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「風疹 感染拡大とその対策」(くらし☆解説)

中村 幸司  解説委員

2018年は、風疹に感染する人が増えています。どこまで広がるのか心配な状況になっています。風疹の感染拡大とその対策について、お伝えします。

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◇風疹
風疹は、子どもは比較的症状が軽いですが、まれに重い合併症になることがあり、大人も症状が長引くことがあります。
特にこわいのは、「先天性風疹症候群」です。妊娠している女性が感染して、おなかの赤ちゃんが先天性の病気になってしまうことです。

◇風疹の患者数の推移
2018年は、どれくらい広がっているのでしょうか。

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上の棒グラフは国立感染症研究所が、9月5日現在でまとめた1週間ごとの国内の感染者の数の推移です。8月27日~9月2日の1週間で、あらたに75人の感染者が報告されました。
前の週より減っていますので、ピークは過ぎたと考えがちですが、そうではないようです。グラフにはありませんが、次の週に100人以上の感染が報告されていることがわかっていて、増え続けているのです。

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上のグラフは、2008年から2018年までの感染者の数の推移です。右下が2018年に増えているところにあたります。
2012年から13年に大きな山があります。この流行のときは、大きく取り上げられましたので記憶にある人も多いと思います。
風疹は、理由ははっきりしませんが、流行から5年ほどして再び流行することがよくあります。今回もそういうことなのかもしれないのです。

2018年が2012年~13年のような大きな流行になってしまうのか、どれくらいの感染者の数になるかはわかりませんが、専門家は、大きな流行に入ったのではないかと危機感を持っています。

◇風疹の症状と感染力
風疹には、厄介な側面があります。

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症状は、発熱、発疹、耳の後ろなどのリンパ節の腫れという3つが主な症状です。
しかし、3つすべてが揃っていないことがあります。発熱だけで発疹がなく、風疹と診断されず、知らないうちに周囲に広げてしまっていることもあります。
15~30%の人は、感染しても症状が出ないといわれています。潜伏期間が2週間から3週間あって、発疹の出る1週間くらい前から周囲にうつしてしまう危険があるとされています。
症状が出ていなくても、うつしてしまうことがあるのです。
インフルエンザと同じように、飛まつ感染します。感染の広がりやすさは、インフルエンザより強いとされています。
気づきにくく、人にうつしやすいということなのです。

◇先天性風疹症候群とリスク
風疹で怖いのは、妊娠している女性のおなかの赤ちゃんが先天的な病気になってしまう「先天性風疹症候群」です。

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先天性風疹症候群は、具体的には白内障などの目の病気、難聴などの耳の病気、それに先天性の心臓の病気などです。

妊娠20週、つまり妊娠5か月くらいまで注意が必要です。妊娠初期ほどリスクが高いとされています。
そのリスクは、妊娠1か月で感染すると赤ちゃんの50%以上が先天性の病気に、2か月で35%、4か月で8%とされています。非常に高い割合です。

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大きな流行だった2012年~14年にかけて、45人が先天性風疹症候群と報告されています。妊娠している女性への感染は絶対に防がなければなりません。

◇風疹の感染対策
対策としては、ワクチン接種になります。風疹は、厄介な病気といいましたが、ワクチンで予防可能な病気です。どうすればいいかは、はっきりしています。
ワクチンは、医師に相談した上で、2回接種が基本です。

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女性は、子どものころの接種を含め、妊娠前に2回接種してください。1回でなく2回です。
ただし、妊娠中はワクチンをうってはいけないことやワクチン接種後2か月は妊娠しないようにする必要がある点に注意してください。
一方で、こうした女性自身が行う対策で感染を完全に防ぐことはできませんので、妊娠中の女性がいる家族は、ワクチン接種を考えないといけません。
このとき、「子どものころに風疹にかかったと親から聞いている」と言って、自分は大丈夫と思っている人がいますが、これはダメです。風疹にかかった記憶のある人の半分は記憶違い、間違いだったという報告もあるということです。以前は、診断が正確でないことが少なくありませんでした。こうしたことは家族に限らないことです。
感染したことがはっきり確認できない、あるいは2回のワクチン接種が母子手帳などの記録に残っていない場合は、ワクチン接種をするようにしてください。
このほかの人も、職場などでうつしてしまう危険性がありますから、対策が必要です。

◇30~50代の男性の問題
特に問題なのが、30代から50代の男性です。

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図の右は2018年の風疹患者の報告数を男女別でみたものです。男性が女性の4倍もいます。特に男性の中の80%は、30~50代です。

極端にこの年代が多いのは、なぜでしょうか。

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上図は、免疫を持っている人の割合を年齢別に見たものです。青が男性、赤が女性です。
現在は、1歳と小学校に上がる前の合わせて2回ワクチン接種するので、若い世代は免疫持っている割合が高くなっています。
図を見ると、女性はどの年代も免疫を持っている人の割合が高いですが、男性の30~50代は低くなっています。
ワクチン接種の制度は、過去いろいろ変わってきました。男性の28歳より上は1回の接種だった世代で、39歳以上は、接種していない世代なので、免疫を持っていない人が多いと考えられます。(年齢は2018年現在)
30~50代の免疫を持っていない男性は、数百万人ほどいるとみられています。
この世代の人で、風疹の感染やワクチン接種が確認できない人は、家族に妊娠している人がいなくても、ワクチン接種を考えてください。

◇ワクチン接種の方法と費用
ワクチン接種には、はじめから接種する方法と、免疫があるかどうかを調べる「抗体検査」を行って、免疫が不十分だった場合にワクチンを受けるという方法があります。

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費用はどれくらいかかるのでしょうか。
多くの自治体が、ワクチン接種の費用を助成する制度を設けています。女性は無料としている自治体や男性も含めて3000円ないし数千円の負担に抑えているケース、抗体検査の費用を負担してくれる自治体もあります。
自治体によって対象や金額も異なりますので、問い合わせてみてください。

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風疹について、「妊娠している女性は、ワクチン接種しているだろうから、自分が打っても打たなくても関係ない」と考える人がいるかもしれませんが、それは違います。
ワクチンを2回接種しても、まれに十分な免疫ができない人がいるとされています。特に注意したいのは、1回接種の女性です。ワクチンを1回接種していたのに赤ちゃんが先天性風疹症候群になったケースが少なくないのです。
ほかにも、何らかの事情でワクチンを接種していない、接種できない女性もいます。女性の側で、感染を完全に防ぐことはできません。
だからこそ、周りの人がワクチン接種してリスクを抑えることが大事です。
日本では風疹の流行が繰り返されてきたにもかかわらず、いまの30代以上の世代の男性を中心にワクチン接種が一向に進んでいません。ワクチン接種、抗体検査をして、みんなが風疹の感染を抑えて、おなかの赤ちゃんを守ってあげることが大切です。

(中村 幸司 解説委員)

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