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「餅つき大会のノロウイルス対策」(くらし☆解説)

中村 幸司  解説委員

冬になると、ノロウイルスに注意が必要になります。2016年から17年(2016/17年シーズン)にかけての冬は、ノロウイルスの感染が広がったため、年末年始の餅つき大会が相次いで中止になりました。
確かに、大会を中止すれば、ノロウイルス対策になるかもしれません。ただ、年末年始、地域の人たちの交流の場として、長く続けている行事として、出来れば餅つきをしたかったところだと思います。
そこで、餅つき大会を開くときに、どういったことに気をつければいいのか、見てみます。

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◇餅つき大会とノロウイルス対策の4原則
2017/18年シーズンの冬、ノロウイルスの感染者の報告は、前シーズンほどではありません。ただ、餅つき大会は、ノロウイルス対策がなかなか難しいという、やっかいな面があります。
ノロウイルス対策には、4つの原則があります。

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ウイルスを持ち込まない、食品につけない、広げない、それでも食品についたウイルスは加熱してやっつけるというものです。
しかし、餅つき大会は、大勢の人が参加するので、ウイルスを持ち込ませないことが難しく、それに伴ってウイルスが食品につく機会も多くなってしまいます。

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もち米をふかすから、加熱はしています。ウイルスは、温度でいうと85度から90度以上で死滅します。しかし、つき始めから5分もすると冷めてきて、中心部でも死滅する温度より低くなるとされています。
さらに、きねや臼にウイルスが付着して広がることもあります。餅をつけばつくほど、ウイルスが餅全体にまんべんなく広がってしまうのです。

◇過去の感染例
過去の感染例で、具体的にどのようなことが指摘されているのか見てみます。2010年に、東京の杉並区の幼稚園で年の初めに行われた餅つき大会のケースです。

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130人あまりに下痢、嘔吐、発熱などの症状が出ました。これは参加者や持ち帰った餅を食べた人の、実に40%を占めています。

このとき、原因や感染が広がった要因として指摘されたのが、
▽作業する前やトイレに行った後の手洗いが徹底されていなかったこと
▽餅つきのすべての工程が素手で行われたこと
▽器具の洗浄や消毒が十分でなかったといったことなどです。

◇対策 ①手洗いと手袋
まずは、手洗いです。
ノロウイルスは口から入って感染しますが、10個から100個くらいという少ない数で感染の危険があります。感染者の便には、1滴で1000万くらいのノロウイルスがいるとされていますから、自分は感染していなくても、トイレでノブなどを触ったときに感染者のウイルスが手についてしまうことが考えられます。

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手洗いの仕方で、ウイルスの減り方がどのように違うか、手洗いの効果を調べた研究があります。手に100万くらいの数のウイルスがついていた場合です。
流水で15秒洗っても、1万くらいのウイルスが残っています。餅を直接触るときは、「ハンドソープで10秒もみ洗いして流水で15秒流す」という洗い方を2回する。これくらい洗うようにしてください。

ビニールの手袋をしている光景を見ます。手袋は、専門家も使用を勧めています。ただ、手袋をすれば、それで大丈夫ということでは、ありません。

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上の図の左の写真は、手洗いしたが洗い方がやや不十分で、手首や指の間などに洗い残しがあります。ブルーに光っている部分が洗い残しです。
この状態の手で、手袋をはめたあとの状態が右の写真です。このように、手袋の表面に汚れがついてしまいました。これでは、手袋をしていても感染が拡がってしまいます。

こうならないようにするには、手洗いの方法も大切ですが、手を洗うタイミングがポイントになります。

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作業に入る直前に、よく手を洗って、手がきれいになったところで、どこか触らないうちに新品の手袋を着けて、そのまま作業するようにしてください。余計なところを触らないようにするということです。
会場の近く、つまり便利なところに手洗い場があれば、手洗いが徹底しやすくなりなります。
手袋は、一度使ったら捨ててください。使い捨てにしてください。ただ、もちを返す人については、もちがくっつきやすい手袋だと、特につき始めは熱くて、やけどをしてしまうことがあるので、注意してください。
ウイルスは手だけでなく、知らず知らずのうちに服などにもついてしまっています。エプロン、さらにはマスク、三角巾も着用してください。

◇対策 ②容器の洗浄
きねや臼、手返し用の水の桶などは、洗浄して、熱湯で消毒するようにしてください。杉並区の幼稚園の例では、きねや臼などが汚染されて、感染が広がったと考えられています。こうしたものは清潔にして、桶の水は交換するようにしてください。

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◇対策の徹底方法
多くの人が集まる餅つき大会で、こうした対策を徹底するにはどうすればいいのか。
大切なのは、役割分担です。
餅に直接さわる人を限定することです。飛び入りで作業に参加する人には、入念な手洗いや手袋などの対策をしっかりしてもらうことが大事です。

◇感染者の対応
感染した人が餅つきに関わらないようにすることも大切です。ウイルスを持ち込まないということです。

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体調の悪い人はもちろんですが、ノロウイルスに感染して症状が治まった人でも、しばらくはウイルスを持っています。1か月以内に体調を崩した人は作業しないようにしてください。
ただ、ノロウイルスに感染しているけれど、症状が出ない人がいます。その人は、要注意です。でも誰がそうなのかわからないので、注意しようがありません。
この意味からも、作業する人は、手洗い・手袋など対策を万全にすることが大切です。

◇対策に不安がある場合は
対策が分かっても、主催者としてはきちんとできるか不安もあると思います。そのような場合、どうしたらいいか。

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ひとつは、食品衛生に詳しい人の指導を受けるということです。こうすれば、その大会や場所に応じた、より効果的な対策をとることができます。
もうひとつ。

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それは、つきあがった餅を雑煮やおしるこにして、つまり火を通して、ふるまうということです。最後に加熱するわけです。
それと、自宅に持ち帰らないようにすることも大切です。
杉並区の幼稚園の例でも、持ち帰った餅を食べた人にも感染が広がりました。持ち帰りをするなら、必ず火を通してから食べるよう指導を徹底してください。

◇対策のまとめ
餅つき大会の対策をまとめると下図にようになります。

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餅をあつかう人を限定、手洗い、消毒、加熱と…よく見れば、衛生管理の基本です。
大勢の人に食べ物を出すときに共通した対策となっています。
年末年始に、餅つき大会、あるいは、仲間を集めてパーティーを楽しもうと計画を立てている方もいると思います。こうした対策が出来ているか確認して、よい年末年始を過ごしてください。

(中村 幸司 解説委員)

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