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「英語もやるの?学力テスト」(くらし☆解説)

西川 龍一  解説委員

「英語もやるの?学力テスト」と題してお伝えします。

Q1.学力テストと言うと、毎年小学6年生と中学3年生が学校で受けているテストのことですよね?私は受けた記憶はないのですが。

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A1.そうです。その全国学力テストです。正式には、「全国学力・学習状況調査」と言います。学校がテストの成績を元に教育の成果を検証して指導の改善に役立てることを目的に2007年から始まりました。すべての小学6年生と中学3年生を対象に、国語と算数・数学のテストが毎年行われているほか、理科のテストも3年に1度、行われています。今年は理科が行われる年に当たったため、小中学校とも3教科のテストを受けて、今、採点や分析が進められているところです。

Q2.「英語もやるの?」ということは、その学力テストに、英語が加わるということですか?

A2.そういうことです。中学3年生の学力テストに来年度から加わることになっています。毎年というわけではなく、理科と同じように3年に1度、行われます。

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文部科学省は、来年に英語の学力テストの本番を控え、先月一か月をかけて全国136の中学校に協力を求め、およそ2万人の生徒を対象に予備調査のためのテストを行いました。その問題が公表されました。

Q3.2万人の予備調査ですか?英語のテストは中学では普通に行っているのに、ずいぶん手を掛けるんですね?

A3.実は、学力テストの英語では、これまで現場の中学校では一斉テストで行われてこなかったテストが行われることになっているんです。このため文部科学省としては、テストを確実に滞りなく行うために問題点を洗い出しておく必要があったわけです。もっとも協力を求められた中学校にしてみれば、3年に1度理科が加わったうえに、さらに英語の予備調査に協力するという負担が増した形です。

Q4.これまで中学校で行われてこなかったテストって、どんなテストなんですか?

A4.英語の4技能という言葉を聞いたことがありますよね?「聞く」「読む」「書く」「話す」の4つの技能です。学力テストでは、この4つの技能すべてを測るテストが行われることになっているんです。「聞く」「読む」「書く」テストは、だいたいイメージがつかめると思いますが、問題は「話す」技能を測るテストです。使うのは、こちらです。

Q5.パソコンですか?

A5.生徒1人1人がそれぞれ1台のパソコンを使ってテストを受けます。マイク付きのヘッドフォンを接続して、声を出して問に答えていきます。音声を録音する形で解答するというわけです。

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中学2年生までに学ぶ内容が範囲なので、そんなに高度な内容を求めているわけではありません。むしろ英語を臆することなく声に出して言えるかどうかというのがポイントになります。中学校の英語の授業も話すことが重視されるようになっていますから、結果をそうした指導の改善に生かすという目論見があります。

Q6.確かに話すのは苦手ですからね。採点はどうするんですか?

A6.そこが大きな課題の1つです。マークシート方式のように機械任せというわけにはいきません。採点は録音したデータを集めて、委託を受けた業者が行うことになっているんです。結局、人海戦術で行うというわけです。話すことを測る問題では、正解が1つに定まらない場合もあります。そうした問題の採点で、採点者によって判断にぶれがでないように十分な調整や採点のための研修が必要になります。本番で受ける中学3年生は、全国で110万人います。業者にとってもその人数分の音声を聞いて採点するには、人を何人確保すればいいのか、簡単なことではないでしょう。

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テストそのものの課題もあります。

Q7.どんなことでしょう?

A7.そもそも「話す」技能のテストは、面談などの方式も模索されましたが、それでは現場の負担が大きすぎることもあって、パソコンを利用することになりました。テストは、パソコン教室などを使って行うことが想定されています。しかし、学校によって教室の作りがまちまちなので、完全に全国一律同じ条件で行うことは難しいという問題があります。テストを受ける生徒にしてみれば、同じ教室にいる生徒が一斉に話し始める状況になりますから、ヘッドフォンを付けていても隣の生徒が何を話しているのか聞こえてしまい、集中できないといったことも指摘されています。試験中のパソコンのトラブルや、終わった後に録音がうまくできていなかった場合はどうするのかといった心配もあります。

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Q8.文部科学省はどう対処しようとしているのですか?

A8.机の配置を工夫したり、事前にパソコンの動作確認をしたりして、できるだけ不公平感が生じないようにするとしています。今回の予備調査で問題点をできるだけ洗い出した上で、専門家会議を開いて解説策を検討する方針です。ただ、4技能を測る英語の学力テストを来年度から行う方針は崩さないとしています。本当に問題点を解決するだけの時間的な余裕があるのか、心配です。

Q9.なんだか大変そうな印象ですね?

A9.そもそも学力テストに英語を加えることになったのは、3年前にまとまった「生徒の英語力推進プラン」がきっかけでした。英語の4技能のうち特に「話す」「書く」について課題が大きいことから、学力テストで英語の4技能を測り、指導の改善と英語力の向上につなげるとされたのです。ただ、学力テストで測れる学力には限りがあるうえ、学校の序列化を生むという可能性が拭えない中で、さらにその役割を増やすことが妥当なのかという意見もあります。今回の英語の予備調査でかかった費用は1億円余り。費用に見合った教育の質の向上につながるのか、本当に全員が受ける意味があるのか、学校や子どもたちの負担も含めて、しっかりした検証が求められます。

(西川 龍一 解説委員)


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