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「もうすぐ大型連休 はしか対策の徹底を」(くらし☆解説)

中村 幸司  解説委員

2018年3月から沖縄県を中心に、はしかの感染が広がっています。大型連休で国内、海外の旅行を計画している人も多いと思います。そこで、大型連休を前に、はしかの対策について考えます。

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◇沖縄県のはしかの感染の状況
沖縄県では、3月に台湾から観光で訪れていた30代の男性が、はしかに感染していることがわかりました。この男性は、日本に来る前の3月14日に発熱していましたが、そのまま、3月17日に観光で沖縄に来て、感染を広げてしまったと見られています。
沖縄県では、4月23日現在、この男性含めた感染者は、70人にのぼっています。

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上の図は、熱を出した日付ごとの患者の数をまとめたものです。4月9日ころまでの赤い部分の患者は、台湾の男性から直接感染したと見られています。これを「2次感染」といいます。

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2次感染の人たちから、さらにその周りに広がった「3次感染」が、上の図の青い部分です。新たな感染が繰り返されないよう、対策が進められています。

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さらに、沖縄県を観光していた10代の男性が、その後、愛知県内の実家に戻って感染がわかりました。愛知県内では4月24日現在、この男性が診察を受けた医療機関で感染したとみられる4人の患者が報告されていています。

◇はしかの水際対策や感染拡大の防止策
はしかは、入国段階でチェックする水際対策や感染拡大を抑えるのが難しい病気です。
はしかの症状が下の図です。

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10~12日程度の潜伏期間があります。初期の症状は、38度台の熱と、せきや鼻水などです。そのあと、39度から40度の熱になって体に発疹があらわれます。
初期のころは、風邪に似ていて、見分けがつきにくいのです。このため、水際で抑えることが難しく、はしかと気づいたときには、すでに周りにうつしてしまっていることになってしまうのです。
はしかのウイルスの感染力は、インフルエンザウイルスよりも強いのです。空気感染もします。マスクをしても防ぐことは、難しいと考えられます。
こうしたことで、水際対策や感染拡大をすぐに止めるのが難しいのです。

はしかは、命に関わることもある病気です。子どもに感染が多かったときのデータですが、発症した人の1000人に1人が死亡しています。さらに、妊娠している人が感染すると、流産や早産の恐れもあります。

◇はしかの予防接種と感染拡大の理由
今回の患者の年代別の人数は下の図のようになっています。

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30代が最も多いことがわかります。その理由のポイントは、ワクチンを2回接種しているかどうかです。
現在の定期接種では、
▽1歳と
▽小学校に入る前の1年間
の合計2回受けることになっています。小学生以上は2回受けていることになります。
ただ、定期接種は、過去に制度が何度か変わっています。平成2年4月1日より前に生まれた人(2018年4月に28歳以上の人)のときの制度では、1回接種でした。さらに、40代後半より上の人は、任意の接種で1回受けているか、接種していないと考えられます。

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はしかのワクチンは、2回接種すると、ほぼ十分な免疫力がつくとされています。1回ですと、5%くらいの人は免疫が十分でないとされています。
この理屈ですと、28歳以上、30代~50代以上が感染しやすいということになります。ただ、40代、50代以上の世代は、子どものころ、多くの人がはしかにかかっています。一度、感染すれば、強い免疫力を持ち続けます。
このため、30代前後に免疫力が弱い人が多く、患者が多くなっているものと考えられます。

しかし、10代~20代など2回のワクチン接種をしている世代にも、感染した人がいます。これは、どう考えたらいいのでしょうか。
実は、感染した人たちに聞き取りをすると、多くが、予防接種していないか、したかどうかわからない人なのです。
たとえば20代の人たちは、定期接種の制度が切り替わった時期で、当時は2回接種があまり徹底されませんでした。最近では、95%前後の子どもが予防接種を受けるまでになってきていますが、いまも、一部の子は接種を受けていません。
40代~50代以上の人も、「子どものころ、はしかにかかった」と思い込んでいるだけで、実は、はしかに感染しておらず免疫がない人がいます。
0歳の赤ちゃんは、まだ予防接種を受けていないので、周囲が感染から守ってあげないといけません。
各年代に課題があるのです。

◇はしかの感染対策
はしかの感染を防ぐもっとも有効な対策は、予防接種となります。
自分が予防接種を受けているのか、何回受けているのか、母子手帳で確認してください。専門家は「記憶は間違っていることがあるので、記録で確認してほしい」と指摘しています。

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ワクチン接種を受けていなかったり、1回だったり、あるいは接種したかわからない人は、医師に相談してください。
そのうえで、ワクチン接種が一つの方法です。ほかには、免疫が十分かどうか血液を採取して検査してもらい、不十分だったらワクチンを接種するという方法もあります。
このとき注意してほしいのは、妊娠中や妊娠の可能性のある人で、ワクチンを接種してはいけません。接種後2か月は妊娠を避ける必要もあります。

予防接種の費用は、子どもの定期接種以外は、原則自費になります。
ワクチン接種は、数千円から1万円程度、検査は、5千円とか数千円で、検査結果は数日でわかります。

◇海外旅行する際の注意点
海外旅行する際も、こうした予防接種が基本的な対策になります。

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上の図は、2018年2月までの1年のはしかの患者発生率を国別に見たものです。濃い色の国が、発生率の高い国です。
東南アジア、それにヨーロッパなどにも濃い色の国があります。海外に行く前にワクチン接種を検討してほしいと思います。
ただ、接種後5日~2週間してから、熱が出ることがあります。慣れない旅行先で発熱すると、それはそれで大変ですので、そうした点も含めて医師と相談してください。
帰国後も注意が必要です。潜伏期間があるので、帰国してから2週間は健康状態に注意してください。体調を崩したとき、いきなり医療機関に行ってしまうと、はしかだった場合に待合室などで周囲にうつしてしまうので、事前に電話して、相談してから行くようにしてください。

◇沖縄に旅行するときの注意点
沖縄に旅行するときの注意点も、基本的には海外と同様な考え方になります。

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加えて、沖縄県の担当部局は、2018年4月14日付けの沖縄県への旅行や出張を予定している人向けの案内の中で、0歳の赤ちゃんについては「流行が終息した後に、来てもらうことが安心です」と記しています。0歳は予防接種を受けていません。幼い子は重症になるリスクが高いとされているので、慎重に考えてください。

日本では、国内に長くとどまる、はしかのウイルスは無くなりました。

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このため、2015年、日本はWHO=世界保健機関から「はしかが排除状態にある国」として認められました。
しかし、上の地図では日本に薄い色がついています。
これは、今回のように外国人がウイルスを持ち込んだり、海外旅行から帰ってきた日本人がウイルスを持って帰ってしまうケースがあるからです。
排除状態とされた翌年の2016年は、関西空港ではしかの感染が広がりました。2017年には山形県で、今回は沖縄県で広がりました。
排除状態といっても、はしかの対策をしなくてよくなったわけではないのです。

今回のように感染が広がったときに、あわてないためにも、旅行に行く、行かないに関わらず、母子手帳などを確認して、ワクチンの接種を検討してほしいと思います。

(中村 幸司 解説委員)

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