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「どう考える?解禁前に相次ぐ内定」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

来年3月に大学を卒業する学生の就職活動についてです。今井解説委員。

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Q)内定が相次いでいるのですか?

A)そうです。来年3月に大学を卒業する学生(主に今の4年生)についてですが、おととい発表された調査で、今月1日の時点で42.8%の学生が、いずれかの企業の内定をもらっていることがわかりました。
ただ、経団連が、加盟している企業に要請しているスケジュールでは、
▼    3月に、説明会やエントリーシートと呼ばれる応募の受付がはじまって
▼    採用面接を始めるのが6月=来月から。
ですから、内定もその後、ということになっているのです。

Q)このスケジュールをみると、内定は、まだ、解禁前なのですね。

A)そうなのです。それなのに、これだけの学生がすでに内定をもらっているというのです。今と同じスケジュールになった2年前から比較すると、およそ18%増えています。

Q)それほど解禁破りが多いということですか?

A)必ずしもそうとはいえません。というのも、経団連企業ではない、外資系やベンチャー企業。それに、中堅企業などは、このスケジュールにしばられません。そうした企業が、採用活動を早めていると見られています。ただ、経団連に加盟している企業の中にも、事実上の内定を出したり、あるいは、内定とまではいかなくても、事実上の採用面接を進めていて、6月1日が最終面接。そこで内定をだす。という企業も多くあると見られています。この日が面接解禁ではなく、就職活動のゴールという学生もいるということなのです。

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Q)それはいくらなんでも解禁破りですよね。罰則はないのですか?

A)もともと罰則はない紳士協定のようなルールでしたが、多くの大企業は一応守ってきました。それが、ここ数年、どんどん守られなくなってきているのです。

Q)なぜですか?

A)2点挙げたいと思います。
まず、一点目は、学生のいわゆる「売り手市場」が一段と強まっている点です。背景には、少子化で若い人が減っていること。そして、景気の回復で企業の採用意欲が高まり、人手不足が深刻になっていることが挙げられます。今年、就職を希望する大学生や大学院生1人に対して、企業側の求人がどれだけあるかを示す求人倍率は、1.88倍と、前の年より0.1ポイント高くなっています。学生1人を、2社近くが奪い合う形です。企業も、出遅れたら、ほしい学生をほか企業に取られてしまうと必死なのです。

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Q)2点目は?

A)インターンシップの取り組みが広がったという点です。

Q)インターンシップというのは、学生が仕事の体験をしてみるということですよね。
A)そうです。もともとは、経団連が、就職活動とは切り離す形で、5日以上の日程を求めていたのですが、去年から、一日のインターンシップを認めました。手軽に、大量に学生を集めることができる。しかも、時期のしばりもない。ということで、主に大学3年生をターゲットに、夏、冬とインターンシップを実施して、早めに学生の情報を集めようという企業が増えているのです。学生の間でも、インターンシップは定着してきています。

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Q)学生の情報を集めて、どのように使うのですか?

A)インターンシップを選考と結びつける、あるいは、優秀な学生については考慮すると答えた企業が、あわせて66%に達した。というアンケート調査の結果もあります。
インターンシップですぐに内定をださなくても、参加した学生に、「通常より早い時期の選考会」や「特別セミナーへの案内」を送ったり、リクルーターを派遣したりして、接触を保ち続ける。そして、解禁前から、「面談」とか、「質問会」とか、様々な呼び方で事実上の採用面接を行う企業も増えているというのです。

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Q)解禁前に内定が相次いでいる現状を、どう考えたらいいのでしょうか?

A)早くに内定がとれたという学生にとっては、悪いことではありませんよね。一方、企業の側からは、正直に解禁を守っていては、ほしい学生がとれない。という批判が高まっています。
経団連も、この春から、2020年=再来年に行う就職活動について、(つまり、主に今の2年生が対象になります)、スケジュールの見直しも含めて検討を始めています。表向きは、オリンピック・パラリンピックが開催されるため、合同説明会の会場や地方の学生のためのホテルなどが物理的にとれないため。としていますが、本音では、今の建前のスケジュールが実態にあわなくなっているため、見直さざるを得ないという考えがあるように思えます。

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Q)どうなるのですか?

A)経団連の調査では、今のスケジュールを維持するべきと答えた企業が26.9%だったのに対して、面接・内定などを解禁する時期についての規定はなくすべきだと答えた企業が42.1%を占めました。
こうした声を受けて、経団連は、
▼    面接・内定の解禁を、前倒しする2つの案のほか、
▼    解禁のスケジュールを、「目安」という位置づけに変更する
▼    さらに、いっさいのルールを廃止する。
この4つの案を軸に、年内に方針を決めることにしています。

Q)また、スケジュールが変わるかもしれないのですね。

A)このところ、数年おきにスケジュールが変わっている状態で、それは学生が困惑するので本来はいいことではないと思います。ですが、建前がほとんど守られなくなっている実態を考えると、改めて検討することはやむをえないと思います。

Q)どの時期がベストなのですか?

A)それは、正直わかりません。ですが、少なくとも学生の参考になるように、採用面接や内定は、この辺りから始めるのが望ましいといった、何らかの目安、ルールはあったほうがいいと思います。その上で、例えば、冬休みや春休みを活用するというように、学生が学業にきちんと取り組める日程を検討してほしいと思います。

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Q)一方、就職活動に直面している大学4年生の中には、本命の企業から内定がとれていなくて、焦っている学生もいるかもしれません。どう考えたらいいでしょうか。

A)まさに大企業は、山場を迎えるところで、希望している人はがんばっていただきたいと思いますが、気になる数字もあります。

Q)なんですか?

A)学生の売り手市場だといいましたが、5000人以上の大企業に限ってみてみますと、求人倍率は、0.37倍。単純に計算しても、3人に1人しか入れないという狭き門で、3年前の0.7倍から、年々厳しさを増しています。

Q)なぜですか?

A)売り手市場だということで、大企業への就職を希望する学生が急激に増えているからです。大企業も採用の数をある程度増やしてはいますが、それでも枠は限られます。一方、視野を広げると、中小企業など、これから就職活動が本格化する企業もありますし、大企業やベンチャー企業などの中にも、秋採用など、一年に何度が募集をしたり、通年で採用したりしている企業も少しずつ増えています。

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まだ内定をとれていないからといって、焦って手当たり次第受けるのではなく、どういう仕事をしたいのか、また、どのような企業があるのか。視野を広げた上で、きちんと考えをまとめていくことが大事だと思います。ぜひ、悔いのない就職活動をしてほしいと思います。

(今井 純子 解説委員)


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