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「火山登山・観光に出かけるときは」(くらし☆解説)

松本 浩司  解説委員

まもなく大型連休。登山や観光で火山に出かける方も多いと思いますが、先週、宮崎県の硫黄山(いおうやま)で観光地のすぐそばで噴火が起きました。火山に出かける前に確認しておきたいことをお伝えします。

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【相次いだ行楽地での噴火】
Q)宮崎に住んでいたことがあるのですが、硫黄山の噴火には驚きました。

A)硫黄山は宮崎県のえびの高原にあります。火口の近くを道路が通っていて、周辺には火口湖の池をめぐる遊歩道も整備された観光地です。

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その硫黄山が突然、噴火したのは1週間前の19日の午後4時前でした。250年ぶりの噴火でした。噴煙は最高で500メートルまであがり、火口周辺では大きな噴石が飛ぶのが確認されました。
1キロほどのところに宿泊施設やビジターセンターなどがあり、観光客と従業員がいました。山に入っていた観光客もいましたが、いずれも避難してけが人などはいませんでした。

今年1月には群馬県の草津白根山が噴火し、スキー場で訓練をしていた自衛隊員1人が亡くなり、11人が重軽傷を負っています。

Q)4年前には御嶽山の災害もありました。噴火は恐ろしいですね。

A)火山の噴火はそう頻繁に起こるものではありませんが、近くに居合わせると大きな被害につながります。登山や観光の際には火山には常にそうしたリスクがあることを踏まえたうえで、情報収集や備えをしておくことが重要です。
最初のポイントは「火山の最新の活動状況を知る」ことです。

【火山の活動状況を知る】
Q)火山の活動状況をどうやって調べたらよいのですか。

A)全国には活火山が111ありますが、活動が活発だったり、防災上重要と考えられるところから、現在、39の火山については「噴火警戒レベル」という情報を気象庁が発表しています。気象庁のホームページに「火山登山者向けの情報提供ページ」があってそこで調べることができます。

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噴火警戒レベルは火山の活動度と、とるべき対応を5段階で示しています。
▼レベル1は平常の状態。
▼レベル2は活動が活発になっているので火口周辺には近づかない。
▼レベル3は登山口などから山に入らない入山規制。
▼さらにレベル4、5はさらに麓の住民まで避難などが必要な状況です。

Q)現在どうなっているのですか。

A)噴火警戒レベルが3になっているのが、先週噴火した硫黄山、同じ霧島連山の新燃岳、桜島の3火山。
レベル2が草津白根山と浅間山、口永良部島など5火山。
硫黄山では火口からおおむね2キロの範囲で立ち入りが規制されている。
ほかのレベル3や2の火山では3キロから1キロの範囲で規制されています。

Q)レベル1なら大丈夫なのですか?

A)そこが大事なところです。レベル1でも突然、噴火する可能性はあります。4年前、御嶽山はレベル1で噴火が起きて大きな災害になりました。火山に近づく以上、レベル1でも、これから話す備えは必要です。

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活動状況を確認したうえで、次に必要なのは「火山防災マップ」を入手すること。
これはその一例で北アルプス、上高地の焼岳(やけだけ)のマップです。
火山活動が活発になった場合、どの範囲に噴石などが飛ぶ恐れがあるのか、警戒レベルに応じてどの範囲への立ち入りが規制されるのかが示されている。避難場所も示されていて、そこへのルートも確認することができます。

【火山登山の装備】
Q)火山に登山する場合には装備も重要ですね。

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A)地図、コンパス、雨具など火山以外でも必要な一般的な装備に加えて、火山防災マップ、万一のとき噴石や火山灰などから守るヘルメット、ゴーグル、ヘッドライトなどを持参したい。濡れたタオルで口元を押さえることも火山灰対策として効果があるとされています。

【山中で噴火があったら】
Q)登山をしているときに活動が高まったり、噴火したりすることもあると思いますが、どうやって情報を得たらよいのでしょうか?

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A)御嶽山の噴火後、山にいる登山者などに情報を伝える手段・態勢が少しずつだが整えられてきました。噴火速報や警戒レベルがあがったなどの情報は気象庁が出しますが、それを受けて自治体からのエリアメールや民間事業者のサービスでスマホなど携帯端末にアラートが伝えられます。また電子登山届を出した登山者に自治体からメールで伝達される場合もある。ただ、いずれも受信できるよう端末を設定しておく必要があります。

Q)山中で受信できるのでしょうか?

A)山にはそうした電波が届かないところもある。さきほどの焼岳の火山防災マップですが、通信会社ごとに通話ができない範囲も示されています。色のついているところが会社ごとに通話ができる範囲、灰色のところができない場所です。

去年のお盆の最中に活動が活発になったことがあったのですが、情報を受けた登山者が口頭でほかの登山者に伝えたり、ヘリコプターで上空から注意を呼びかけるなどの対応が取られました。ただ焼岳は進んでいる事例です。山によって対応が進んでいるところとそうでないところがあり、情報を入手する手段を確認しておくことも大切です。

【火口に近い観光地の場合】
Q)登山でなく火口に近いところにある一般の観光地を訪れる場合は?

A)その地域が火山防災にどう取り組んでいるのか、ここがチェックポイントです。
御嶽山の災害を教訓に、全国の火山周辺の自治体と集客施設に避難計画づくりが義務付けられました。

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被害の及ぶ恐れのある宿泊施設や商業施設などを市町村が「避難促進施設」として指定し、「避難計画・マニュアル」を作ることになっています。万一のときに避難する頑丈な建物やそこへルート、誘導方法などを決めておくものです。今、指定と計画づくりを進めているところが多いが、計画ができていれば、火災のときの非常口を確かめるのと同じように、確認をしておけば安心だと思います。

Q)最新情報を入手したり装備を整えたりしたうえで、火山の雄大な景色や温泉などを楽しみたいですね。

A)そうですね。

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27年前、火砕流で43人が亡くなった長崎県の雲仙岳の麓の島原市に、今月1日、雲仙岳災害記念館がリニューアルオープンした。火山災害の恐ろしさと教訓を映像や模型などで伝える一方、火山の構造や魅力を体験できる、「火山とともに生きる」ということを考えさせる展示になっています

火山はまれに災害を引き起こしますが、日頃はさまざまな恵みを与えてくれています。
火山地域には火山博物館やビジターセンターなどで火山に関する展示をしているところが多くあります。登山や観光で火山を訪れる際には、火山の現在の活動状況と自らの装備や安全対策を確認したうえで、その火山の成り立ちや噴火の歴史、火山がもたらした風土など知れば、旅の楽しみがさらに深まるのではないでしょうか。

(松本 浩司 解説委員)


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