NHK 解説委員室

解説アーカイブス これまでの解説記事

「使っていますか 防災に役立つ戸別受信機」(くらし☆解説)

三輪 誠司  解説委員

西日本豪雨や九州北部豪雨など、毎年のように豪雨災害が深刻な被害をもたらしていますが、自治体などが発信する防災行政無線の内容を確実に届けるために、国は戸別受信機という装置の普及を進めようとしています。

k180725_01.jpg

防災行政無線は、自治体が、災害の発生や避難情報などを無線で発信しますが、屋外に設けられたスピーカーが受信し、音で知らせます。
しかし、屋外のスピーカーは豪雨の時には、音がかき消されてしまいますし、今の住宅は建物の密閉度も高くなっていますので、締め切っていると聞こえにくくなります。
このため、自宅の中に小型の受信機を置き、受信するという戸別受信機があれば聞き取りやすくなります。

k180725_04.jpg

3年前の関東・東北豪雨の際、茨城県常総市は避難指示などの情報を屋外のスピーカーで流しましたが、その後に行われたヒアリング調査で、「避難指示がわかりにくかった」と答えた人のうち、57.8パーセントが「聞こえにくかった」と答えています。

k180725_05.jpg

おととしの新潟県糸魚川市の火災では、市は屋外スピーカーと戸別受信機を使って火災の発生や避難の呼びかけを行い、それによって火災を知った人が多かったということです。窓を閉め切っていた冬の日に強い風が吹く中で発生した火災ということもあり、戸別受信機の効果は大きかったと見られています。

k180725_06.jpg

こうしたことを受けて、総務省は、戸別受信機をどのようにしたら普及できるか、自治体や無線機メーカーなどをあつめた研究会開いて話し合っています。

戸別受信機の特徴は、行政側が放送を流すと、自動的にスピーカーから音が鳴ります。停電になっても使えるように、一定時間電池でも動くようになっています。また、災害時に持ち出せるようにライトがついている機種や、聴覚に障害がある人のために液晶パネルで文字情報を流す機種もあります。

k180725_07.jpg

今は自治体のホームページも充実していますし、避難情報は、電子メールで発信するところもありますが、ご高齢の方のうち、インターネットや携帯電話を使っていない人が国の推計ではおよそ4割いると見られています。
また、実際の防災メールの避難情報は、必要な情報がすべて盛り込まれている反面、文字数が多く、難しい表現があります。

k180725_10.jpg

その反面、肉声は、声の調子で深刻さも伝えられ、緊急事態であることを伝えることもできます。災害が深刻な事態になる前なら、近くの人も誘って避難しましょうという呼びかけも臨機応変にできます。

戸別受信機の利用方法は、住んでいる地域によってかなり違いますので、まずは自治体に問い合わせてください。

k180725_11.jpg

一般的なのは、自治体が販売したり、貸し出したりする方法です。無償で貸し出すというところもありますが、もともとの本体価格の4万円前後で販売する自治体もあります。

このほか、地域のコミュニティーFM と協定を結んでいる自治体の場合は、防災ラジオを数千円で販売するところもあります。また、ケーブルテレビが普及している地域では、ケーブルテレビの回線に受信機を接続する月額数百円のサービスを紹介するケースもあります。基本的な機能は同じです。

しかし、戸別受信機を利用できない地域もあります。まだ495の自治体では、まだ戸別受信機の仕組みを整えていません。これは、受信機などの価格が高く、財政的な負担が大きいことが最大の理由です。国は、整備に必要な財政補助の制度を設けるとともに、安い価格で販売できる受信機の開発をメーカーなどと話し合っているところです。

しかし、災害はいつ発生するかわかりません。高齢者世帯や、ハザードマップで、浸水の危険性が高い地域の世帯には、優先して配備できるよう、自治体は一刻も早く対策を進めてほしいと思います。

k180725_12.jpg

いまは、かつて経験したことがないような大きな災害が相次いでいますので、防災情報がいっそう大切です。
激しい災害では、設備の故障や水没など、報伝達手段が使えなくなる危険性があるため、戸別受信機も、携帯電話も万能ではありません。そのためには、情報を入手できる方法を複数設けておくことが大切です。

k180725_13.jpg

「自分は利用しなくても大丈夫」と思わずに、防災情報を確実に受け取る仕組みを積極的に利用していくことが必要です。

(三輪 誠司 解説委員)

キーワード

関連記事