています。ところが避難した時期と数を見てみると、ピークは18万人と3日目。つまり、避難時期と食料供給の時期にズレがあるのです。
もちろん自治体でも一定量の食料は備蓄していますが、備蓄している施設そのものが被災したしてり、行き渡るまでに一定の時間がかかる可能性がある。

Q.そこで家庭での備蓄が必要になってくると言うことですか。

そうですね。では家庭でどのくらいの食料が必要なのか、国が勧める一週間分の備蓄例(二人用)をみてみます。

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まずは水、飲料水として1日、一人あたり1リットル、調理用の水を含めると3リットルが必要です。このため二人1週間であれば、2リットルの6本入りケースで4ケース。またガスが止まった時用のカセットコンロとガスボンベ12本。
これを必需品として、主食としてコメ2キロ袋を二つ、乾麺、例えばそうめんとパスタそれぞれ2袋ずつ。カップ麺6個、パックご飯6個。

Q.そしておかずですね。

はい、主菜としてレトルト食品の牛丼の素や、カレーなど18個とパスタソース6個、そして缶詰18缶。
それに副菜として野菜ジュースやインスタント味噌汁、ジャガイモなど日持ちのする野菜に、塩、砂糖、醤油、めんつゆなどの調味料としています。
タワーマンションなどは外に出るのも大変ですから、こうしたものを家に備蓄しておくか、いざというときのために、持ち出し袋の中に入れておくなどリスクに応じて準備しておくことが必要だとしています。

Q.ただ、これ、そろえるの、大変ですよね。

そうですね。必需品はともかく、主食、主菜と分けてありますからね。これだけ揃えるのは大変ですよね。
ただ、最近はそのまま利用できる非常用の加工食品も開発、販売されています。
▼例えば、水を使っても柔らかいご飯に戻る、おにぎりやチャーハン。ご飯を乾燥処理したアルファ米をつかっています。
▼また、こちらはカレーとご飯だけでなく、これを暖める発熱材も同封してあり、20分で暖かいカレーライスや牛丼が作れるようになっています。
▼そしてこちらは、缶詰に入ったパンやデザートで、開ければそのままパンやチーズケーキとして食べることが出来るようになっています。
食べてみると、結構美味しい。

Q.いろんなものが売られているのですね。

被災当日は、精神的にも落ち着きませんので、まずはカロリーの高いアルファ米や乾パン、これが基本ですが、日が経つにつれてだんだん飽きてきます。すでに料理してあるこうした加工品を備蓄しておくのも一つの手段かもしれませんよね。
▼さらにいまは、高齢者向けに、飲み込みやすい介護食としての食品や、食物アレルギーを持っている人向けに「アレルギー物質27品目不使用」などの表示のある加工食品も増え、非常食もずいぶん充実してきている印象です。

Q.値段はどうなのか?

こうした商品は、だいたい賞味期限が5年と多いのですが、価格も300円から500円と高めです。

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このため、こうした専用の非常食を用意しなくても、例えば、ローリングストック法と言って、家庭で普段使う食料品の中でも、普段使いで保存期間の長いレトルト食品や缶詰を多く買い置きし、非常時のためのチェックリストを作成する。そして賞味期限のきたものから消費し、減った分だけ補充していく。
こうした方法と冷蔵庫に残っている食品で、非常時を乗り切る。こうした方法をとる家庭も増えてきている。

Q.こちらの方が簡単かもしれませんね。

まとめて非常食を買い置きしておくと、そこで安心して、賞味期限が切れていたという事もあります。ローリングストック法などを組み合わせて、常に防災意識を高めておく方が良いのかもしれません。

Q.普段からの防災意識が大切と言うことですね。

はい。今回の北海道地震の例を見ても、地震発生から3日目ぐらいまではスーパーやコンビニでは飲料水や粉ミルクなどは全てが欠品か、品薄で、通常通りにもどったのは、1週間後でした。
地震など急な災害が起きると、誰もが慌てて食品を買いに行きがちですが、そうした行為が食料不足をさらに加速させることも考えなくてはなりません。いざというときに、慌てなくてもすむように、一定の食料備蓄は必要だと思います。

(合瀬 宏毅 解説委員)

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