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「どうなる?働き方 オフィスでも進む自動化」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

パソコンでやる事務作業を、人の代わりにコンピューターに任せる動きが、今、多くの企業で、広がっています。今井解説委員。

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【パソコンの事務作業をコンピューターに任せる。どういうことですか?】
具体的には、RPA「ロボティック・プロセス・オートメーション」と呼ばれる技術です。こちらのパソコンの画面。これは、オリックスグループで、IT機器をレンタルしている部門のパソコンです。誰もキーを打っていないのに、契約先ごとに機種や送り先、価格などの情報が、すごい勢いで打ち込まれています。
RPAは、このように、データを入力したり、インターネットや社内システムを検索して資料をコピーしたり、書類があっているかどうか点検したりといった、比較的単純なパソコンの作業を自動で行う技術です。ソフトを組むことでできるため「ソフトウェアロボット」とか、人がいないのにパソコンが自動で動くため「透明ロボット」とも、呼ばれています。

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【具体的に、どのような作業ができるのですか?】
先進的に導入を進めている金融業界の例をみますと、例えば、
▼    三井住友銀行。これまで、企業に融資をするかどうか判断するために使う基本的な資料については、融資の担当者が、インターネット上の様々なサイトを検索して、売り上げの推移、株価、財務データといった情報を集めてきたり、社内にある過去の融資データを探してきたりしてつくっていました。それを、今では、RPAが自動的に検索して、必要なデータをとってきて、つくってくれるようになっています。

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▼    また、同じメガバンクの三菱UFJでも、例えば、住宅ローンの必要書類について、会社や役職、年齢などに間違えがないか、点検する作業をRPAが行っています。

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【こうした作業を、人の代わりにコンピューターがやることで、どのような効果があるのですか?】
▼ まずは、作業が圧倒的に速いという点です。先ほどの三井住友銀行の融資判断のための資料づくりでは、人がやっていたときは、一社あたり1時間かかっていました。それが、今は、自動的に10分で出来上がって、担当者にメールで届くといいます。
▼ 二つ目は、ミスがないという点です。オリックスグループでは、いくつもの旅行代理店の店舗やネット経由で申し込みがあった、レンタカーの様々な形式の受付け書類を、自社のシステムに入力する作業でも、この技術を導入しています。人が入力していたときは、3ヶ月で8件ほどミスがあったそうです。ミスをすると、お客さんが営業所に行っても、クルマが用意されていないという事態になりかねません。それをRPAに任せるようになって、ミスはゼロになりました。
▼    さらに、24時間働いてくれますので、夏の繁忙期でも、臨時で人を増やさなくても、乗り切ることができるようになったといいます。

【様々な効果があるのですね】
そうですね。しかも、ソフトを組むだけで、大掛かりな設備投資が必要ありません。このため、導入する動きが広がっていて、今後も加速するとみられているのです。

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すでに導入している企業も、RPAに任せる作業をどんどん増やしています。
▼    三井住友フィナンシャルグループでは、来年度までの3年間で、単純に計算すると、1500人分の作業を無人化する。
▼    三菱UFJ銀行も、今後6年間で、9500人分の作業を無人化する計画です。

【それだけ雇用が減るということですか?】
会社側の説明では、これは、作業が減る分で、リストラはしないとしています。今後、大量に採用した団塊ジュニアの世代が退職していきます。一方、少子化で若い人が減っていきます。ですから、ある程度、自然に社員が減ることにはなるけれど、リストラはしないと。

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そもそも、導入を進めている背景として、
▼ 人手が足りず、繁忙期に人を雇おうと思っても雇えない。
▼ お客さんに事業拡大の提案をしていきたいのに、事務作業が忙しすぎて余裕がない。
▼ それなのに、働き方改革で、残業を減らさなくてはいけない。

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だったら、単純な作業は自動化を進めて、せっかくの人材には、より創造的な仕事をしてもらおう。そういう考えがあったといいます。

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【でも、RPAの導入が増えていけば、社員にとっては、仕事がなくなることになりませんか?】
その心配はあると思います。導入を進めている会社からは、単純な作業がなくなった分、
▼ 残業が減った。
▼ 新たな客の開拓とか新たな企画に取り組む余裕ができたと、
社員から前向きな評価もあるという話を聞きます。

【働く側にもメリットはあるのですね】
ただ、確かに、これまで、単純な作業を中心にしてきた事務職の人たちもいます。そういう人たちにとっては、このままでは、仕事がなくなる心配があります。

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【困りますよね】
そこで、企業の中には、新しい仕事についてもらおうと、取り組んでいるところもあります。

【どんな仕事ですか?】
例えば、RPAのソフトを組む研修をして、会社の中で次はどの単純作業を自動化できるか考え、導入を進める仕事に新たについてもらっているところもあります。

【そんなに簡単にできるのですか?】
大規模なシステムは難しくても、一つの部署に限られた仕事など比較的小さな規模の作業を自動化する場合は、研修をすればそれほど難しくはないそうです。実際に、オリックスグループでは、これまで請求書の発行事務をしていた社員や、コールセンターで電話を受けていた社員を対象に、RPAの研修をして、RPAの導入を進める仕事についてもらっている事例があるそうです。
そのほか、
▼ 営業の研修に力を入れて、営業の仕事についてもらったり、
▼ 全体的に、海外業務に向けて語学の研修をしたり、
▼ 専門的な資格をとる勉強を支援したりする企業もでてきています。
それでも、これまでの仕事が変わる人たちにとっては、簡単なことではありません。精神的な負担もあると思います。ぜひ、企業は、こうした人たちの雇用を守るためにも、より高度な仕事につけるよう、丁寧に対応をして、それに見合うよう賃金も上げていってほしいと思います。

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【工場でも事務職でも自動化が進むとなると、これから仕事をしようという若者やこどもにも影響がありそうですね】
そうですね。工場でもオフィスでも、これから、単純な作業は、ロボットやコンピューターに置き換えられていく動きはとまらないと思います。AI=人工知能も職場に入ってきます。それでも、企業の担当者に聞くと、人には、こうした技術をうまく活用して
▼ 新しいことを「提案」したり、▼ 経営的な「判断」をしたり▼ 人の気持ちをくみとって「接客」したりする。あるいは、▼ 新しい「技術を開発」する。といった仕事は残るといいます。要するに、発想力とか、企画力、コミュニケーション力といった力がますます大事になってくると見られています。

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若い人にそうした教育をすることが大事です。それとあわせて、さきほども言いましたが、企業は、すでにいる社員が会社の中で仕事がなくなり、雇用を失うことがないよう、研修など丁寧な取り組みをすすめてほしいと思います。

(今井 純子 解説委員)

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