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「減らせるか? 使い捨てプラスチック」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

レジ袋やペットボトル、惣菜の容器といった、使い捨てのプラスチックを減らそうという取り組みについて、今井解説委員に聞きます。

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【こうしたプラスチックの容器・包装は、今では生活に欠かせませんね】
そうですよね。生活に欠かせなくなっていることから、今、世界で年間3億トンのプラスチックが生産されている中で、40%近くが、こうした容器や包装と推計されています。軽いし便利ですよね。

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ただ、一度しか使われず、すぐに捨てられるものも多くあります。リサイクルの仕組みがしっかりしていない国もありますし、リサイクルの仕組みがある先進国でも、ポイ捨てがまだまだあります。そうしたゴミは、風や大雨にさらされて側溝や川に入り込んで、最後は、海に流れ込みます。今、世界規模で、毎年800万トンが海に流れ込んでいると推計されています。プラスチックは、紫外線や波の力で小さくはなっても、プラスチックのまま残ります。このままでは、2050年(あと30年後)には、海の中のプラスチックの量(重さ)が、魚の量を超えるという予測まであって、世界的に問題になっているのです。

【海が汚くなるのは困りますね】
景観が悪くなるだけではありません。
▼    2015年には、ウミガメの鼻にストローが突き刺さった動画がインターネット上に投稿され、世界の多くの人に衝撃を与えました。クジラやあざらしなどが誤って飲み込んで死ぬこともあります。
▼    また、波の力などで直径5ミリ以下まで粉々になった「マイクロプラスチック」と呼ばれる破片は、有害な化学物質を吸着しやすいとされています。それを、魚や鳥が食べてしまい、食物連鎖を通じて、生態系や人間の健康に悪い影響を及ぼすことも心配され、研究が進められています。日本近郊の海でも、多くのいわしからプラスチックの破片が見つかったという報告があります。

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【それはなんとかしないといけませんね】
そこで、今、世界では、こうした容器や包装について、そもそも使うことや、ポイ捨てを減らそうという取り組みが進められています。具体的には、
▼ レジ袋を有料化、あるいは、使用を禁止している国が60カ国以上に達していますし、
▼ ペットボトルを買うときに一定の預かり金を払って、返却すると戻ってくる「デポジット制度」を導入する動きもでています。

【おカネを戻して欲しいから、ポイ捨てはなくなるというわけですね】
はい。ポイ捨てを防ぐ効果があるのです。
▼ また、EUが、プラスチック製の皿やスプーン、フォークなど、幅広い使い捨て製品について、規制する提案を加盟国に行ったり、
▼ 企業の独自の動きとして、プラスチック製のストローや製品の提供をやめる。あるいは、パッケージを再利用可能な素材に切り替えたり。といった動きが相次いでいます。

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【日本はどのような状況でしょうか?】
日本は、人口一人当たりのプラスチックの容器や包装のゴミの量が、アメリカについで世界2位。使い捨てプラスチック大国です。

【でも、きちんと分別して捨てています。リサイクルされているのですよね】
日本のリサイクルの仕組みは、世界的にもきちんとしている方ですが、回収されたプラスチックの多くは、燃料などとして燃やされたり、中国などに資源として輸出されたりしてきました。燃やしてしまうと、二酸化炭素が発生するという別の環境問題につながります。本来、プラスチックの製品から、新しいプラスチックの製品へのリサイクルするのが、望ましいのですが、コストがかかることもあり、国内では、数パーセントに過ぎません。ポイ捨てで、最終的に海に流れ込むものも、残念ながらあとをたちません。

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【道ばたにレジ袋やペットボトルが捨てられているのは、よく見かけます。それが、川から、海に流れ出ているのですね。海外のような対策はないのでしょうか?】
国としての規制はありません。
▼ レジ袋を有料化するスーパーはありますが、レジ袋を辞退する人の割合は、およそ50%で横ばい状態です。
▼ 先日、外食大手のすかいらーくホールディングスが、2020年までにすべての店舗で、プラスチック製のストローを廃止する方針を決めましたが、こうした企業は、まだ一部にとどまっています。
▼ また、今年のG7サミットで、使い捨てのプラスチック製品の削減目標を盛り込んだ「海洋プラスチック憲章」が採択されましたが、日本は、アメリカとともに、署名を見送りました。

【なぜ、署名を見送ったのですか?】
政府は、「国内で調整する時間が足りなかった」などとしていますが、
▼ 日本は、そもそも使い捨てプラスチックを減らそうという、意識や対応が、遅れているという批判が、消費者団体などからあがっていました。
▼    さらに、日本が資源として多くのプラスチックゴミを輸出していた中国が、リサイクルする際の環境汚染を理由に、去年、プラスチックゴミの輸入を禁止したことから、国内で行き場のないゴミが増えて問題になっています。
こうしたこともあって、政府も、ようやく、専門家による小委員会を立ち上げて、プラスチックゴミを減らすための対策の検討に乗り出しました。

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【どのような対策が検討されるのですか?】
今月開かれた一回目の会合では専門家の中から。
▼ 「自然界で分解されるプラスチックや紙など、代替品の開発に力を入れれば、ビジネスにもつながる」
▼ 「海にプラスチックが流れ出すことが多い、アジアの途上国に対して、リサイクルの仕組みを導入してもらう支援が必要」
生活に近いところでは、
▼ 「国内で企業が自主的に使い捨てプラチックの利用をやめるよう、促すことも大事」
▼ 「国の制度として、最低限、レジ袋の有料化を検討すべき」
▼ 「使い捨てのプラスチックに頼る生活やビジネスを見直さなければいけない」
こういった意見が出されました。国は、さらに検討を続け、年度内に対策の大枠を決めたいとしています。

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【私たちも生活を見直すことが必要ですね】
そうですね。やはり一番大事なのは、そもそもの発生を減らすこと。一回しか使わずに捨ててしまう、使い捨てのものは、できるだけ、使わないようにするということだと思います。
例えば、できるだけ、マイバッグやマイフォーク・スプーン、水筒を持ち歩いて、必要のないレジ袋や使い捨てのフォークはもらわないようにする。必要のないペットボトル入りの飲み物は買わないようにするということです。私も一時、マイバッグなどを持ち歩いていましたが、気が付くと、忘れがちになっています。一時のブームではなく、習慣になるように、個人の取り組みだけでなく、社会全体で、生活やビジネスのあり方を見直さなければいけない時期にきているように思います。

【ビジネスのあり方ですか】
そうです。有料化とか、デポジット制度といった、国の規制は有効だとは思います。が、それだけでなく、マイカップやマイ容器を使うと消費者がお得になる仕組みを企業がつくってくれると、消費者の意識も変わるのではないかと思います。そのためには、逆に、使い捨てのプラスチックを使わない企業を消費者や投資家が評価する社会にならないといけません。

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今回の議論を、使い捨てのプラスチックにあまりに頼りすぎている社会を見直すきっかけにしていかなければいけないと、自戒をこめて思います。

(今井 純子 解説委員)

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