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「熊本城の復旧 どうなったの?」(くらし☆解説)

名越 章浩  解説委員

熊本地震で大きな被害を受けた熊本城は、いま、どうなっているのでしょうか。
名越章浩解説委員が現地を取材しました。

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【熊本城は“熊本の誇り”】
熊本城は、東京ドーム21個分もある広い敷地の中に、天守閣や櫓などが点在しています。
市街地からは、小高い山の上に建つ熊本城がよく見えます。
市民、県民にはとても身近な存在で、地元の方からは、「熊本の誇り」「心の支えのような存在」という声がよく聞かれました。
それだけに、熊本市も「復興のシンボル」と位置づけ、中でも 天守閣を最優先に復旧させています。

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【復旧工事が進む天守閣】
熊本城の天守閣は、地震の際、屋根瓦が落ちて、近くの石垣も崩れました。
あれから2年。
天守閣では、去年の4月から本格的な復旧作業が進められています。
現在、天守閣は、作業用の足場や、資材などが落下するのを防ぐための工事用シートで全体が覆われている状態です。

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付近は立ち入り禁止になっていて、普段、観光客は、直線距離で100メートルほど離れた場所からでしか、天守閣を見ることができません。
その天守閣の最上階の屋根の部分については、この1年で瓦のふき替え工事が終わりました。
雨よけのために設置されていた覆いが、今月取り外されました。
さらに、今月6日には、地震で落下した屋根の鯱(しゃちほこ)が、新たに取り付けられました。

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【地震に強い天守閣に】
今は、今後に備えて、地震に強い天守閣にするための復旧工事が行われています。

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そもそも熊本城の天守閣は、明治10年に焼失しましたが、「地元の宝」の復元を夢見る市民が寄付するなどして、昭和35年に再建された建物です。
そのとき、天守閣の下には、固い地盤にまで届く、長さ47mのコンクリート製の杭が設けられました。
つまり、熊本城の天守閣は、この頑丈な杭の上に建っている建造物です。

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今回、当初の復旧計画では、鉄骨などを使って建物自体を頑丈にすることになっていました。
ところが、専門家がコンピューターでシミュレーションしてみると、建物だけを頑丈にすると、倒壊するおそれがあることが分かりました。
熊本地震と同じような揺れに見舞われた場合、杭には、横から最大で190トンの力がかかることがわかったのです。杭に亀裂が入ると、上の天守閣が傾く可能性があります。

このため、ダンパーと呼ばれる装置を取り入れることになりました。

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柱とはりの間に組み込みます。地震発生のときは、ダンパーが揺れにともなって繰り返し伸縮することで、地震のエネルギーを軽減することができます。
超高層ビルでも使われる「制振」という工法です。
この工法が城に取り入れられるのは珍しく、今後、モデルケースになるかもしれないということです。

【2021年の春には一般公開】

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天守閣の外観が元通りになるのは、2019年の秋になる予定です。
天守閣の内部については、高齢者や障害者が利用できるエレベーターが新設されることになっていて、それらも含めた工事がすべて完了するのは、3年後。
2021年の春から一般公開の予定です。

【未だ手付かずの場所も】 
しかし、そのほかの櫓や城門などは、まだ復旧に向けた作業が進んでいない所が少なくありません。

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例えば、天守閣から歩いて数分のところにある戌亥櫓。
石垣が大きく崩れたままになっていて、1年前に取材に行ったときの写真と比べても、ほとんど変わっていないことがわかります。
ただ、立ち入り禁止の区域は少しだけ緩和されて、観光客が近づくことができるようになっていました。
このほかにも、城の敷地内には、至る所で、石垣が崩れ、壊れたままの建物が見られました。

私は、このうち、天守閣の東側に位置する「平櫓」の被害を間近で取材してきました。

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平櫓は、1860年頃、江戸時代の末期に建てられた櫓で、国の重要文化財です。
熊本城には、国の重要文化財の建造物が13あり、その全てで、大きな被害がありました。
平櫓の場合、倒壊は免れたものの、柱が斜めになっていて、いつ倒れても不思議でない状態になっていました。
また壁には大きな亀裂が入っていて、建物の中も、グチャグチャになっていました。

この場所は、工事用の車両が入れるような道が付近になく、石垣にも被害があるため、応急の対策として、これ以上、傾かないように、ワイヤーなどで支える方法を、今後とる予定だということです。

また、平櫓から少し離れた場所にある、別の国の重要文化財の櫓も、同じようにワイヤーで固定されていました。

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【課題は石垣の修復】
復旧が進まない理由の1つは、石垣にあります。
建物の下にある石垣を、どのような工法で修復するかが、なかなか決まらないのです。
熊本城は、敷地の全体が国の特別史跡に指定されていて、石垣も文化財です。

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崩れた場合、元通りに積み直すのが文化財保護の原則です。
しかし、いつ、また大きな地震がくるかもしれませんので、耐震性を高める必要もあります。
東日本大震災以降、文化財の耐震性強化をめぐる考えは柔軟になっていて、石垣の表面は元通りにして、内側の部分については、耐震性を高める工法を取り入れた例もあります。
熊本城の場合、どんな工法を取り入れればベストなのか、その結論が出ていないのです。
それまでは、石に番号を振って、元の位置に戻せるように準備してあります。

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再び大きな地震が起きるかもしれませんし、安全上のことも考えると、現実に即した工法を早急に選定して欲しいと思います。

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【被災者を勇気づける熊本城の復旧】
石垣も含めたすべての復旧工事が終わるのは、熊本市の計画では、2037年度の予定です。
地元の人たちが「熊本の誇り」という熊本城の復旧は、被災者を勇気づけることになるのはもちろん、支援の手を差し伸べた全国の人たちの願いそのものでもあります。
1日も早い復旧を期待したいと思います。

(名越 章浩 解説委員)


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