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「どう食いとめる?消費増税の影響」(くらし☆解説)

櫻井 玲子  解説委員

きょうのテーマは「どう食い止める?消費増税の影響」です。

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【前回の消費税率引き上げ時の教訓は活かせるか?】
来年10月に、8%から10%へと、引き上げられる予定の消費税。これは少子高齢化がすすむ中、社会保障にかかる費用をまかなうための財源を確保し、国の財政を立て直すことが目的です。が、消費税率があがりますと、どうしてもその分、買い物に慎重になる方も多くなる。その買い控えによる景気への影響をどうやったら最小限に食い止められるか、これから年末に向けて本格的な議論が始まります。

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ポイントとなるのは、前回、今から4年前・2014年に消費税率を引き上げたときの教訓を活かせるか、です。政府はこのときの対応を「失敗」だったと考えています。

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消費税率を5%から8%に引き上げた結果、駆け込み需要が大きくなり、その分の反動で個人消費が増税後はマイナス3%まで冷え込みました。結局、回復するのには、3年も、かかりました。そこで、この駆け込み需要の山と反動減による山をいかに均すことができるかが問われています。政府は、このときも、消費税2%分にあたる5.5兆円もの経済対策をまとめて景気の冷え込みを避けようとしました。ただ、その対策の大半が企業向けや公共事業に充てられました。このため消費者にはその恩恵が実感しにくいものが多かった。そこで今回は、なるべく家計に直接届くような対策中心に検討がされています。

【検討中の対応策】
そこで年末のとりまとめに向けて検討中の対策、その主なものをまとめてみました。

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一つは、住宅。家を買うにあたって、税金があがる前に購入しても、上がったあとに購入しても、消費者の負担が大きく変わらずにすむよう、住宅ローン減税の拡充が検討されています。
また自動車の購入者に対する支援策も盛り込まれる見通しです。
これらの対策は前回も実施されましたが、その規模が小さすぎたのが買い控えの原因になったのではと指摘されています。それだけに対策を前にも増して深堀りできないかが議論されます。

また、前回、住宅、自動車に次いで落ち込みの大きかった食料品についてですが、こちらは税率をこのまま据え置きにする、いわゆる軽減税率を導入することがすでに決まっています。お酒と外食を除く食料品は、消費税率が上がりません。持ち帰り用のお弁当ですとか、宅配ピザですとかも、8%のまま、になります。

これに加えて、大きな争点となりそうなのが、「消費税還元セール」、消費税率が上がった分を値引きして売るセールの解禁です。これは前回の消費税率引き上げのときに禁止したものです。「消費税は本来消費者が負担するべきなのに、それをわざわざ還元すると銘打って値引きするのはおかしい」という考え方のほか、値引き分を結局は誰が負担するのか。納入業者にしわ寄せがいくのではないか、ということで、法律をわざわざ作って禁止したものです。
これを再び解禁するのは、それだけ景気の冷え込みをなんとしてでも防ぎたい政府の思惑があるわけですが、経済界の一部からはすでに反対の声があがっています。

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大手の小売業者は損をしてもセールをうてるかもしれませんが、中小の小売店にはその体力がないかもしれない。あるいはセールをやるといっても、大手スーパーやデパートが納入業者にその分を負担させることになってしまうのではないか、といった懸念も依然残っていますので、今後、かなりの議論が予想されます。

【バラマキはやめるべき】
一方、前回の引き上げと、8%から10%へ引き上げるときとでは状況が少し違うことも、押さえておく必要があります。
次の引き上げでは消費税率が2パーセントあがる予定ですが、そのうちの半分は子供の教育費の無償化や、保育士や介護職員の処遇改善などにあてられます。幼児教育の無償化は、消費税率の引き上げと同時スタートとなります。
またさきほどご紹介したとおり、外食を除く食料品には軽減税率が導入されます。
このため、日銀は消費税が引き上げられた場合の国民にかかる実質的な負担は2兆2千億円と試算しています。これは2014年のときの8兆円にくらべると、4分の1程度の負担です。

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景気の落ち込みを防ぐことは大事ですが、その結果、行き過ぎた大判ぶるまいにならないよう、注意が必要です。

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今週10日、政府は消費増税の対策を来年度2019年度の当初予算に盛り込むこと閣議で了解しましたが、この対策については、歳出削減の取り組みとは切り離して「別枠」で対応するとしています。これがバラマキにつながるのではないか、予算要求が青天井で認められてしまうのではないか、という懸念の声も出ていますので、財政のたてなおしという消費税率引き上げの本来の目的を忘れないようにしてほしいと思います。
また、消費税が引き上げられると、同じおカネで買えるものが目減りする、いわゆる実質所得が減る、という点にも配慮する必要があるでしょう。家計の所得が伸び悩んでいるからこそ、モノを買おうという気になれないわけで、それぞれの家の所得が増えるよう、企業が賃上げを続けることも、求められているのではないでしょうか。

(櫻井 玲子 解説委員)

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