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「ターゲットは『文具女子』」(くらし☆解説)

名越 章浩  解説委員

カラフルなペン、メモ帳、マスキングテープなどの文房具が大好きな女性をターゲットにした大規模なイベントが、東京で開かれました。
名越章浩解説委員が「ターゲットは”文具女子”」をテーマに解説します。

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【”文具女子”】
文房具が好きな女性のことを、最近は”文具女子”と呼ぶようになっているそうです。
なんとか女子って付けるのが、5、6年ほど前から、ちょっとしたブームになっています。
例えば、プロ野球の広島カープが好きな女性は「カープ女子」、山登りが好きな女性を「山ガール」など。
言い方はいろいろありますが、いつの時代も女性が流行を象徴する存在なので、こういう言葉が生まれ、女性達もSNSで自己紹介するときに面白がって使っているようです。
文具メーカーも、そこに目を付けて消費の拡大を目指そうと、大規模なイベントを開いたというわけです。

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【初の文具女子博】
今月15日から3日間、東京で開かれたイベントを取材しました。
最新の文具などを紹介しようと、国内の80社あまりの文具メーカーなどが扱う商品、およそ2万5000種類が出品されました。
”文具女子”をターゲットにしたイベントは初めてだということで、3日間で、およそ2万5000人が来場する賑わいでした。

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ボールペンやメモ帳、消しゴムなど、全体的にかわいらしい文具が多く展示されていました。
特に、マスキングテープは人気で、200円で1枚の台紙にマスキングテープを貼り放題というコーナーには長い行列が出来ていました。
持ち物に貼ったり、家の壁に貼ったりして、使い方次第で自分らしさを表現できる点が人気のようです。

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【形も機能も様々で”かわいい”】
リップクリームのような形をした文具もありました。

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実はこれ、付箋なんです。
中に付箋が巻いてあり、切り取って使います。
ポーチやポケットに入れて持ち運べるので便利ですし、何より形がかわいいと評判だそうです。

そして、「花びらの形をしたメモ用紙」もありました。
でも、ただのメモ用紙ではありませんでした。

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手のひらにのせると、丸くなっていくのです。体温に反応して丸くなる素材が使われていました。
中に書いた言葉を包むため、想いを伝えるときに便利だということで、やはり女性に人気なんだそうです。

このほか、自分好みの蛍光ペンをその場で作ってくれるコーナーもあり、長い列が出来ていました。

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文房具を買った女性は、「私の周りにも“文具女子”は結構います。今度、こんな商品が出たよ、なんて会話をします」と話してくれました。

【文具・事務用品の売り上げはどうなっているの?】
では“文具女子”はどれくらい増えているのでしょうか。
残念ながら“文具女子”というカテゴリーで統計をとったものはありませんでした。
しかし、ここ最近、個人向けの文房具の売れ行きが好調なのは事実です。

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矢野経済研究所が文具・事務用品の市場規模を調査したところ、2015年度は、4598億円で、前の年度よりも1%の増加でした。
全体としては、やや上がっている程度ですが、注目なのは、個人向け需要に対応した筆記具です。
例えば、国内の万年筆市場は、前の年度と比べて19%あまり増え、鉛筆も、前の年度より18%増えていました。
こうした傾向は、2012年度以降、続いているということです。

このうち女性がどのくらいを占めるのかは分かりませんが、実際、「文具女子博」で万年筆の売り場を見ると、オシャレでカラフルな商品が目立ち、たくさんの“文具女子”が集まっていました。
やはり人気があるのだな、と感じました。

【最近になって市場規模が広がっている理由】
では、最近になって市場規模が広がっている理由は、何なのでしょうか?
大手文具メーカーによりますと、きっかけの1つはリーマンショックだということです。
どういうことかというと、景気低迷で業績が悪化した企業が、コスト削減のため社員に支給していたペンなどを購入しなくなりました。
このため社員が自分で文房具屋を探して買うようになりました。
すると、どうせ自分で買うなら、オシャレで、かわいくて、自分らしい文具を持ち歩きたいということになり、それがアイデア豊富な文具のヒットにつながっているということでした。

さらに最近では、かわいい文具を、自分の友達にも見てもらいたいと、インターネットのSNSで写真付きで紹介する人が増えて、人気が一段と高まるという現象に結びついているようです。
これはまさに、ことしの流行語にもなった「インスタ映え」です。
このほか、働く女性の数が増えたことも背景にあるという意見もあります。
少子化の影響で子供の数が減っているので、“文具女子”への業界の側の期待も大きいと思います。

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【海外からも“文具女子”】
そして、さらに、もう1つ、文具の売り上げを後押ししているのが海外からの観光客です。
東京・渋谷の東急ハンズ 渋谷店の文房具売り場には、毎日のように外国人が来ます。
私は、日本に旅行で来ているという方に話を聞きました。

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オーストラリアから来たという2人の若い女性は、「日本の文房具は、とてもステキで、デザインがキレイ。さらに、かわいい。私はアザラシのイラストがついたノートが気に入ったわ」と話していました。

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また、タイから来たという2人の若い女性も、「かわいいし、独特だし、種類が多いのが魅力。タイと違って、技術力も魅力」と話していました。

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東急ハンズ 渋谷店の村井伸生さんは「文房具は、いま外国人の方に非常に注目されています。特に外国の女子の方が買っていきます。かわいらしかったり、色がカラフル、豊富であったりというところで、まとめ買いする人もいます」と話していました。

【“文具女子”は今後ますますターゲットに】
日本も海外も、やはりキーワードは”文具女子”のようです。
「かわいい」もの、自分らしいものを持ちたいという思いに、国境はありません。
そうした欲求を満たすには、文具はちょうど良い大きさで、おしゃれアイテムの1つにできますし、価格も手頃。こうした点が国内外の文具女子をひきつけていると思いました。

自分へのご褒美「プチ贅沢」に通じるところもありそうです。
文具は、最近では、販売する場所も文房具屋だけでなく、洋服店や家具店、スーパーなどにも広がってきています。
かわいくて、付加価値の高いアイデア文具が、業界を超えて、お客さんを呼び込む1つのセールスポイントにもなろうとしているのかもしれません。

(名越 章浩 解説委員)

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