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「この夏の猛暑と熱中症対策」(くらし☆解説)

中村 幸司  解説委員

2018年の夏は記録的な暑さで、7月23日は埼玉県の熊谷で41.1度を観測し、国内の最高気温を更新しました。この夏の猛暑と熱中症対策について、考えます。

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◇気温の観測
2018年の夏は、経験したことのない暑さです。7月22日午後3時、晴れているところで東京・渋谷で温度を測ってみました。

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すると、温度計はおよそ40度を指していました。気象庁が発表した同じ時刻の「東京」の気温は34.2度、「練馬」は35.8度でした。5度前後も違います。
その理由は何なのか。下の写真をご覧ください。

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こちらは、東京・千代田区の北の丸公園の中です。気象庁が発表する「東京」の気温は、ここで観測しています。正面奥の先のとがった筒状の装置で気温を測っています。センサーは太陽の光が直接当たらないよう、この装置の中にあります。つまり、緑に囲まれた風通しの良い日陰で、地面も芝生で、照り返しが弱いところで観測しているのです。

◇2018年の夏はどれくらい暑いのか
気象庁の全国900あまりの観測地点のうち、最高気温が35度以上の「猛暑日」になった地点の数を示しています。7月23日は、およそ4分の1の241地点が猛暑日でした。

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前年(2017年)と比べてみますと、全体に多いことと、早くから増えていることがわかります。2018年は梅雨明けが早かったので、早くから暑くなっているのです。

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2018年の7月中旬の気温を見てみますと、東日本は平年より3度8分高く、西日本は2度4分も高かったのです。これは、1961年以降で、東日本ではもっとも高く、西日本では2番目に高いという記録的な暑さになっています。

◇なぜ、こんなに暑いのか
太平洋高気圧の日本付近への張り出しが大きくなっています。さらに、高度の高いところでも高気圧が覆っています。上下に高気圧が重なっています。

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高気圧に覆われると、晴れて気温が上がるというのが理由のひとつです。
もうひとつは、空気が圧縮されると温度が上がるという現象です。

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太平洋高気圧からの下向きの気流で、空気が「グッ」と圧縮されて暑くなります。

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さらに上の高気圧の下向きの気流も加わって、「ググッ」と押されて、高温になっていると考えられています。
こうした状況になることは過去にもありましたが、2018年はそれが顕著で長い間維持されているということなんです。

◇どういった熱中症対策が必要か
記録的な暑さに、熱中症で亡くなる人が相次いでいます。熱中症対策として何が必要なのでしょうか。
基本的には、
▽こまめな水分補給と必要なときの塩分補給
▽クーラーを使う
▽無理をしない
ということです。

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無理をしないというのは、たとえば屋外の仕事で休息の回数を増やすということもあります。また、これだけ暑いと運動や行事は中止するという、いつもとは違う判断が必要です。
冒頭の「気象庁の発表する気温や予想最高気温より、自分のいる場所は暑いかもしれない」ということを考えておいてほしいと思います。
西日本豪雨の被災地では、復旧に向けた作業も無理しないようにしてほしいと思います。
特に熱中症になりやすいのが、高齢者と子どもです。

◇高齢者の熱中症対策
高齢者は、もともと体の水分が少なく、重症になりやすいので注意が必要です。お年よりは、のどの渇きを自覚しにくいので、専門家は水分補給を習慣にすることを勧めています。

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たとえば、
▽朝起きたとき
▽食事の前後
▽入浴の前後
▽寝る前
です。それぞれ、湯飲みに1杯飲むようにします。これで10回ですから、1.2リットルくらいになります。
ただ、これは最低限です。買い物など体を動かしたときは、その前後や途中にも水分をとって、飲む量を増やしてください。
3度の食事も大切です。食事を簡単に済ませてしまうと、体力も落ちて、夏バテしてしまいます。食事からは1日1リットルくらい水分をとっていますので、食事を十分とらないと水分も不足してしまいます。
特に汗をかいたときは、塩分補給も必要です。塩分や糖分が調整されていて、体への吸収が早い「経口補水液」をゆっくり飲むのがひとつの方法です。経口補水液は、薬局やドラッグストアなどで売られています。

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ただ、持病のある人は、水分や塩分、糖分を制限している場合があります。主治医と相談して、1日の水分のとり方のスケジュールを決めてください。
こうしたことは、お年寄りに限らず熱中症対策の参考にしてください。

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2018年も、クーラーを使わないで熱中症で亡くなった高齢者がいました。これだけ暑いのですから、迷わずクーラーを使ってください。お年よりは暑さを感じにくいので、自分の感覚ではなく温度計で測って、28度を超えないようにしてほしいと思います。

◇子どもの熱中症対策
子どもの熱中症に対するリスクについて、知っておく必要があります。
ひとつは、屋外では苛酷な環境にあります。

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都会のアスファルトの上ですと地面が熱いので、たとえば1メートル50センチで、32度くらいのとき、地面から50センチのところは、35度を以上とされています。背の低い子どもは大人以上に暑いんです。
さらに、子どもは体温調節が、まだうまくできないのです。
体を冷やすには、
▽汗をかくこと
▽体の表面から外に熱をもって行ってもらう「放熱」
▽冷たいものを飲む
ということがあります。

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ただ、子どもは汗をかくのが、上手ではないとされています。
一方で、放熱はうまくできるので、普段はこれで体温を下げることができます。ところが、外の気温が高いと放熱もできないのです。気温が体温より高いと放熱ではなく、逆に熱を吸収してしまうのです。

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大人と違って、なかなか体を冷やせないので、大人の感覚で判断してはいけないということだと思います。子どもを放熱できるところ、つまりクーラーのある涼しいところで休ませて、水分補給させるなど、子どもの様子を見ながら対策してあげてください。

◇熱中症の症状
下の図は、熱中症の症状です。

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比較的軽いときの、めまい、大量に汗をかく、足がつるなどのサインを見逃さないことが大切です。軽い症状が出たら、涼しいところで休憩して、水分補給です。このとき自分で水を飲めるかで症状の度合いがわかります。大量に汗をかいているようなときは、塩分補給も必要です。
呼びかけにこたえないようなときには、迷わず救急車を呼んでください。

◇熱中症対策で求められること
重症になりやすい高齢者や子どもについては、周りの人たちが見守ってください。

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水分や塩分の補給やクーラーの使用ができているか、無理をしていないかを確認することが大切だと思います。
これは、お年寄りや子どもに限らず、お互い注意できると良いと思います。

◇2018年の夏の見通し
気象庁の7月23日の発表によりますと、厳しい暑さは8月の上旬までは続くとみられています。
梅雨明けが早かったこともあって、すでに暑い日が長く続いています。夜も最低気温が25度を下回らない「熱帯夜」が続いています。体が休まるときがないので、疲れがたまっていることも心配です。しっかりと熱中症対策をしてほしいと思います。

(中村 幸司 解説委員)

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