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「『北朝鮮』『森友問題』と国民の視線」(くらし☆解説) 

太田 真嗣  解説委員

きのう(12日)行われた、史上初の米朝首脳会談や、決裁文書の改ざんをめぐる財務省の報告書の公表など、今月に入って、内政・外交とも大きなニュースが相次いでいます。こうした問題について、国民の皆さんはどう見ているのか。今週まとまったNHKの世論調査をもとに太田真嗣解説委員とお伝えします。

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Q、まず、安倍内閣の支持率は、どうなりましたか?

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A、結論から言うと、支持・不支持とも、前回・5月の調査と全く変わりませんでした。これには様々な要素が絡んでいるのですが、大雑把に言えば、米朝首脳会談に向けて積極的に動いた外交面でのプラス要素と、森友・加計学園問題などといった内政面でのマイナス要素があり、その足し算・引き算の結果だということでしょう。

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支持・不支持の理由を、複数の選択肢から選んでもらっているのですが、支持する理由では、「実行力があるから」、逆に、支持しない理由では、「人柄が信頼できないから」が増えているのも、そうしたことを反映しているように思います。

Q、それでは、項目ごとに細かく見ていきたいと思いますが、まず、外交面では、きのう、史上初の米朝首脳会談という大きなニュースがありましたね。

A、はい。両首脳は、「トランプ大統領が北朝鮮に対して体制の保障を約束する一方で、キム委員長は、朝鮮半島の完全な非核化について、断固として揺るがない決意を確認した」とする共同声明に署名しました。また、トランプ大統領は、キム委員長との会談で、拉致問題についても提起したということです。
この調査は、先週金曜から日曜にかけて行ったものですから、会談が行われる前の予想を聞いた形になりますが、完全な非核化で合意できるか、また、拉致問題が前進するかについて、多くの皆さんが、厳しい見方をしていたことが伺えます。

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Q、会談では、「完全な非核化で合意した」とされていますが、事前には、『できないだろう』と思っていた人が多かったのですね。

A、それは、『完全な非核化』という言葉の捉え方だと思います。確かに、両首脳は、完全な非核化という目標では合意しましたが、その期限や手順などは共同声明に盛り込むことはできませんでした。米朝両国は、引き続き協議していくとしていますが、本当に北朝鮮の非核化が進んでいくのか、それとも、多くの皆さんの予想の方が正しかったのかは、さらに慎重に見極めていく必要があります。
一方、拉致問題については、アメリカの大統領が北朝鮮のトップに問題を提起したのは、重要な一歩だと思います。ただ、この問題を解決するには、最後は、当事者間で決着をつけなければなりません。

Q、日本と北朝鮮の間で、直接、話し合う必要があるということですね。

A、はい。安倍総理も、日朝首脳会談の開催に意欲を示しています。それについて、評価するかどうかを聞いたところ、「評価する」は65%、「評価しない」は27%でした。

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安倍総理の実行力への期待が大きい一方で、厳しい意見の背景には、これまで、北朝鮮が拉致被害者の再調査といった約束を、きちんと果たしてこなかった歴史がある。ですから、前のめりになるのではなく、確実に解決につながるよう、タイミングを慎重に見定める必要があるという思いでしょう。

Q、さて、一方、日本国内の問題は、どうだったのでしょう。

A、森友学園をめぐる決裁文書の改ざんについて、財務省は、先週、内部調査の結果と幹部の処分を発表し、麻生副総理兼財務大臣は、閣僚給与1年分を自主的に返納することになりました。
そうした麻生大臣の責任の取り方について、納得できるかを聞いたところ、「納得できる」は27%、「納得できない」が64%という、厳しい結果になりました。

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Q、与党の支持者でも、「納得できない」という人が50%、半数を占めているのですね。

A、そうですね。安倍総理は、「政治責任とは、こうしたことが2度と起こらないように対策を徹底して講じていくことだ」として、麻生大臣を続投させる考えですが、野党側は、大臣の辞任を求めていて、麻生大臣の不信任決議案の提出も検討しています。

Q、また、財務省の調査では、佐川前理財局長が、文書の改ざんを事実上指示していたことも明らかになりましたよね。

A、そこで、まず、大阪地検特捜部が、佐川氏らを不起訴処分としたことについて聞いたところ、「納得できる」は24%、「納得できない」は66%でした。
また、野党側が求めている佐川氏の証人喚問については、「必要だ」が43%で、「必要ではない」が21%、「どちらともいえない」が26%でした。

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Q、不起訴処分に納得できないという意見と、承認喚問が必要という意見には、ちょっとギャップがあるのですね。

A、佐川氏の証人喚問は、今年3月にも行われていますから、与党支持者の中に、もう「必要ない」という意見が多くありました。ただ、財務省の調査結果をめぐっては、野党側だけでなく、自民党内からも、「なぜ、改ざんが行われたのか明確になっていない」「当事者だけで作った報告書は信頼できない」という厳しい声が出ています。形はどうであれ、この問題の真相はどこにあるのか、国民の胸にストンと落ちるような説明ができなければ、疑念の目を払拭するのは、なかなか難しいと思います。

Q、国会も終盤を迎えていますが、個別の法案審議などをめぐっては、どのような意見があったのでしょう?

A、安倍総理が、最重要法案と位置づける『働き方改革関連法案』について賛否を聞きました。賛成は14%、反対は32%で、「どちらともいえない」が、44%、わからない・無回答が11%でした。

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Q、「どちらともいえない」「わからない」など、『未だ判断がつかない』という人が半数以上いるのですね?

A、そうなのです。ちなみに、質問の仕方がちょっと違うので、単純に比較はできないのですが、参考までに、前の月の調査と比べてみても、この傾向は、ほとんど変わっていません。法案は、衆議院を通過し、いま、参議院で審議されていますが、審議は進んでも、国民の理解は全く進んでいないというのが現状です。

そして、もうひとつ、この国会で焦点となっている、カジノを含むIR=統合型リゾート施設の整備に向けた法案ですが、賛否はこうなっています。

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Q、こちらも反対の方が多く、与党の支持者でも反対が上回っているのですね?

A、政府は、「観光や地域振興のために必要だ」としていますが、「ギャンブル依存症対策は十分なのか」とか、「周辺環境が悪化するのではないか」といった懸念も根強くあります。与党側は、いまの国会で成立を目指し、近く、衆議院の委員会で採決に踏み切る構えをみせていますが、野党側は、「審議が不十分な中での採決は認められない」と強く反発しています。

最後に、各党の支持率です。この様に、各党の支持率には、大きな変化は見られませんでした。

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Q、今回の調査を通じ、全体として、どんな国民の思いが見えてきましたか?

A、特に、国内の政治課題をめぐって、「納得ができない」とか、「どちらともいえない」といった答えが多かったように思います。それは、いまの政治、政治家の振る舞いと、国民の想いとの間にギャップが生じている、あるいは、政治家の言葉が、国民の心に届いていないことの表れとも言えます。
国会は、最終盤を向かえ、与野党の攻防は、今後、さらに激しくなりそうです。ただ、それについて与野党ともに、きちんと国民に説明し、理解と共感を得なければ、国民の関心は、ますます政治から離れてしまうように思います。

(太田 真嗣 解説委員)

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