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「ハザードマップを見てみよう」(くらし☆解説)

土屋 敏之  解説委員

テーマは、「ハザードマップを見てみよう」。土屋解説委員です。

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◆そもそも、ハザードマップとは?

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ハザードマップは「防災地図」などとも呼ばれ、市区町村が基本的に作成・公表しています。水害や土砂災害などの危険がある場所を地図に示して災害に備えたり、住民が適切に避難できるようにするためのものです。きょうはその中でも洪水のハザードマップについて取り上げます。
こちらは岡山県倉敷市の真備町周辺のハザードマップですが、紫色の所は川の堤防が決壊すると2階の屋根まで浸水するおそれがある地域を示します。こうした浸水の深さに加えて、避難所などの情報も書きこまれています。

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これに対して実際に西日本豪雨の際どこが浸水したのか?国土地理院が推定したのがこちらの青い所ですが、ハザードマップで想定されていた場所とほぼ一致しました。もちろん、いつもハザードマップ通りの災害が起きるわけではありませんし、色が塗られていない場所で被害が出ることもありますので過信してはいけませんが、ハザードマップがいかに重要かあらためて示されたと言えます。

◆ハザードマップと言われても見たことがない人も多いのでは?

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真備町の住民の方からも「ハザードマップを知らなかった」という声があり、国土交通省は先月、全国の自治体に住民への周知を徹底するよう通知しました。と言うのも、それだけハザードマップの認知度が低い実情があるからです。
3年前の関東・東北豪雨の際、大きな被害を受けた茨城県常総市で中央大学が調査したところ、市が配布していたハザードマップを「知らない、見たことがない」と答えた人が6割以上でした。

◆そもそも自分が住んでいる所のハザードマップをもらった覚えがない人もいるのでは?

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それも問題の一つで、水害ハザードマップの配布や周知方法も自治体によってまちまちです。3年前の国土交通省の調べでは、周知方法として役場や公民館に掲示したり市町村のイベントで周知しているといった所が多く、必ずしも全ての自治体で住民に行き渡ってはいません。本来全世帯に配布するのが望ましいものの、予算的に厳しいとする自治体も多いのです。一方で配布されても住民が重要と思わず見なかったり、なくしてしまうという問題もあります。

◆あらためてハザードマップが欲しいと思った場合はどうすればいい?

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最近はホームページに載せる所が増えていますので、パソコンかスマホがあれば市区町村のHPをチェックするのが早道です。また、国土交通省のポータルサイト「わがまちハザードマップ」は、全国の自治体が公表しているハザードマップにリンクしています。
そしてネットは使えないしスマホを持っているご家族もいないという場合は、災害が起きていない普段、役場に問い合わせておくとよいと思います。

◆でも、ハザードマップを具体的にどう見たらいいのか?難しそう

どんな風に見て使えばいいか、例として私の実家がある愛知県の某市を例に見てみましょう。

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洪水ハザードマップで見ると実家周辺は青く塗られているエリアになりました。説明を読むと、この青い色は周辺のある川が氾濫した場合に深さ2m~5mも浸水する危険があるとわかります。周辺にある大きな川の堤防より低い住宅地が広がっているため、氾濫が起きると水に浸かってしまうのです。

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そうなると確認しておきたいのが避難所です。ハザードマップでは実家から400m南東に小学校があってこれが最寄りの避難所ですが、そこも青い、つまり浸水するエリアにあるとわかります。

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この小学校に行ってみたところ、「水害時は上層階へ避難する場合があります」と掲示されていました。つまり校舎の2階以上に上がることになるのですが、ここまで避難する道も水に浸かる危険があります。
 
◆そういう場合はどうすればいい?

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色がついていない方向を見ると、少し遠いですが北西方向にも小学校があります。この実家の北西方向には小さな坂があって、普段あまり意識しないぐらいの坂なのですが、ここを境に色が変わる、つまり浸水のリスクが大きく変わっていて坂の上の方に避難すれば比較的安全だとわかりました。このハザードマップには矢印で、住民がどちら方向に避難すればいいかの目安も書かれています。このように、「どこに避難すべきか」「どんなルートを取るのがよいか」なども、日頃ハザードマップとつきあわせて見て、さらに出来れば一度歩いてみるとよく理解できます。
もちろん、洪水が起きてしまった後では、広い範囲が浸水して、どこの避難所に向かうのも困難になってしまうこともあります。ですから洪水が起こる前に、避難勧告が出るなどしたら速やかに避難行動を取ることが何より大切です。

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また、最近は地球温暖化の影響もあってか、これまで例がないような豪雨や洪水が相次ぐようになってきました。こうした中、これまでのハザードマップは過去100年に一度ぐらいの確率で降った雨の量を元に浸水想定をしていましたが、3年前の法改正でより深刻な「最大規模」の降雨を想定したハザードマップにすることが求められました。そこで今、全国の自治体で改定が進められている最中です。

◆先週、東京の荒川流域で新しいハザードマップが公表された

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東京東部の5つの区が共同で新たなハザードマップを発表しましたが、これが改定後のハザードマップの例とも言えます。最大規模の雨量で荒川と江戸川の両方が氾濫した場合を想定したところ、床上浸水になる地域の人口が233万人にも上るとわかりました。
また、これまで浸水するエリアの“色”は市町村によって赤かったり青かったりまちまちでしたが、改定で配色の基準が設けられました。このように深くなるにつれ黄色から赤系統で示すのが標準になりました。

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他にも、浸水が続く時間も示されることになりました。こちらで赤い所は2週間以上も浸水することが想定されています。

◆本当に大変な被害想定だが?

この地域は海抜ゼロメートル地帯が広がっていることもあって特に深刻な被害のおそれがあるため、あらかじめ5区の外へ広域避難を呼びかける計画も併せて発表されました。
他の地域でも今後、最大規模の雨量を想定したハザードマップへの改定が進むにつれて、より踏み込んだ防災計画が必要になると見られます。その際、行政には新たなハザードマップをぜひ全世帯に配布して、その上でHPでも公開したり、住民への周知も徹底してほしいと思います。

(土屋 敏之 解説委員)

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