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「政治の行方と国民の視線」(くらし☆解説)

島田 敏男  解説委員

◇2017年も残りわずかになり、ことし最後のNHK世論調査がまとまりました。
きょうのテーマは「政治の行方と国民の視線」でして、担当は島田敏男解説委員です。

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政治の動きにどう注目しながら新しい年を迎えるのかということですね?

◆はい。来年は先の衆院選の結果の上に立って、政治の行方を探る年になると思います。
安倍政権が一層の長期政権となっていくのかどうかが、最大の焦点になります。

◇衆議院選挙の後、安倍内閣の支持率はどうなっているんでしょう?

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◆上向きの傾向が続いています。今月の調査で安倍内閣を支持するは、先月の調査より 3ポイント上がって49%、支持しないは先月と同じ35%という結果でした。
衆議院の解散から投票日までの期間は、支持するを支持しないが上回っていましたが、野党候補が競合した小選挙区で自民党が圧勝して勝利した後、徐々に上向いています。

◇先月からの3ポイントのアップというのを、どう見ればいいんでしょう?

◆統計上は誤差の範囲なんですが、詳しく見るとそれなりの変化が浮かびます。

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安倍内閣を支持すると答えた人を年代別に先月と今月で比べて見ると、39歳以下と60歳以上では横ばいなのに対し、40代・50代では11ポイントも増えています。
なぜかを尋ねる質問は無かったのですが、安倍総理が衆議院選挙中から掲げている教育の無償化拡大というアピールが歓迎されていることが考えられます。

◇40代・50代というと、子どもの教育にお金がかかる年代ですよね?

◆そうですね。この調査の開始直前のタイミングで政府は幼児教育・保育の無償化と共に、対象を限定して国立大学などの授業料を免除する方針などを閣議決定しました。
これまで高齢者重視の社会保障政策が中心だったのを子育て世代の支援にシフトする政策転換です。問題は財源の確保と継続性で、ここは年明けの国会でも議論になります。

◇ことし国会で議論になった森友学園、加計学園の問題についてはどうなんですか?

◆まず森友学園を巡る問題ですが、国民の視線は依然として極めて厳しいです。
国有地が8億円余り値引きされて森友学園に売却された問題で、会計検査院は「値引き額の算定方法には十分な根拠が確認できない」とする検査結果を報告しました。

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値引きをした政府の対応をどう思うかという質問に、適切だったは3%に過ぎず、適切ではなかったが66%に上りました。

◇当事者である財務省の説明に対しても、国民の受け止めは厳しいですね?

◆財務省は学園側との打ち合わせを録音した音声記録の内容を認めた上で、価格交渉や口裏合わせなどは行っていないと説明していますが、納得できないが77%に上っています。
安倍総理は「謙虚に丁寧に説明した」と繰り返しますが、この問題は様々な角度から
事件としての捜査が続いていますので、再び政権運営の障害にならないとも限りません。
「もう終わった話」と言って、軽く見ることはできないと思います。

◇加計学園の獣医学部新設の問題は、どうなんでしょうか?

◆林文部科学大臣が来年4月の開学を認可したことについては、評価が割れています。

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全体では、妥当だ20%、妥当ではない32%、どちらともいえない38%でした。
これを詳しく見ると与党支持者ではどちらともいえないが半数近くで、野党支持者では妥当ではないが6割、無党派層では妥当ではないとどちらともいえないが横並びです。

◇特区制度を使った獣医学部の新設については、見方が様々なんですね?

◆安倍総理の友人が理事長を務める学園が特区制度で恩恵を受けたことに対し、政府中枢の「忖度」が取り沙汰されたのですが、それだけで判断するのは困難な面があります。
新しくできる獣医学部が、謳い文句通りに最先端の知見を備えた新しいタイプの獣医師を育てることができるのかという、教育内容の評価が重要になると思います。

◇年を越す大きな課題には北朝鮮問題もあります。政府の対応はどうなんでしょう?

◆北朝鮮に対する制裁強化のための外交努力は続いています。
その一方で政府は、北朝鮮に向けるものではないとしながらも、自衛隊の攻撃能力を高める新しい装備の導入を検討し始めました。
それが戦闘機に搭載する長距離巡航ミサイルでして、政府は離島の防衛を強化するための装備で専守防衛に変わりはないとしていますが、野党からは反対意見も出ています。

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◇これについて聞いた答えは「必要だ」と「どちらともいえない」が多いんですね?

◆そうですね。政府が北朝鮮のミサイル基地などに向けた、いわゆる敵基地攻撃に使うものではないと説明していることも、肯定的な受け止めに繋がっているのでしょう。
ただ、軍事専門家は「射程距離が500キロから900キロというミサイルを持てば、周辺の国々に対する日本の抑止力を高める効果を生むのは当然だ」と言います。
使い方次第で敵基地攻撃能力の保有にもつながる装備ですから、国会の場で専守防衛の基本原則との関係をきちんと議論すべき問題です。

◇その自衛隊と憲法を巡る議論も年を越すわけですね?

◆はい。今回の調査では、ことし5月に安倍総理自身が提起した、憲法を改正して自衛隊の存在を明記することについて聞きました。

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結果は賛成36%、反対20%、どちらともいえない35%となっていて、安倍総理が提起した直後の調査とほぼ同じでした。現れている傾向も、ほぼ同じでした。

◇自衛隊の任務や能力は今と変わらないということなんでしょうか?

◆安倍総理はそう説明しますが、自民党内には「それならば改正する必要がない」という意見がありますし、他の政党からは「新しい国民の権利や国の統治の仕組みに関する改正を優先させるべきだ」といった指摘が出ています。
年明け以降、衆参両院の憲法審査会で、今後の議論の進め方について、どういう合意が図られるかに注目です。

◇年越しを前にして、各政党の支持率はどういう状況ですか? 

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◆自民党が先月よりも1ポイントアップして38.1%で、1強に変化はありません。
これに対し野党はといえば、衆議院選挙を戦わなかった民進党は1.8%にとどまり、
民進党から移った議員が多い希望の党も1.4%で低迷しています。
その一方で、希望の党の排除から生まれた立憲民主党が7.9%となっています。
自民党に向き合う野党の中で、どの党が軸になるのかも来年の注目点です。

◇来年2018年は、どういう年になるんでしょう?

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◆来年は、国政選挙はなさそうですので、9月の自民党総裁選が最大の焦点です。
その翌年は天皇陛下の退位、皇太子さまの即位という大きな節目、そして消費税率の10%への引き上げ、さらに2020年のオリンピック・パラリンピックに続きます。
従って来年は、大きく動く次の年以降の準備の1年という面もあります。

◇自民党総裁選の行方はどうなるでしょう?

◆経済の動向、北朝鮮問題の展開などを見ないと、今の時点では何とも言えません。
準備の年は熟考・熟慮の年でもあるでしょうから、目先のことにとらわれずに、日本の将来を見据えた議論の上で物事が定まるよう期待したいですね。  

(島田 敏男 解説委員)

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