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「宇宙は遠かった 民間ロケット打ち上げ失敗」(くらし☆解説)

水野 倫之  解説委員

民間初の宇宙空間到達を目指してベンチャー企業が打ち上げたロケットは直後に落下して炎上、失敗。宇宙を目指す若者たちの夢は今回もかなわなかった。
一体何が起きたのか、今後の宇宙への挑戦はどうなるのか。宇宙担当の水野倫之解説委員の解説。

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爆発は驚いたが、ロケットの開発段階では過去にもよくあった。今回立ち入り禁止区域もきちんと設定されて人的な被害はなかったので、今後失敗からいかに課題を見出だしていくかが重要。

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今回計画ではロケットは打ち上げから4分で高度100キロの宇宙に到達したあと、50キロ沖の海に落下して実験は終了する予定。
カウントダウン・ゼロでエンジンに点火、機体は上昇するが、4秒後には噴射が停止。
6秒後に地面に落下。機体は爆発。
その後の解析で打ち上げから1秒でメインエンジンの燃焼圧力が一瞬下がったこともわかった。
エンジンの燃焼室や配管のトラブルなど様々考えられるが、この圧力の低下が、今後の原因究明の鍵になってくるかも。

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今回のロケット全長10mと超小型。
開発したのは北海道大樹町のベンチャー企業、社員は21人。実業家の堀江貴文さんの出資を受けて、5年前から本格的に開発。
彼らが狙うのは世界的に需要が高まっている超小型衛星の打ち上げビジネス、最大の売りはコストの安さ。
H2Aのような国のロケットは高性能を目指して特注品を使い、打ち上げ費は100億円と、ベンチャー企業では手を出せない。
そこで彼らはまず10mサイズで実験重ね、最終的に数億円で超小型衛星を運べる格安ロケットの実用化を目指す。

コストを下げるにはまずは古い技術の活用。
アポロ計画時代に開発され特許切れとなった技術を参考にしコストを100分の1に減。
また電気街でも電子部品を購入。
スマホやタブレットの普及でセンサーが小型化、低コスト化。市販品を使うことに。
さらにエンジンの試験も、町の協力を得て実験場を格安で。
燃焼試験を50回以上繰り返して実験機が完成。去年の7月、宇宙へ初挑戦。
しかし宇宙には到達できず。
解析の結果、機体が回転。想定外の力がかかり機体が破損した。
その後、機体を強化し今年4月に再挑戦もガスが漏れて打ち上げは延期。今回が3回目の挑戦だった。
失敗は残念だが挑戦し続けていくことが大事。というのも超小型衛星打ち上げ専用のこうした超小型ロケット、今世界が必要としている。

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超小型衛星は、解像度では大型衛星にはかなわないものの、価格は数億円と100分の1以下。
アメリカを中心に実用化が進み、中には数十基から数百基打ち上げ、広大な農場を毎日撮影することで色の変化などから作物の育成状況を確かめ、収穫時期を見極めることができる。
ほかにも魚の養殖やインフラ点検にも利用が期待できる。
日本にも、超小型衛星を50基打ち上げて情報を提供するビジネスを始めようというベンチャー企業があり、打ち上げるロケットを探している。
せっかくなら日本のロケットで打ち上げたい。
でも超小型ロケットの開発競争は激しくなっていて、今年1月には、アメリカのベンチャー企業が超小型衛星の軌道投入に成功。中国の企業も実験に成功。うかうかしてられない。
まずは原因究明を徹底して行い、次に向けて態勢の立て直しを急いでほしいし、国もこれまでのロケット開発のノウハウをいかして、原因究明に協力していくことを検討してほしい。

(水野 倫之 解説委員)


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