NHK 解説委員室

これまでの解説記事

「狙われる?18歳 消費者被害を防げ」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

18歳で成人になることが決まりました。若者の消費者被害を防ぐ対策について、今井解説委員。
 
k180621_01.jpg

【18歳で成人になることが決まりましたね】
先週、国会で、改正民法が可決・成立して、4年後の2022年4月1日から、18歳になれば「成人」=「大人」になることが決まりました。142年前の明治9年に、成人の年齢が「20歳」と決められて以来、初めての変更です。

k180621_02.jpg

【何が変わるのでしょうか?】
すでに、2年前に、選挙権は18歳からになりました。これをきっかけに、民法改正の議論が本格化しました。
そして、今回の民法改正で、親などの同意なしに、様々な契約を行うことができるようになります。一方、お酒やたばこ、競馬など公営のギャンブルは、これまでどおり、20歳未満は禁止です。少年法で保護される年齢をどうするかについては、今後の検討課題となっています。
きょうは、このうち、契約に焦点をあてて見ていきたいと思います。というのも、18歳で成人になると、そのとたんに、悪質な事業者に狙われる心配があるからです。

k180621_04.jpg

【なぜ、成人になると狙われるのですか?】
なぜなら、未成年の人は、契約を結ぶ=例えば、スマートフォンを買ったり、クレジット契約を結んだりする場合、原則、親などの同意が必要になっています。そして、もし、同意がなくて契約をしてしまった場合、未成年だという理由だけで「契約を取り消すことができる」ことが民法で決まっているからです。
逆に言うと、成人になれば、親などの同意がなくても、自由に契約することができるようになる。その代わりに、後から不利な契約だとわかっても、原則、取り消すことができなくなってしまうからです。

k180621_05.jpg

【大人としての責任がでてくるということですね】
そうです。ところが、今、20歳で成人になったとたんにトラブルに巻き込まれる人が増えています。どのようなトラブルかと言うと、例えば、
▼ 街で男性に声をかけられ、何度かデートをした後、アルバイトをしているという宝石店に連れていかれた。そして「宝石が売れないと、もうデートもできない」と言われ、30万円で宝石を買う契約を結ばされた。その後、その男性と連絡がとれなくなってしまった。
▼ 就職活動中に、アンケートに応じた事業者から「あなた、いまのままだと、内定はとれないよ。就職セミナーに行かないとダメだ」と言われて、不安にかられて5万円の就職セミナーの申し込みをしてしまった。
▼ 大学のサークルの先輩から「おカネを増やすいい話がある」「他の友達を紹介すれば、さらに1人につき20万円の報酬がもらえる」と言われて、投資用の教材を勧められた。先輩がやっているから大丈夫だろうと思い、50万円を払って購入してしまった。
▼ 「初回、格安でお試し」というネットの広告を見て、美容クリニックに行ったところ、「20回受けないと効果がでない」と執拗に勧められて、50万円のコースを申し込んでしまった。こうした事例です。

k180621_06.jpg

中には、取り消し権がなくなる成人になるのを待って、話を持ち掛けてくる。その上、消費者金融や銀行のカードローンでお金を借りたり、クレジット契約を結んだりするよう、促す事業者も多くいます。

【成人になると、学生でも、借金ができるのですか?】
成人になれば、アルバイトなどの収入がある場合、原則、親などの同意がなくても、おカネを借りたり、クレジット契約を結んだりできるようになります。そのため、被害の額が大きくなります。逆にみると、「未成年の取り消し権」が、20歳未満の被害を防ぐ抑止力になっていた面があります。それが、4年後からは、18歳になったとたんに、取り消し権を失います。そこで狙われて、被害をうける心配がでてきます。

k180621_08.jpg

【18歳というと、高校3年生とか、大学1年生とかですね】
そうです。
▼    大学1年でサークルに入ったとたんに先輩からマルチ取り引きを持ちかけられた場合、入ったばかりで、人間関係をおかしくしたり居場所を失うことになったりしないか不安になりますよね。断るには勇気がいりますよね。
▼    あと、進路に悩んでいる高校3年生が、「きみならアイドルになれる。準備のために30万円かかるけど、このチャンスしかない!」と言われて飛びついてしまう。
こういった被害が広がる心配がありますよね。

【ありそうですね。対策が必要ですね】
必要です。政府も取り組みに乗り出してはいます。主に2つ。
まずは、消費者契約法という法律の改正で、成人になっても、契約を取り消せる範囲を広げようという動き。そして、「法律以外で、若者の消費者被害を防ぐ対策を検討する動き」です。

k180621_09.jpg

まず、法改正。民法改正にあわせて、すでに
先ほど紹介した、若者に多い被害のうち、
▼    恋愛感情につけこむ「デート商法」や、
▼    就職などについて不安をあおって勧誘する商法について、
年齢に関わらず契約を取り消せる規定が追加されました。一足先の来年6月から、施行されます。

【儲け話で誘う手口や、美容クリニックの被害は?】
今回は、事業者の抵抗が強くて、不安をあおるごく限られた手口についてしか、取り消しの対象を広げることができませんでした。そこで、国会では、2年以内に、さらに必要な法整備を検討するよう求めた付帯決議が採択されました。具体的には、今後の検討ですが、消費者団体などは、若者が知識も経験もないことに事業者がつけこむケースについて、幅広く、契約を取り消して、おカネを取り戻せるようにすべきだと、訴えています。

k180621_11.jpg

【法律以外の取り組みは、どのような内容でしょうか?】
すでに政府が省庁横断の会議を設けて検討を始めています。項目としては、
▼ 高校生や大学生などに対して、被害の手口や、借金をすると金利で返済する額が増えていくということ。友達を紹介すれば報酬が入ると聞かされて、安易に紹介すると結果的に、自分が加害者になってしまう。そういった、消費者教育を強化することがひとつ。
▼ その上で、金融機関が、若者に安易に多額のおカネを貸せないようにする対策も検討される見通しです。

【安易におカネを貸せない対策ですか?】
そうです。というのも、「アルバイトでたくさん稼いでいるとウソの申告をすれば、多額のおカネを借りられる」と、手口を指南して借金させ、契約を結ばせる悪質な事業者もいるからです。このため、消費者金融やクレジット会社、カードローン会社などに対して、高校生や大学生などには、成人であっても、
▼    一定の利用限度額を設けることや、
▼    勤務の実態をアルバイト先に電話で確認するなど、返済能力の審査を徹底すること。
こういった自主的な取り組みを求めていくことなどが考えられます。

k180621_13.jpg

【実際に18歳から成人になるまでに、4年しかないのですね】
そうです。それまでに、今のこどもたちに、「あなたたちは、18歳で成人になる」という責任と自覚を促すことは、確かに大事です。でも、悪質な事業者はあの手この手で、18歳、19歳の若者を狙ってくるとみられます。消費者教育だけでは、限界があります。やはり、成人になったばかりの若者が、多額の借金を背負わされることがないよう、幅広い被害について、できるだけ救済される、効果のある対策を、ぜひ、検討してほしいと思います。

(今井 純子 解説委員)


この委員の記事一覧はこちら

今井 純子  解説委員

キーワード

こちらもオススメ!