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「地球史に『チバニアン』命名へ」(くらし☆解説)

水野 倫之  解説委員

46億年の地球の歴史に、初めて日本の名前が刻まれる可能性が高。
千葉県の地層が地球史の一時代の特徴をよくあらわしているとして、その時代が「チバニアン」と命名される見通しとなった。
水野倫之解説委員の解説。

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命名に向けて大きく前進したというニュースが流れて以降、見学者が殺到しているということで、私も現場に行ってきた。
私が取材したのは先週の日曜日でしたが、1時間で100人ほどが訪れ、崖に近寄って触れてみたり、写真を撮ったりしていた。
小学生から年配の方まで多い日は700人ほどが訪れているということ。

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 日本の研究グループが、この地層が77万年から12万6千年前の時代の特徴を現しているとして、その時代を、ラテン語で千葉の時代を意味する「チバニアン」と命名するよう国際学会に申請したのが、今年の6月。
その時代はまだ名前がついていない。

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 地球の歴史は、繁栄した生物や、当時の気候、地球の磁場の様子などに基づいて細かく分けられ、
▽両生類やは虫類が陸上に進出した古生代。
▽恐竜がいた中生代。
▽そしてほ乳類が繁栄する新生代と、
大きく3つに分けられ、それぞれの時代はさらに細かく、恐竜が全盛期を迎えたジュラ紀など、その時代を特徴付ける地層が国際学会によって選ばれ、その地域にちなんだ名前。
しかし、まだ名前が決まっていない年代もわずかにあり、その一つが77万年から12万6000年前の間。
氷河期と温暖な間氷期が繰り返された時代で、マンモスなどの大型のほ乳類が生息し、人類では旧人のネアンデルタール人がいて、今の人類ホモ・サピエンスが現れた時代。

 日本のグループが「チバニアン」を申請したのに対し、イタリアからも2つのグループが国内の地層を、「イオニアン」と命名するよう申請があり、国際学会の委員16人が投票で決めることに。
ただ地質学は、古い地層が多く残るヨーロッパで発展し、これまでもヨーロッパ由来の名前がたくさんついてきたことから、日本の分は悪いとみる関係者もいた。

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ところがふたを開けてみると、日本は11票を獲得。イタリアはそれぞれ2票で、小差であれば決選投票になる可能性もあったが、1回で決着し、結果は圧勝。
今後さらに総会などで審査され、来年には正式に決まるとみられている。

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グループの代表の茨城大学の岡田教授は、「地殻変動が激しい日本は古い地層が少なく、日本の名前が残せる事実上最後のチャンスだっただけに、よかった」と。
日本側の勝因は決め手となったのは、グループが地層から見つけた、地球の磁場が逆転した痕跡。

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地球は全体が大きな磁石のようになっていて過去に数百回逆転したことがわかっており、その最後の逆転が77万年前に起きていたことを千葉の地層で確認した。
イタリアの地層は花粉の化石など当時の気候がわかる証拠には優れたものがあったが、磁場のデータが不十分で、千葉に軍配が上がったと見られている。

このように「チバニアン」命名の可能性が高まったことで、現場に見学者が殺到しているが、困った問題も。
現場にはほとんど駐車場がないため、市原市が急きょ、土日と祝日に限って最寄駅など2箇所に臨時駐車場を設け、現場近くに向かう無料のシャトルバスの運行。
また現場にはトイレがないため、途中に仮設のトイレも2基設置。
ただこれだけでは十分ではなく。
バス停から現場に向かう道路は、途中からは未舗装の林の中。
急な坂道もあり、年配の方にとっては危険なところも。
そこで地元のボランティアやおとしよりのグループが対策を協議。
高低差が激しいところに手すりをつけたり、別の平坦なルートを通ることができるよう、林の中の草刈りをするなど、見学者の受け入れに協力。

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地元の人たちは「これといった観光スポットがなかった所に名所ができ、千葉が世界に発信されるのはうれしい」と話す反面、すでに違法駐車や、民有地に勝手に入ってくる見学者もいるということで、この先、生活に支障が出ないか不安ものぞかせていた。
また訪れた人たちからは「どこを見たらいいのかよくわからない。そもそもチバニアンって何なのか教えてほしい」といった声も。
市原市ではチバニアンを説明するパンフレットを作って現場近くに置いたり、スマホでも見られる動画も制作しましたが、まだ十分とは言えないよう。
市では、天然記念物指定を目指していて、今後一帯の整備を進めて行きたいと話すが、予算も必要で、しばらくは時間がかかる。
現場の地層は大変貴重。マナーを守って見学を。

(水野 倫之 解説委員)

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