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「広告の『打消し表示』にご用心」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

レンタル大手「TSUTAYA」の動画配信サービスの宣伝について、消費者庁は、先週、不当な広告にあたるとして、再発防止を命じました。今井解説委員。

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【TSUTAYAの宣伝。きょうは「打消し表示」がテーマですので、それが問題だったのですか?】
そうです。具体的に見てみましょう。
問題になったのは、映画やアニメなどをインターネットで配信するサービスの宣伝です。30日間、無料お試しの後は、毎月一定額を払えば、動画が見放題という内容です。下を見ていくと、人気の動画や新作も紹介されています。

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【人気や新作の動画も見放題なのですね】
と、思いますよね、ところが、見放題になっていたのは、配信されている3万2000作品のうち、12~26%程度。新作はほとんど対象外でした。それ以外の作品を見たいのなら、別料金を払わなければいけない仕組みになっていたのです。

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【なぜですか?】
作品紹介の下。「よくある質問」をクリックすると、動画見放題のプランは、「動画見放題の対象の作品から」ということ。そして、見放題とは別に、毎月ポイントがもらえて、それで「新作」2本が見られるという内容が書いてあります。
これが、強調して宣伝している内容に条件があることを示す、いわゆる「打消し表示」で、会社側からすると、見放題に様々な条件があることがこれでわかるはずだという考えでした。

【わかりにくいですね】
そうですよね。
「見放題」が強調された表示から、離れている場所、しかもクリックしないと見られない場所に、小さな文字で書かれていて、これでは、消費者は、見放題に条件があることがわからない。実際のサービスや商品より著しく優れていると、誤解を与えるような広告・宣伝を規制している「景品表示法」に違反していると、消費者庁が判断して、摘発したのです。

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【大企業でも、こうした違法な広告をしているのですね】
そうですね。打消し表示は「これさえあれば、何かあった時に言い訳できる」として、本当に多くの広告に、免罪符のように使われてきました。実際、気づかず買ってしまっても、よく読まなかった自分が悪いと思って泣き寝入りする消費者も多くいます。それを、消費者庁が、遅ればせながらかもしれませんが、去年7月に「多くの人が気づかないような打消し表示は、違法だ」という見解を示して、この1年間で、今回の件を含め、18件、摘発しています。

【ようやく動き始めたということですね。どのような事例ですか?】
3つ紹介します。
▼ まずは、大手通信会社のキャンペーン広告です。人気商品について「特別価格で買えるのは今だけ!」と、宣伝していますが、実際には、ほとんど商品の在庫がない、いわゆるおとり広告でした。

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会社側は、広告の下の方に、「在庫がない場合もあります」と、打消し表示があるじゃないですか。という主張でしたが、そもそも「打消し表示」は、例外的な場合に限って使うべき。ほとんど在庫がない状態では、「打消し表示」が例外とは言えない。と判断されました。

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▼ 次は、製薬会社の広告。健康食品のお茶について、運動や食事制限もせずにやせられるかのような表示をしていました。

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「お腹周りにうれしい変化があった」という体験談も載せています。

【効果があるのだなと思いますよね】
ただ、その下に、個人的な感想です、と書かれています。消費者庁は、お茶を飲むだけでは、ほとんどの人に効果がないのに、多くの人に効果があると誤解させていて違法と判断しました。体験談の場合は、例えわかりやすく「個人の感想です」とあっても、効果が得られない人が多くいる場合は、違法という見解です。

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▼ そして、3つ目は、テレビのコマーシャルで、クルマについた傷が消えるという補修剤の広告です。よくみると、「下の塗装に達するような深い傷は修復できない」という打ち消し表示がありますが、別の映像では、深い傷もなおるように見えます。

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会社側は、あくまでもイメージ映像だとしていましたが、打消し表示の内容と矛盾しているため、違法と判断されました。

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【こうした表示、いずれもよく見ますが、違法なのですね】
そうです。多くの消費者が気づかないような打消し表示は、違法ということです。
これまで紹介したのは、主に、パソコンやテレビの宣伝ですが、消費者庁は、先月、そしてきのうと、今度は、スマートフォンや新聞の広告についても、違法になる事例を示しました。

一つ目は、スマートフォンです。画面が小さいため、縦に長くて、下にずっとスクロールして見る広告が多いのが特徴です。このため、多く用いられている手法があります。
健康食品のモデル広告です。「いつでもやめられるから安心」。さらに「お得なコース」という、強調表示があります。

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いいなと思って、申し込みの表示をタップすると、

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申し込みの画面に飛ぶ仕組みになっています。

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ですが、飛ばした部分に、「途中で配送を止めるには条件があることや、最低4回分の購入が条件になっている」という打消し表示があります。

【スマホで、よくある広告ですね】
消費者庁が1000人を対象に行った調査では、下までスクロールして読むと答えた人は、4人に1人もいませんでした。つまり、多くの人が、すぐに申し込み画面に飛んだり、途中を読まずにスクロールしたりしていて、その結果、強調表示に気づいた人のうち、80%あまりの人が、打消し広告に気づいていませんでした。こうした表示は、違法という見解で、今後、スマートフォンの広告も、打消し表示を使う場合は、強調する表示の近くに、わかりやすい色やわかりやすい表現で表示するよう事業者に求めるとしています。

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【そして、新聞の広告はどのようなものが問題ですか?】
こちらもモニター広告ですが、テレビ欄の下にマットレスの広告があります。

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15人を対象にした調査では、「1万円」と強調された表示の下にある「お試し価格はシングルサイズのみ」という打消し表示。そして、「セットでの申し込みが必要だ」という表示に気づいた人は、それぞれ、4人と、2人にとどまりました。こうした表示も違法だという見解で、今後、新聞広告についても、打消し表示を使う場合は、強調表示のすぐ近くに、わかりやすい色や大きさで表示するよう求めるとしています。

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【違法なら、打消し表示に気づかずに買ってしまった場合、おカネは戻ってくるのでしょうか?】
打消し表示に気づかなかったというだけで、事業者にお金を返す義務が生じるわけではありません。ただ、消費者庁が明確な方針を示していますので、交渉しやすくなってはいると思います。もし、事業者が返金に応じてくれない場合は、こちら。全国共通で188の番号に電話をしてください。身近な消費生活センターにつながります。

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私たち消費者も、トラブルを避けるには、お得な情報には何か条件がないか、注意してみることが大事だと思います。ですが、わざと、わからないようにしているのではないかと疑うような広告もあります。ぜひ、悪質な広告がなくなるよう、消費者庁は摘発にさらに力をいれてほしいと思います。

(今井 純子 解説委員)

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