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「北海道地震 なぜ全域停電? どう節電?」(くらし☆解説)

中村 幸司  解説委員

北海道で2018年9月6日に震度7の揺れを観測した地震では、一時、北海道全域が停電しました。停電の復旧は進みましたが、北海道では節電が必要とされていて、影響は続いています。
なぜ全域停電になったのか、節電はどのようにしたらいいのか考えます。
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◇北海道地震と被害
北海道地震では、土砂崩れなどにとともに電力に深刻な被害が出ました。電気は生活に欠かせませんし、鉄道や空港といった交通機関、工場や酪農などの産業がストップする影響が出ました。

◇なぜ北海道全域が停電したのか
一部地域の停電は、起こることがありますが、今回、なぜ北海道全域が停電したのでしょうか。
詳しい調査が進められているところですが、発電所を守るため、最終的に全域停電せざるを得なかったということです。
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発電所では、石炭を燃やすした熱などを利用して発電しています。上図の上段のように、電気は変電所を経由して、住宅などに送られています。
発電の仕組みをイメージで言うと、上図の下段のような感じです。発電所の中では、自転車をこぐようにして電気を起こしています。自転車の左の電球は、発電された電気を示します。
発電所から送られるのは、北海道や東日本では、50ヘルツという周波数の電気です。1秒間にプラスとマイナスが50回入れ替わる電気です。この周波数は一定に保つ必要があります。
図の下段のイメージでは、ペダルの回転の速さが周波数に相当します。ペダルを一定の速さで回転させるようにします。
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電気は、住宅や工場、オフィスなど様々なところで使われます。発電所1か所ではなく、いくつも必要になります。
複数の発電所が稼動している状態は、イメージでいうと、自転車を何人かで縦に並んでこいでいることにあたります。
発電所は、それぞれ別々に、好き勝手に電気を起こしているのではないんです。お互いのペダルがチェーンでつながっていて、息を合わせて、同じペースでペダルをこいでいるのです。連携して発電しているのです。
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今回、この状態で地震が起き、苫東厚真火力発電所という規模が大きい発電所が運転をとめました。
1人が自転車をこげなくなってしまったわけです。すると、他の2人の負担が一気に増します。一所懸命こごうとしますけれど、1人減ったのでペダルが重くなって、こぐ回転が遅くなります。
実際に今回の地震では、電気の周波数が50ヘルツから下がってしまいました。
電気の周波数は重要です。周波数に変動があると、工場で使っているモーターの速さが変わって、製造する製品に影響が出るなど、様々な問題が生じます。
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そうならないようにするため、2人は回転のスピードを取り戻そうとしますが、ダウンした1人が力持ちだったので、2人の脚力の限界を超えています。
こうしたとき、休んでいた発電所が急きょ発電を始めて応援したり、電気の供給を絞り込んだりして、いわばペダルを軽くしてあげる対策が行われます。しかし、今回こうした対策がうまくいきませんでした。
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このまま無理してこぎ続けると、この2人もダウンしてしまいます。そこで、やむなくこぐのをやめて、すべてが停電したというわけです。発電所は連携して電気を作っていますので、うまく対処できないと影響が全体に及んでしまうことがあって、今回がまさにそういったケースだったのです。
それにしても、1か所(自転車の1人)のトラブルで、全体が停電するというのは、影響が大きすぎる気がします。対策がなぜうまくいかなかったのかは、注目される点です。詳細は調査中で、まだわかっていません。

◇全域停電は、他の地域でも起こりうるのか
今回の全域停電の要因として、止まった発電所の規模が大きかったことなどが上げられています。果たして北海道だけのことなのか、どうかということも含めて、詳しい検証が求められていると思います。

◇復旧後の発電と需給状況
復旧後はどうなっているのでしょうか。
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停電が避けられる状態まで状況を引き上げようと、古い発電所を稼動させるなど、集められるだけ電気を集めています。

これで電気は足りるのでしょうか。
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上の図は、地震の前日、9月5日の北海道の電力の1日の使用状況を青い線で示しています。これに対して、9月12日現在、北海道で供給できる電力は赤いラインでおよそ350万キロワットです。
特に日中の時間帯の電力が足りないことがわかります。このため節電が必要なのです。
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政府や北海道電力は、「平日の午前8時半から午後8時半の間、20%の節電」をするよう呼びかけています。

◇節電の方法
節電は、どのようなことをしたらいいのでしょうか。
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節電の考え方には、3つポイントがあります。
▽使う電気の量を減らすこと、
▽どうしても使う電気は、みんながあまり電気を使わない時間帯にずらして使うこと、
▽他のエネルギーで代わりになるものは、電気以外に切り替える。

夏の北海道の家庭で使われている電気の内訳が、下図の左側の円グラフです。
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照明、冷蔵庫、テレビが多いことがわかります。北海道なので、エアコンが上位にありません。
使う量を減らすなら、
▽照明は、部屋にいないときは消す
▽冷蔵庫は、中の食品などを整理するとともに、設定を「強」から「中」にする、
▽テレビは、省エネモードにしたり、画面の明るさの設定を暗くしたりしてください。
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このほか「待機電力」もあります。テレビ、電子レンジ、エアコンなどは、リモコンでオフにしていても電気を消費しています。そうした待機電力が家の中で積もり積もって、6%にもなっています。使わないときは、本体に主電源があるものはこれを切るか、なければコンセントを抜くようにして待機電力を抑えてください。
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使用時間帯をずらす方法としては、日中でなくてもいいもの、たとえば洗濯などは日中するのではなく夜間や早朝にするといいでしょう。
他のエネルギーに切り替える例としては、次のようなものがあります。特に熱を作り出す製品は大きな電力を使います。たとえばお湯を沸かすとき、電気ではなく、ガスがあればガスで沸かしてください。洗濯も電気で乾燥する際は大きな電力を使います。洗濯機は脱水までにして、あとは外に干して、太陽エネルギーを利用するということが節電になります。

ここまで、家庭を中心にお伝えしましたが、オフィスでは照明に使われる電気が大きいので、照明を間引くなど、企業や家庭はじめ、あらゆる場で節電を進めることが求められています。

◇計画停電と今後
節電が十分できなかったらどうなってしまうのでしょうか。
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電気が足りなくなりそうなときは、一部を順番に停電にすることになります。いきなり停電にすると、影響が大きいので、あらかじめ停電する地域と時間帯を決めて、順番に停電させるという方法を取ります。
これが「計画停電」です。
計画停電は、東日本大震災のときに行われました。9月12日現在、計画停電は避けられています。ただ、今後どうなるかは、状況をみる必要がありそうです。
というのも、苫東厚真火力発電所の復旧が遅れています。さらに、北海道は冬になると夏より電力を必要とします。きょう、あすの電力をどうするかということと併せて、不安定な電力供給が長引かないようにする、長期的な視点からも、対策を進めることが求められています。

(中村 幸司 解説委員)

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