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「野菜価格高騰 いつまで続く」(くらし☆解説)

合瀬 宏毅  解説委員

「野菜価格の高騰 いつまで続く」、担当は合瀬宏毅解説委員です。

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Q1.野菜の価格高いですね?

そうですね。冬のこの時期は、鍋物やおでんの材料となる野菜が広く出回り、野菜を楽しむ季節でもあるのですが、今年は例年以上に、野菜が高い。

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東京都中央卸売市場での卸値を見てみると、平年に比べ最も高いダイコンは平年の2.7倍、ハクサイは2.4倍。ネギやレタス、ホウレンソウは、年明けの異常な高値からは下がったものの、それでも平年に比べ20%から70%以上と軒並み高くなっている。
スーパーなどでは、袋詰めの野菜を小分けにしたり、バラにして客が買いやすいように工夫したりしているが、野菜の生育が遅れており、出荷量が少ない状況はしばらく続くだろうとされている。

Q2.原因は何でしょうか?

去年10月の台風と11月の寒さの影響です。

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これは去年10月に上陸した台風21号の進路図なのですが、進路上にあった東海地方から関東地方は、冬のレタスやキャベツ、ダイコンなどの大産地です。
産地では、種を蒔いたり苗を植えたりした直後で、これらが水に浸かったりして、大きな被害を受けました。
農家では改めて、種をまき直したりしましたが、11月中旬からは強い寒気が南下して、平均気温が平年より1度から2度低い状況が続きました。
この台風と寒気が野菜の供給を不安定にした。

Q3.確かにこの冬は早くから寒くなりましたよね。

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これは、静岡県での12月下旬のレタスの生育状況だが、低温のため全体的に小さく、成長が遅れている。またこちらは茨城県の白菜の状況だが、台風と低温の影響で葉の痛みが激しい様子が見てとれます。農家としては成長を待って出荷したいところだが、次の作物の種まきも控えており、小さいサイズのまま出荷しているところが多いようだ。

Q4. では、野菜の高値.今後どうなるのか?

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残念ながら、この状態、しばらく続きそうです。
野菜産地の状況を調べている、農畜産業振興機構の、今月下旬までの見通しではほとんどが高値で推移しそうです。例えばキャベツは大産地の愛知県が例年通りの出荷を続けているが、千葉県の出荷が少なめで、引き続き高値で推移。レタスも静岡など産地からの出荷が少なめで高値で推移。ほうれん草やネギ、ダイコンも同じような状況です。
一方で、ハクサイは全体的に小玉傾向ではあるが、出荷量が戻りつつあり、月末に向かって平年並みに下がってくるとしている。

Q5.白菜は嬉しいが、他はしばらくは我慢しなくてはならないということか。

はい。ただ、畑が流されたりする壊滅的な被害は一部で、多くは種をまき直したり低温による成長の遅れ。気温が上がれば2月以降回復してくると見られています。
それに野外で栽培するダイコンなどが高値な一方で、ハウス栽培が多い、キュウリやナスは価格は平年なみで、価格が高かったトマトやピーマンなども生産は回復しつつあり、価格も平年並みに落ち着くと見られている。
鍋のシーズンにダイコンやハクサイが高値なのは残念ですが、今は価格が比較的落ち着いているキュウリやナスなどを料理に上手に使うことを専門家は勧めています。

Q.それにしてもここ数年、野菜の価格が高くないですか?

そうですよね。そもそも野菜自体が天気によって出来不出来が大きく変わり、しかも保存が効かないため、供給量によって価格が大きく変動する。

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これは東京都中央卸売市場でのキャベツの卸売価格を見たものですが、価格が上昇した時期を見てみると、平成27年の4月前半には日照不足と雨不足によって、また10月には、雨不足や雹(ひょう)による生育低下で価格が上昇していることが分かります。
また平成28年には関東での10月前半の高温による生育不良があり、そして去年は台風と低温の影響で価格が高騰しました。

Q.天気の影響を受けて価格が乱高下している様子がよく分かりますね。

大きな要因は気候変動ですが、それ以外の要因もいろいろとある。
例えば農家の高齢化です。野菜は農産物の中でも栽培に特に手間が掛かり、植え付けや収穫も、多くは人頼みです。人手不足の中、重量の大きな大根や白菜などは生産量も減り、野菜の生産量は昭和60年から30%減少している。
では輸入すればいいかというとそうでもない。

Q.どういうことですか?

消費者の国産志向が強い。かつては国産の野菜が不足したら、スーパーなどが大量に海外から輸入していたのですが、中国産冷凍ほうれん草から基準を超える残留農薬が見つかったり、中国で作られた冷凍ギョーザに農薬が混入されたことがありましたよね。
そうした事をキッカケに、消費者の国産指向は極めて強くなり、生鮮野菜の輸入は平成5年をピークにむしろ減少している。生鮮野菜は作り置きが出来ませんので、スーパーとしても足りないからと言って、すぐに海外から輸入する考えもないようです。

Q.なかなか難しいですね。こうした事態に国はどう対策をとっているのか?

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二つある。大規模温室による安定生産と、野菜栽培の機械化です。
温室内の温度や湿度を調節し、天候に左右されにくい、こちら大規模温室は、安定生産に欠かせない施設と考えてられている。
これは温室内の環境をコンピュータで管理するオランダ型の温室ですが、植物の光合成を促進することで、面積あたりの、収穫量が従来に比べ6倍から8倍と高い生産性を誇ります。日本でもこうした環境制御型のハウスは増えているのですが、農林水産省では、施設整備に係る資金の半分を、農家に補助することで、さらなる普及を目指している。

Q.これだと天候が変わっても安定的に生産できますよね。

はい。ただ温室では栽培される品目が、トマトやナス、パプリカといった果菜類に限られます。これをどう増やすかです。光をあててレタスを栽培する植物工場ができないわけではありませんが、コスト的に難しい。
このため同時に進めようとしているのが、機械化です。こちらはキャベツの収穫機なのですが、刈り取ったキャベツを機械の上で綺麗に整え、大型コンテナに収容します。人の2倍のスピードで収穫でき、人手不足を解消する大きな戦力になるとみられている。

Q.これだったら農作業も楽ですよね。

実は野菜用の機械、田植えから収穫まで一貫して機械化が進んでいるコメと違って、ほとんど普及していません。
いまでも一個一個、人が手で収穫するのが主流で、この負担が生産量が減る大きな原因となっている。機械を普及させることで、野菜供給の安定を下支えしようというわけです。

Q.生産を安定させることで価格も安定してくるということでしょうか。

そうですね。自然を相手にする農業は、どうしても天候による不作や価格の高騰は避けられない。とは言っても、余りにも価格が高止まりすると、消費者としては大変。
来週は大型の寒波が襲来しそうです。群馬や埼玉などは、ハウス野菜やネギやニンジンなどの産地でもありますので心配、温度管理やその他の対策に気を付けて欲しいと思います。

(合瀬 宏毅 解説委員)

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