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「高齢者とスポーツする人の熱中症対策」(くらし☆解説)

中村 幸司  解説委員

30度を超える日が観測され、熱中症に注意が必要な季節になりました。今回は「高齢者とスポーツする人」を中心に熱中症を考えます。

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◇なぜ「高齢者とスポーツする人」なのか
下の図は、熱中症で救急搬送された人を人口あたりで示したものです。

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お年寄りが多いことがわかります。それと、もうひとつ、10代にも山があります。10代の多くは、部活動や体育の授業など、スポーツ中の熱中症です。熱中症対策は、梅雨前から行うことが大切だとされています。
そこで、「高齢者」と「スポーツする人」に注目して、熱中症対策を考えてみたいと思います。

◇高齢者はなぜ熱中症になりやすいのか
まず、高齢者から見てみます。

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お年寄りは、重症になって亡くなる割合も多いです。2015年は熱中症で900人あまりが死亡していますが、そのおよそ80%が65歳以上でした。
高齢者が熱中症になりやすい理由はいくつかあります。

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そもそも高齢者は、体の水分が少ないことがあります。成人はおよそ60%ですが、高齢者は50%です。高齢になると水分に余裕がないのです。

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水分が少ない上に、のどの渇きを感じにくい、「夜中、トイレに行きたくない」ので水を飲むのを控える人がいるといったことがあると指摘されています。

◇高齢者の熱中症対策
高齢者の熱中症対策としては、こまめに水分をとるということになります。よく言われることですが、お年寄りには、難しいことでもあります。のどが渇かなくても、決まったときに飲むことを習慣にするといいと専門家は指摘しています。

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たとえば、朝起きたとき、朝昼晩の食事の前後と入浴の前後、夜寝る前、それぞれに湯のみ1杯飲むようにするといった方法です。これで、1日1.2リットルくらいになります。1日10回と、頻繁に飲むことになりますが、これは最低限です。
日中に買い物で外に出るなど、ある程度の運動するときは、その前後や途中に水分をとって、飲む量を増やすようにしてください。

3度の食事も水分をとることにつながります。

水分はどのようなものを飲んだらいいでしょうか。
緑茶でもいいですが、カフェインには利尿作用があるので、カフェインの含まれていない麦茶が良いとされています。
特に汗をかいたときは、塩分を補うことも必要です。塩分や糖分が調整された「経口補水液」があります。薬局などで売られていますが、身体への吸収も速いので、これをゆっくり飲むことが勧められています。

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お年寄りの中には、水分や塩分など制限されている人もいます。心臓や腎臓の病気、糖尿病など持病がある人は、水分や塩分、糖分のとり方に注意が必要です。1日どういったスケジュールで水分をとるのか、主治医と相談してほしいと思います。
高齢者は、「ぜいたくだ」といって、クーラーを使いたがらない傾向があります。お年寄りは暑さを感じにくいので、温度計で室内の気温を測って、28度を超えないよう、クーラーをうまく使ってほしいと思います。

◇スポーツをする人の熱中症対策
スポーツの熱中症対策はどうでしょうか。スポーツは、暑いところで運動をして、汗をかきますから、脱水状態になりやすく、水分補給が大切です。
運動をしているときは、塩分も失っているので、スポーツドリンクなどを飲むのが有効です。糖分があると吸収が速くなるので、スポーツドリンクはその意味でも勧められています。
ただ、水だけをたくさん飲むのはダメです。水だけを大量に飲むと、体の成分が薄くなって、死亡したケースも報告されています。

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水分補給は、運動する前から必要です。水分が体に吸収されるには時間がかかるので、2~4時間くらい前から飲んでおくことが必要です。学校の体育の時間で、授業が始まって、すぐに熱中症というケースは、運動前の水分補給が不十分ということがあるということです。
運動中も、1時間に500ミリリットルから1リットル程度の給水が必要です。これだけの水分を飲める状況をスポーツするときは用意する必要があるわけです。
運動後も、失われた水分補給が必要です。
それして大事なのは、暑いときに決して無理をしないということです。

◇スポーツする際の判断
では、スポーツをどの程度しても大丈夫なのか、どう判断したらいいのでしょうか。
ひとつの目安が、下の図です。これは日本体育協会(現在は日本スポーツ協会)が作成した熱中症を予防するための指針です。

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乾球温度、つまり普通の温度計で35度以上では「運動は原則中止」。31度以上なら激しい運動は避け、運動する場合は頻繁に水分・塩分の補給をする。28度以上のときは、積極的に休憩して、適宜水分・塩分補給などとなっています。
24度より低いときでも、市民マラソンでは熱中症が起きるケースがあるので注意が必要と記されています。

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湿度が高いときは、ひとつ上のランクの対応をとることが必要とされています。

◇WBGTとスポーツの熱中症対策
ただ、温度と湿度の両方を考えるのは、少し複雑です。

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熱中症になりやすさの指数のようなものを測る「WBGT計測器」というものがあります。これは、温度だけでなく、湿度やふく射熱などを考慮して、その場所の熱中症になりやすさをWBGTという数字で示してくれます。
たとえば、WBGTが31度以上なら運動は原則中止などと判断します。WBGTの数字ひとつで判断できるので便利です。
測定器について、2017年、JIS規格ができました。価格も1個が数千円と従来より安いJISに準拠した製品が出てきました。競技大会や学校などで、広く使われ始めています。

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たとえば日本サッカー協会は、熱中症対策のガイドラインを設けていますが、ここにもWBGTが使われています。
WBGTのランクにより、試合を中止、延期するか、医師や看護師を会場に常駐させる、あるいは前半・後半に1回ずつ休憩や水分補給の時間を3分間設けるというように、熱中症の危険度に応じて、試合を行うための条件を定めています。
ガイドラインによれば、WBGTが31度以上のときは主催者や主審が協議して、試合を中止することにもなります。

◇梅雨のころの注意
梅雨に入るかどうかという時期は、特に注意が必要です。というのも、体が夏の暑さに慣れていないからです。6月は、7月より3度低い温度で熱中症になるとされています。

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ですから、梅雨入り前や梅雨の合間に晴れて、急に暑くなったときは注意が必要です。いつもより運動量を減らす、あるいは練習メニューを変更するなどしてください。暑さに慣れて、汗をかくことがうまく出来るようになってから、運動量を増やしてほしいと思います。
これは、高齢者も同じです。
身体が暑さに慣れていないので熱中症になったり、症状が重くなったりするケースが多いのでしっかり対策をすることが必要です。
気象庁によりますと、2018年の夏は、平年より暑い夏になる見込みです。熱中症対策を心がけて、夏を乗り切ってほしいと思います。

(中村 幸司 解説委員)


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