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「相次ぐ文書問題と国民の視線」(くらし☆解説)

島田 敏男  解説委員

国有地の売却を巡る財務省の文書改ざん、そして防衛省・自衛隊のイラク派遣日報の文書隠しと、公文書の扱いを巡る大きな問題が相次いでいます。
政府への信頼を揺るがす出来事に対し、国民はどういう視線を向けているのでしょう。
きのうまとまったNHK世論調査を基に、島田敏男解説委員です。

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◆こういう中で行われた今月の調査で、安倍内閣の支持率はどう変化したんですか?

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◇支持するよりも、支持しないの方が多くなりました。安倍内閣を支持すると答えた人は、先月より6ポイント下がって38%、支持しないは7ポイント上がって45%でした。
支持と不支持の逆転は、去年10月の衆議院選挙の投票日前の調査以来です。

◆このグラフを見ると、支持する38%というのは低い数字ですよね?

◇はい。安倍総理が2度目の総理大臣に返り咲いた後、この5年余りで最も低い内閣支持率は東京都議会選挙で自民党が大敗した直後に行われた去年7月の調査の35%でした。今月の38%はそれに近い数字です。

◆この支持率低下を詳しく見ると、どんな特徴があるんですか?

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◇与党支持者、野党支持者、無党派層の別に見ると、特に変化が目立つのが与党支持者で、先月と比べると支持するが9ポイント下がり、支持しないが9ポイントアップしています。
安倍内閣の足もとに揺らぎが見えます。
無党派層でも支持するが下がり、支持しないが大きく8ポイント上がっています。

◆こうした変化は、相次ぐ政府の文書問題が原因と見てよいのでしょうか?

◇そう見て間違いないと思います。先週、防衛省がこれまで「保存されていない」としてきた自衛隊のイラク派遣の際の日報が見つかったのを受けて、こう質問しました。
「あなたは政府の公文書管理に問題があると思いますか。問題はないと思いますか。
それともどちらともいえませんか」と政府全体の問題として聞きました。

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◆問題があると答えた人が全体の66%に上っているんですね?

◇はい。厳しく受け止めている人が3分の2を占めているんです。野党支持者では8割、無党派層で7割、与党支持者でも6割が問題ありと答えています。
やはり、政府の中のあちこちで「無いとしてきた文書が後から見つかる」という問題が相次いでいることに、国民は怒りにも似た気持ちを抱いているのだと思います。

◆特に防衛省の問題では「文民統制」という点が大きく取り上げられていますね?

◇はい。きのうの参議院決算委員会でも、野党議員の追及が相次ぎました。
陸上自衛隊のイラク派遣の日報が見つかった問題で、去年3月に存在が確認されていたにもかかわらず、当時の稲田防衛大臣らに報告していませんでした。

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こうした事実を知って「文民統制・シビリアンコントロールが機能していなかった」と受け止めた人が51%と過半数に上りました。

◆文民統制というのは、自衛隊の行動を厳しく律するという意味ですよね?

◇防衛大臣をはじめとする文民が、武装した実力集団である自衛隊の行動を規則とルールのもとにコントロールする仕組みです。
常日頃から部隊の行動が妥当かどうかをチェックすることに主眼が置かれるのですが、そのためには必要な文書や情報がきちんと大臣らのもとに届いていなければいけません。
今回の文書隠しは、そうした防衛省・自衛隊の基本的な考え方に反するものなので深刻に受け止められているんです。

◆国会では森友学園への国有地売却を巡る問題も大きく取り上げられていますね?

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◇そうですね。先月27日に衆参両院で行われた佐川前国税庁長官の証人喚問について、納得できなかったという人が76%、4人中3人に上っているんです。
野党支持者、無党派層では圧倒的、与党支持者でも7割近くが納得できないです。
佐川氏は去年、理財局長として繰り返し答弁に立ち「何の問題もない」と強調していましたが、証人喚問では刑事訴追の可能性を理由に証言拒否を連発しました。
その一方で、安倍総理をはじめとする政治家の関与については全面的に否定する証言をして、ちぐはぐな印象を与えていました。

◆この問題で、野党側は引き続き他の関係者も喚問するよう求めていますよね?

◇はい。安倍総理大臣夫人の昭恵氏、国有地の売却交渉当時の局長だった迫田元理財局長らの証人喚問を求めていますが、与党側は応じられないとしています。
そこで安倍昭恵氏らの証人喚問が必要だと思うかどうか聞いてみました。

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結果は必要だが53%で過半数、必要ではないが21%、どちらともいえない17%となっています。

◆総理大臣夫人の昭恵氏の証人喚問というのは、どうなんでしょう?

◇与党は喚問には絶対反対としていますが、自民党内にも「慎重さを欠いた行動が問題を複雑にしたのは確かだ」として何らかの釈明の機会を設けるべきだという声があります。
昭恵氏が役所に直接指示を出すようなことができる立場だったかどうかは疑問ですが、夫人の問題の扱いは、安倍総理自身を窮地に追い込む危険性をはらんでいると思います。

◆財務省の決裁文書改ざんの問題では麻生大臣の引責辞任も取り沙汰されましたが、調査ではこの点も聞いているんですか?

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◇辞任すべきだと思うかどうかを聞きました。結果は、辞任すべき35%、辞任する必要ない25%、どちらともいえない32%でした。

◆割れているんですね?

◇そうですね。財務省自身の内部調査が続いている最中ですし、大阪地方検察庁の捜査も継続中ですので、先行きは不透明です。
きのうの国会で、財務省が森友学園側に「トラックを何千台も使ってごみを撤去したと言ってほしい」などと辻褄合わせのためにうその説明を求めていたことを認めました。
まさに驚天動地の事実が明らかになったわけですが、さらにこうしたことが続くならば、麻生財務大臣の監督責任が改めて問われることになると思います。

◆国会では、政府の文書問題の追及が続きそうですね?

◇そうですね。今の通常国会が始まった時には、安倍総理は「働き方改革国会だ」と胸を張ったのですが、法案の基になる調査が杜撰で一部を削除しての国会提出になりました。

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法案への賛否を聞くと、賛成14%、反対32%、どちらともいえない42%でした。
この法案は時間外労働に上限規制を設ける一方、高収入の一部専門職を労働時間の規制から外す「高度プロフェッショナル制度」の導入なども盛り込んでいます。
つまり労使双方が賛成する内容と、労働側が反対する内容が同居している法案なので、どちらともいえないが多いんです。

◆与党支持者でも賛成が少ないですね?

◇賛成と反対がほぼ同率でして、与党支持者にも十分に浸透していないのは一目瞭然です。これが今後の法案の扱いにも影響するかもしれません。

◆最後に各政党の支持率はどうでしたか?

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◇自民党がやや下がりましたが35.4%で、自民1強の姿は変わっていません。
6月20日の国会会期末まで残り2か月余り。この間の国会論戦の展開次第では、この政党支持率に変化が出てくる可能性があるかもしれません。
国会の与野党攻防から、いよいよ目が離せなくなってきました。

(島田 敏男 解説委員) 


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