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「増えるか、女性議員~きょう新法施行」(くらし☆解説)

安達 宜正  解説委員

国政選挙などで男女の候補者の数をできる限り『均等』にすることを目指す法律がきょう施行されました。女性議員が増えることにつながるのか、そして女性の政治参加について、安達宜正解説委員と考えていきます。

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岩渕)いつもと違う音楽で始まりました。

安達)セクシーゾーンの「勝利の日まで」です。なぜ、この曲を選んだかと言えば、女性の政治参加の拡大は多くの国で戦いとった歴史です。岩渕さん、日本で女性の選挙権が認められたのはいつだと思いますか。

岩渕)戦後ですよね。

安達)戦後1945年。わずか73年前です。戦前も婦人参政権運動がありましたが、実現しませんでした。そして、参政権獲得から73年たって、この分野で新しい法律ができました。超党派の女性議員が原動力となりました。

岩渕)法律の名前は「政治分野における男女共同参画推進法」。国政選挙などで男女の候補者数をできる限り「均等」となることを目指すことが法律の根幹ですね。

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安達)均等とは差がないようにすることです。そのために政党などに努力義務を課すとしています。また国や自治体に対しては環境整備を求めています。

岩渕)日本の国会、女性議員の割合が低いと言われていますね。

安達)そうです。こちらをご覧ください。

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日本の女性議員の比率。衆議院10.1%。参議院20.7%です。諸外国と比べてもかなり低い。列国議会同盟(IPU)の調査です。どんな国が女性議員の比率が高いと思いますか。

岩渕)ヨーロッパとか

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安達) 二院制の国では下院で見てみると、世界193カ国のうち、最も比率が高いのはアフリカのルワンダ。上位の国にはそれぞれ理由があって、ルワンダは内戦によって、多くの男性が亡くなったこともあります。社会主義国には平等な国をアピールするために女性議員を意識的に登用しているという見方もあります。さらに先進福祉国家といわれる、北欧諸国も上位に並んでいます。そして、日本はと言えば158位。G7・先進国では最下位です。

岩渕)なぜ、こんなに低いのか、どこに理由があると思いますか

安達)政治的理由と社会的理由があると思います。政治的理由からいうと、そもそも政党の努力が足りないと思います。去年の衆議院選挙、女性候補者の割合です。

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全体では18%。政党別に見る自民党が8%、公明党が9%。野党は立憲民主党と共産党がそれぞれ24%などとなっています。野党のほうが女性候補の割合が高いですが、それでも4分の1です。今度成立した法律が目指す、「均等」、差がない状況にはほど遠い状況です。候補者が少なければ、当選者、国会議員の割合が低くなるのは当然です。

岩渕)一方で社会的理由というのは

安達)男性は社会活動、女性は家事という伝統的な役割分担という考え方がまだ残っているのではないかという指摘です。岩渕さんはそういうことを感じることはありますか。

岩渕)いろいろ感じます

安達)問題になっているセクハラ発言などにもそういう面があるかもしれません。また、国会議員の出産休暇や育児休暇をどう考えるかという指摘もあります。日本の国会でも出産時の休暇は認められています。ただ、それでも有権者から批判的に見られることもあるという話を聞きます。せっかく一票を託したのに国会を休んでいるのかと。これも社会の目かもしれません。

岩渕)どうしたらいいのでしょう

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安達)議員代行人制度って知っていますか。日本にはありませんが、欧米で導入されています。国会議員はあらかじめ代理人を決めます。議員以外から選ぶことがほとんどで、長期間、議員の仕事ができない場合、議員になりかわって質問や採決など活動を行ないます。スウェーデンでは大臣に就任した場合に国会議員としての仕事と両立しにくいという懸念から代理人を置いたのが始まりですが、それが産休や育休にも拡大されました。

岩渕)女性の政治参加という面ではまだまだ改善しなければならない点がありますね。

安達)そうですが、女性候補への風が一時的に吹いた選挙もありました。

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衆議院選挙では2005年自民党・小泉総裁率いる、「小泉チルドレン」。2009年の民主党・小沢代表が主導した「小沢ガールズ」など、比較的多くの女性議員が誕生しました。

岩渕)懐かしいですね

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安達)参議院選挙を見ると1989年の土井社会党委員長時代の「マドンナブーム」などもありました。ただ、現在の衆議院。女性議員の比率は10.1%です。戦後、女性参政権が認められて最初の衆議院選挙で当選した女性議員は39人でした。割合にして、8.4%。戦後、最初の選挙から見ても微増。70年ほとんど変わっていません。

岩渕)今度こそ、女性議員の数は増えるのでしょうか

安達)結局、政党・そして有権者が変わるかどうかだと思います。この法律は理念法と呼ばれ、社会のあるべき方向、基本的な考え方を示した法律で、政党に課すのは努力義務。強制力もありませんし、仮に従わなかったとしても、罰則もありません。ですから、まずは政党が努力するかどうか、それでも女性議員が増えないのであれば、今度は強制力をもった法律にすべきだという議論が起きるかどうかです。

岩渕)強制力をもった制度と言いますと

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安達)やり方は2つあって、いずれも憲法や法律で決めるのですが、▼男女の議席数を予め割り当てる制度。例えば男女半数ずつとか、アフリカに多いようです。2つ目は▼政党に性別ごとに候補者の割合を強制する制度です。中南米に多く、フランスでは男女の数を一定の割合にしなければ政党助成金を減額する制度があります。ただ北欧など多くの国では強制力を課さなくても、政党の自主的な努力で女性の政治参加が進み、有権者も当然のことと受け止めています。

岩渕)ただ、男性とか女性とかよりも、能力がある人を選びたいという思いもあります。

安達)そういう声もあります。女性を優遇すれば自由競争が損なわれて、悪しき平等を産むなどといった意見です。ただ、候補者の数を均衡にしたとしても、男性候補、女性候補、どちらに投票するかは有権者の判断です。それに、いま、直面する政策課題、男女の賃金格差、シングルマザーの貧困、さらに待機児童対策や選択的夫婦別姓。1つ1つにいろんな意見があっていいですが、こういう問題に積極的に取り組む女性議員が多いように思います。女性の視点は欠かせません。

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人口は男性と女性が半数ずつなのに、国会議員の割合は9対1。この現状をどう考えるのか。政治家に任せるのではなく、一人ひとりが考えなければならないと思います。

(安達  宜正 解説委員)


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