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「衆院選結果と国民の視線」(くらし☆解説)

島田 敏男  解説委員

◇先月22日に投票が行われた衆議院選挙の後、初めてのNHK世論調査がまとまり、この結果をもとにお伝えするテーマは「衆院選結果と国民の視線」です。
担当は島田敏男解説委員です。島田さん、衆議院選挙は与党が勝利しましたね?

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◆はい、今回の選挙では1人を選ぶ小選挙区で野党の候補者同士の競合が目立ちまして、結果として候補者を一本化した自民・公明の与党側が圧勝しました。
この選挙の結果を受けて、安倍総理大臣は一層の長期政権を目指す構えですが、国民は
そこにどういう視線を向けているのかを探ります。

◇まず、安倍内閣の支持率ですが、変化があったようですね?

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◆支持するが支持しないを上回りました。
安倍内閣を支持するは、前回の調査、つまり衆院選投票日1週前の調査より7ポイント上がって46%、支持しないは7ポイント下がって35%という結果でした。
投票日前の3週連続の世論調査では、支持するよりも支持しないが上回っていましたが、選挙結果の余勢を駆って逆転を解消した格好です。

◇選挙の後、第4次安倍内閣の発足、そして日米首脳会談と続きましたよね?

◆その日米首脳会談も、内閣支持率の押し上げにつながったようです。
アジア歴訪の最初に日本を訪れたトランプ大統領との会談では、北朝鮮に核やミサイルの開発を放棄させるために圧力を最大限まで高めて行くことで一致しました。

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この会談を評価するが63%、評価しないが32%だったんですが、安倍内閣を支持すると答えた人では8割以上が会談の成果を評価しているんです。

◇安倍内閣を支持しないという人の傾向とは対照的ですね?

◆安倍総理は選挙戦で「北朝鮮の脅威に日米同盟強化で向き合う」と強調していましたし、解散・総選挙の日程もトランプ大統領の日本訪問を意識して組み立てましたから、選挙の結果と日米首脳会談は一体のようにも見えます。

◇その衆議院選挙の結果を、国民はどう見ているんでしょうか?

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◆自民・公明の与党が3分の2以上の議席を獲得して圧勝したことについては、よかった、よくなかったが共に28%、どちらともいえないが39%で割れました。
詳しく見ると与党支持者ではよかったが5割強、野党支持者ではよくなかったが6割強、無党派層ではどちらともいえないがもっとも多くて5割という具合に割れています。
選挙中にお伝えした世論調査では、「野党の議席が増えた方がよい」と答える人がやや多かったんですが結果はそうならず、そのことに対する受け止めはまだら模様のようです。

◇選挙の結果を喜んでいる人ばかりでは無いようですが、政党支持率はどうですか?

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◆こちらです。( )の中は、投票日1週前の前回調査との比較です。
自民党は4.3ポイント増えて37.1%で、選挙の前と同様に1強です。
他の政党を見ると、野党第1党になった立憲民主党が3.0ポイント増えて9.6%で、選挙での勢いを維持しています。
一方で、民進党から移った人たちが多い希望の党は前回よりも2・2ポイント減って3.2%にとどまり、衆議院選挙を戦わなかった民進党は1.3%でした。
この数字が、今後、どう変化していくか。再来年夏の参議院選挙が次の政治決戦になりますから、そこに向けた動きが焦点です。

◇やはり立憲民主党に対する国民の視線が気になりますね?

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◆立憲民主党が野党第1党に躍進したことについて聞いた結果は、よかったが33%、よくなかった10%、どちらともいえない51%でした。
野党支持者では、立憲民主党の支持者を中心によかったが6割に上っています。
これに対し与党支持者と無党派層では6割前後がどちらともいえないと答えています。

◇どう受け止めたらいいんでしょう?

◆立憲民主党は、希望の党から排除された人が中心になって作った党で、憲法9条の改正に批判的な点など考え方は比較的はっきりしていますが、野党内での求心力は未知数です。
立憲民主党が野党勢力の結集の軸になっていくのか、それとも他の野党と横並びにとどまるのか。それによって、とりわけ無党派層からの見られ方は大きく変わると思います。

◇選挙後初めての国会論戦は、いつからになるんですか?

◆今度の金曜日17日に安倍総理が所信表明演説を行い、これを受けて与野党の代表質問が行われ、その後、予算委員会などの質疑が行われるかどうかです。
と言いますのも、今、与野党の間で質問時間を巡る対立が続いているからなんです。
これまで総理大臣が出席する予算委員会などでは、質問時間は与党2に対し、野党が8という割合でしたが、今回選挙で勝った与党が質問時間を増やすよう主張しているんです。

◇与党が自分たちの質問時間を増やすよう要求し、野党は反対しているんですね?

◆はい。そこで今回の調査で、国民の皆さんがどう思っているのか聞きました。

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▼現状を維持すべき26%▼野党に多く配分するものの、与党の時間を増やすべき14%▼与党と野党の時間を半分ずつにすべき38%▼議席数に応じて与党に多く配分すべき11%という結果でした。

◇現状を維持すべきは4分の1なんですね?

◆そうなんです。この結果を見て、私は野党の質問時間を多く確保してきた国会の慣例がなぜ生まれたのかを、改めて知っておく必要があるなと感じました。
与党は、政府が法案や予算案を国会に提出する前に事前に審査して同意しているんです。
これに対して野党は、法案や予算案が国会に出されてから中身を検討する立場でして、行政府に対して疑問点を問いただすには、それなりの質問時間が必要です。
もちろん野党の質問レベルが低いのでは困りますが、国会の持つチェック機能は大切にすべきだと思います。

◇今回の調査では安倍内閣が取り組むべき課題についても聞いていましたよね?

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◆はい。この6つの選択肢から1つを挙げてもらいました。
最も多かったのが社会保障で28%、これに景気対策、財政再建、北朝鮮対応を含む外交・安全保障、格差の是正と続きました。

◇憲法改正は6%で6番目だったんですね?

◆安倍総理は憲法改正に熱心ですが、国民の側からは議論すべき大事なテーマだけれども暮らしに直結した課題の方が優先度は高いという受け止めがにじみ出ています。
従って憲法改正の議論は、急ぎすぎると国民の間に違和感が広がりかねないと思います。 

◇2番目が景気回復ですが、国民の景気回復に対する実感はどうなんですか?

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◆こちらです。先週、日経平均株価が25年ぶりの高値をつけましたけれども、景気の回復を実感しているという人は6%にすぎず、実感していないが64%に上っています。
詳しく見ても野党支持者、無党派層では7割から8割、与党支持者でも5割を越える人が実感していないと答えています。

◇株価の上昇とはズレがあるんですね?

◆安倍総理が選挙に勝って一層の長期政権の実現を目指すならば、賃金引き上げによって国民の間に景気回復実感を浸透させることができるかどうかが問われます。
さらに社会保障の持続可能性や財政再建という中長期の課題についても、答えの道筋を示すことが求められると思います。

(島田 敏男 解説委員)        

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