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「災害時の避難 ペットはどうする?」(くらし☆解説)

土屋 敏之  解説委員

◆全国で犬と猫だけでも1800万頭以上が飼育されていると推計される中、西日本豪雨のような自然災害が起きたら飼い主はペットをどうしたらいい?

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 一昨年の熊本地震の際の避難所ではペット連れの人とそうでない人との間のトラブルなど混乱もあったので、環境省がこの春、新たなガイドラインを出したばかりです。これによると原則は「自助」、つまり災害時にペットの安全を確保するのは飼い主の責任となっていて、避難が必要な状況になったら基本は「同行避難」することとしています。

◆「同行避難」と言うのは一緒に避難所に行けばいいということ?
      
 必ずしもそうでは限りません。一緒に避難所に入るのは「同伴避難」と呼ばれていて、その意味ではないとしています。避難所でのペットの扱いは自治体や管理者の判断に委ねられていて、ちゃんとしたルールが定められていない所も多いようです。
 「同行避難」というのはあくまで「飼い主が自らの安全を確保した上でペットも安全な所につれて行く」という意味で、その行き先は、避難所に入れるかもしれないが、ペットは人と分かれて外に置く形かもしれないし、避難所では受け入れてもらえず知り合いに預けたりする場合も含んでいます。

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 例えばこちらは熊本地震の10日ほど後の益城町のある避難所の様子です。ここでは、NPOの支援で屋外にケージが並べられ、そこにペットを入れて中で暮らしている飼い主が世話をしに来る屋外別居の形でした。
 ただ、こうした支援があったのは恵まれた方で、ペットはお断りという避難所もあり、それで避難所に入るのをあきらめて車中泊をしたり、壊れかけた自宅に留まる方もいたと言います。
 人命が最優先ですし大規模な災害の直後は人の避難場所も不足する中で、ペットを受け入れたくてもその余地が無い場合もあります。また、避難所の室内にペットを連れ込むことは、鳴き声などの問題だけでなく、アレルギーを持っている人もいますし、人畜共通の感染症のリスクも、特に断水して衛生状態が悪い状況などでは普段以上に懸念されます。一方で今回の西日本豪雨の被災地のように猛暑の中の避難生活で、外にペットを置くのは熱中症の危険もあります。

◆では、どうしたらいい?

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 地域ごとに事情も違い難しい問題です。一例として倉敷市真備町の岡田小学校では、体育館が主な避難場所になっていてそこはペット禁止ですが、これと別にある教室をペット連れの人専用にしました。つまりペットがいる場所といない場所をわけてどちらも屋内で暮らせるようにしました。真備町に隣接した地区にある穂井田小学校では、豪雨から2週間後にペット同伴者専用の避難所を開設してペット連れの避難者を受け入れています。このようにペット連れとそうでない方を部屋で分けたり避難所自体を分けたり出来れば、どちらにとっても悪くないと思います。ただ、実際はこうした所はごく一部です。
 環境省によると7月20日の時点で、広島・岡山・愛媛3県の避難所150か所の合計で、犬と猫あわせて66頭しかいませんでした。避難者の総数から考えると非常に少ない数で、やはりペット連れで避難所に入るのは大変だと言えます。
 今回、獣医師会がペットの一時預かりなどを行ってくれた所もありますが、日頃からいざというときにペットを預けられる先を考えておくなど備えが重要です。

◆他に飼い主が日頃備えておくべきことは?

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 まずはペットがいなくても同じですがお住まいの地域のハザードマップを見て、避難場所や避難ルートを確認しておく必要があります。そしてその避難所ではペットの受け入れはどうなるか?そもそもルールはあるのか?など事前に問い合わせておいた方がいいでしょう。
 また人間同様、ペット用にも避難時に持ち出すものを準備しておきましょう。ガイドラインでは持ち出し品として特に優先順位が高いものを幾つか挙げています。例えばキャリーとかクレートとも呼ばれる携帯できるハウス。移動時も休むときにも使います。首輪やリードは当然かもしれませんが、フードと飲み水も5日分は用意し、食器と共に持参するよう挙げられています。また周りを汚さないようにペットシーツやトイレ・排泄物の処理用品も必要ですし、必要な薬などがあれば欠かせません。この他にお気に入りのおもちゃなども持って行けるといいですね。これらは普段使っているものでいいのですが、予めリュックや鞄にまとめておく方がいいでしょう。
 自治体によってはペット連れの避難訓練などを実施している所もありますし、平時に避難所まで移動してみるといいでしょう。

◆あらためてペットを飼うことは責任が大きいと感じられるが?

 その通りです。ただ、ペットのための備えを考えることはご自分や家族のための備えを考えることにもつながります。地球温暖化が進むにつれて今後ますます豪雨や洪水などの自然災害が激しくなるとも予測されていますので、ぜひこれを機会にもう一度備えを見直したいですね。

(土屋 敏之 解説委員)

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