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「政治・外交と国民の視線」(くらし☆解説)

島田 敏男  解説委員

◆大型連休を挟んだ、この1か月、東アジアを巡る外交には大きな動きが相次ぎました。
一方国会では、加計学園や森友学園の問題に対する追及や論戦が続いています。
こうした政治・外交の今を国民の皆さんがどう見ているのか。
きのうまとまったNHK世論調査をもとに、島田敏男解説委員とお伝えします。

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まず、今月の安倍内閣の支持率はどうだったんですか?

◇先月から横ばいで、支持するを支持しないが上回る状況が続いています。

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安倍内閣を支持すると答えた人は先月と同じ38%、支持しないは1ポイント下がりましたが、これより多い44%という結果でした。

◆支持と不支持が逆転のまま横ばいというのを、どう見たらいいんでしょう?

◇こうだと断定はできませんが、こういう見方もできそうです。
東アジアの国際政治で大きな動きがあり、それに呼応する形で日本外交が成果を挙げることへの一定の期待感がプラス要因として存在する。
その一方で、長期政権がもたらす様々な官僚の忖度などを巡って、国民の間のモヤモヤ感が晴れずに、これがマイナス要因となって相殺した結果とも言えます。

◆先月、今月の支持率低下を見て、島田さんが注目するのはどの点ですか?

◇安倍総理の足もとを固めている自民党支持者の中で、安倍内閣を支持すると答えた人の割合が低下している点です。

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自民党支持者での8割台から7割台への低下が支持率全体を引き下げています。
自民党支持者の安倍内閣に対する支持がさらに減ると、ことし9月までに行われる自民党総裁選の行方に影響するという見方が浮上してくるでしょう。
従って、この点は来月以降、より大きな注目点になると思います。

◆先ほど島田さんが一定のプラス要因と言った、外交についての調査はどうですか?

◇まず、北朝鮮を巡る問題への対応です。安倍総理はアメリカ、中国、韓国の各国首脳と会談し、北朝鮮の非核化に向けて連携して対応することを確認しました。

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これについて聞いた結果は、評価するが65%でほぼ3分の2に上っていて、特に与党支持者では8割以上が評価しています。

◆野党支持者や無党派層でも、評価するが上回ってはいますね?

◇そうですね。ただ、与党支持者と比べると評価すると評価しないが接近しています。
北朝鮮を巡る問題の解決には、各国と連携するしかないので否定はできないけれども、他の国の主張に引きずられていかないかといった懸念を持つ人がいるということです。

◆特に拉致問題は日本が自力で取り組む必要がありますよね?

◇安倍総理は2002年の日朝ピョンヤン宣言に基づいて、拉致・核・ミサイルの諸懸案を包括的に解決して、北朝鮮と国交正常化を目指す考えを示しています。

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これを評価するかどうかについても全体では61%が評価すると答えていて、こちらも与党支持者の評価が野党支持者や無党派層よりも高くなっています。

◆日朝ピョンヤン宣言というのは、小泉内閣当時の合意ですよね?

◇はい。当時の小泉総理が、キム・ジョンウン委員長の父親のキム・ジョンイル総書記と交わした合意文書ですが、その後も北朝鮮は核開発やミサイル発射実験を続け、拉致問題の新たな調査結果を示しませんでした。

◆つい先日も北朝鮮の国営通信が「拉致問題は解決済み」と論評していましたね?

◇日本政府を牽制する動きに他なりません。
そういう北朝鮮ですから安倍総理が言う「日朝ピョンヤン宣言に基づいて」という方針は正しいけれども、問題の解決を曖昧にして国交正常化を急ぐことは許されないという
厳しい見方が少なくないということです。巨額の資金援助を約束しているからです。
国会論戦で野党側が繰り返しこの点を取り上げるのも、そうした背景からです。

◆北朝鮮を巡って、当面の最大の焦点は来月12日の米朝首脳会談ですね?

◇先月の南北首脳会談に続く初の米朝首脳会談を通じて、北朝鮮の核やミサイルの問題の解決につながると思うかどうかを、日本の国民の皆さんに聞いた結果です。

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つながる22%、つながらない25%、どちらともいえない45%という結果でした。

◆冷静に見ている方が多いようですね?

◇アメリカでも韓国でも、北朝鮮と対話すること自体が政権運営の上で得点になるという事情は共通ですから、首脳会談を行い一定の合意を確認するところまでは行くでしょう。
しかし問題は実際の行動ですから、先行きは不透明と見ておくべきは当然でしょう。

◆一方、日本の国内政治の課題についてはどうでしょうか?

◇先週、衆参両院で行われた柳瀬元総理秘書官に対する参考人質疑について聞きました。

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柳瀬氏の説明に納得できたは11%だけ、納得できなかったが79%に上りました。
柳瀬氏は「加計学園の関係者と面会したが、愛媛県や今治市の職員が同席したかもしれない。首相案件とは言っておらず、安倍総理に報告していない」と説明しました。
これに対しては与党支持者でも納得できない7割、野党支持者と無党派層では圧倒的です。

◆愛媛県の中村知事も、この説明に納得できないと言っているんですね?

◇県の職員たちが大きな責任を背負って官邸に説明に行ったのを曖昧にされたのではたまらない。自分が国会でハッキリさせたいというのが中村知事の意向です。
今のところ与党は必要ないと主張していますが、国民のモヤモヤ感に直結していますね。

◆森友学園を巡る問題でも、そのモヤモヤ感は晴れていませんね?

◇財務省が「残っていない」と言い張っていた近畿財務局と森友学園側との交渉記録の文書が近く明らかになる見通しですし、何にもまして大阪地検特捜部の捜査の行方が注目されます。
それに財務省は前事務次官のセクハラ発言辞任問題や、それに関する麻生財務大臣の不規則発言などが相次いでいます。こうしたことが国会審議を滞らせているのも事実です。

◆安倍総理は今の国会を「働き方改革国会」と強調していましたが、どうですか?

◇一部削除して国会に提出した関連法案ですが、国民の受け止めは厳しいです。

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賛成は全体の16%、反対が28%で、どちらともいえないが半数近くを占めています。
与党支持者で、どちらともいえないが過半数と言うのは浸透していないことの現れです。
労使双方が賛成の時間外労働の上限規制と一緒に、労使が対立する高度プロフェッショナル制度の導入といった内容も盛り込まれていることに無理を感じる人が多いようです。
      
◆最後に各政党の支持率ですが、今月に入って新しい政党も生まれましたよね?

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◇はい。自民党の1強の状況が変わらない中で、野党の一部再編です。
民進党と希望の党を中心に組み換えが行われて生まれた国民民主党と新しい希望の党です。ただ、両党とも当事者が期待したほどの支持率は得られませんでした。
野党第1党の立憲民主党も、自民党との開きをなかなか埋めることはできていません。

◆今の国会の会期は、来月20日まででしたよね?

◇その国会会期末までの間に、カナダで開かれるG7サミット、先ほどの米朝首脳会談、そしてそれに伴う大きな外交の動きが予想されます。
国会でのモヤモヤ感払拭の動きと、外交の成果に注目というになりそうです。

(島田 敏男 解説委員)

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