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「新たな民泊 小さくスタートへ」(くらし☆解説) 

今井 純子  解説委員

「民泊」のルールを定めた新しい法律が、来月15日に施行されます。今井解説委員。

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【民泊、身近なところでも、増えているという印象です】
インターネットの仲介サイトを通じて、手軽に、空いている部屋に観光客を泊めて儲かるということで、ここ数年、民泊を営む人が急速に増えました。日本を訪れた外国人観光客の12%近くが民泊を利用したという統計もあります。

【人気があるのですね】
そうです。ホテルや旅館より割安で泊まれる。また、日本の日常の生活に触れることができる。ということで、人気があるのです。

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その民泊。今、法律で認められているものは、2種類あります。
▼(簡易宿所)ひとつは、宿泊の事業として、旅館業法の許可を得たもの。営業の日数や期間に制限はありません(=一年中いつでも泊められます)が、閑静な住宅街では営業できないという制約があります。
▼(特区民泊)2つめは、国家戦略特区の枠組みで、特別に認められる民泊です。自治体が認めれば、住宅街でも民泊ができる仕組みになっていますが、特区は、東京の大田区や大阪市など、一部の地域に限られます。また、「旅館やホテル」と区別をするため、2泊3日以上利用する人しかとめられない(=1泊2日はダメ)という制約が設けられています。
▼(ヤミ民泊)この2つ以外は、違法な、いわゆるヤミ民泊です。現状では、多くが、ヤミ民泊とみられています。

【ヤミ民泊をめぐっては、近所の人とトラブルも起きているという話がありますよね】
そうですね。簡単に儲かるということで、わざわざ賃貸の用の部屋を借りたり、時には、マンション丸々一棟を借りたりして、民泊を営む、家主が不在のヤミ民泊が増えたことが背景にあります。その結果、
▼ 知らない人が出入りして、治安上不安だ。
▼ 大きな声で騒ぐ。ゴミ捨てのルールを守らない。という観光客がいる。でも、誰に苦情を言えばいいかわからない。
▼ 海外からきた観光客が、感染症にかかっていたことがわかっても、宿泊名簿がないので、どこに泊まっていたかわからず、消毒できない。
こういった、トラブルや不安の声が上がっていました。

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【犯罪も起きていますよね】
そうですね。不安はありますよね。そこで、
▼ 自治体に届け出をすれば、原則、全国どこででも、住宅街でも、一泊二日でも、客を泊められる、という新しい「民泊」の制度をつくったのです。取締りを強化して、ヤミ民泊をなくす。とともに、ルールを明確にして新規の参入もしやすくし、地域の人も安心、泊まる人も安心という、健全な民泊を、促進していこうという目的です。

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そのために、
▼ 玄関など見えやすいところに、こうした標識を張り出して、連絡先を表示することや
▼ ゴミ出しなどのルールについて説明すること
▼ 泊まる人のパスポートなどで本人確認をして、名簿をつくって保存することも義務付けました。

【これ、全部、部屋を提供する人が自らやるのですか?】
自分が住んでいる家の部屋を提供する人は、本人。誰も住んでいない空き家の場合は、国に登録している専門の事業者に委託することが義務付けられています。
この新しい民泊。法律の施行を来月15日に控えていますが、今月11日の段階で、届け出のあったのは、全国で724件。今、全国でどのくらいの民泊が営業しているのか、正確にはわかりませんが、少なくとも、最大手の民泊仲介サイトでは、国内で6万件あまりの物件が掲載されています。この中には、ヤミ民泊も多いと見られていることを考えると、かなり小さな規模でのスタートになりそうです。

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【なぜ、届け出が少ないのですか?】
新しい民泊についても、結果的に様々な制約ができてしまったからなのです。
▼ ひとつは、一年に180日しか観光客を泊められないという規制です。あくまでも、宿泊業ではなく、「住宅の活用」という考えだからです。
▼ その上で、新しい法律では、生活の環境を守るために、自治体が独自の条例でより厳しい規制をかけることが認められていて、例えば、
    * 京都市では、閑静な住宅街について、伝統的な「京町屋」などを除いて、民泊が営業できる期間を「1月15日から3月16日まで」の冬の閑散期に限定していますし、
    * 東京の新宿区や横浜市などは、閑静な住宅街では、金曜の昼から月曜の昼間しか営業を認めない。
    * 札幌市などは、住宅街でなくとも、小中学校の周りでは、授業のない日しか、営業できない。こういった条例をつくる自治体が相次いでいます。
▼ さらに、分譲マンションでは、トラブルを防ごうと、管理規約で民泊を禁止する動きも広がっています。
年間を通して営業ができないと、部屋の光熱費や、管理事業者への手数料などのコストを差し引くと、儲けが減るか、赤字になるとして、移行をためらう。あるいは、様子見をしている人も多いとみられています。

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【そうなると、これまでのヤミ民泊は、今後、どうなるのでしょうか?】
▼ 新しい法律がスタートして、身近に管理事業者なども増えていけば、少しずつ新しい民泊の届け出に移行する動きもでると見られます。
▼ また、冒頭で紹介した、今も合法な2つの民泊。新しい法律をつくるのとあわせて、規制を緩和して参入しやすくしていることもあり、こちらに移行する動きも出るとみられています。新しい民泊だと、年に180日しか営業できませんが、これだと一年を通じて営業できます。

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▼ ただ、簡易宿所は住宅街だとダメですし、特区は、一部の地域に限られます。いずれにも移行できない場合、撤退するしかありません。実際、賃貸などに回す動きもでているということです。


【ヤミのままの心配は?】
心配は残ります。ただ、ヤミ民泊は、来月15日以降、民泊の部屋を紹介する仲介サイトへの掲載が禁じられます。国も自治体と連携して、取り締まりを強化する方針で、ヤミ民泊が営業しにくくなることは、確かだと思います。

【それでも、近所で、違法な民泊ではないか?と疑われるような部屋があった場合、どうしたらいいのですか?】
来月15日以降、民泊についての全国統一の苦情相談受付窓口がおかれますので、こちらに電話をしてください。

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【一方、私も、個人の別荘などに安く泊まれるのであれば、泊まってみたいと思いますが、そういう人にとっては、新しい法律で、何か、メリットはあるのでしょうか?】

あると思います。来月15日以降、仲介サイトに掲載されるのは、合法的な民泊だけになって、シーツやカバーの交換とか、非常用の照明、避難路の表示といった、基本のサービスが徹底されることになります。提供している人の身元や、管理者も明確になりますので、これまでより安心して民泊施設に泊まることができるようになると思います。
小さくスタートする形になった新しい民泊ですが、地域によっては、増え続けている空き家を活用した民泊で、観光客を呼び込みたいというところもあります。

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今後は、いかに地域の人たちの理解を得られるか。また、いかに地域と連携する形をつくれるのか。民泊を定着させて、広げていくためには、この点が、カギを握ることなると思います。

(今井 純子 解説委員)


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