NHK 解説委員室

解説アーカイブス これまでの解説記事

「北朝鮮 核・ミサイルと国民の視線」(くらし☆解説)

島田 敏男  解説委員

k170912_01.jpg

◆島田さん、先月から今月にかけて北朝鮮は弾道ミサイルの発射、6回目の核実験と、矢継ぎ早に危険な行動を繰り返していますね。

◇はい。先月29日に北海道の上空を通過する弾道ミサイルを発射し、その5日後には核実験を行い「水爆の開発に成功した」と世界に発信しました。
◇アメリカと交渉する時に優位に立つことを狙った行動ですが、日本の国民はこれをどう受け止めているのか。きのうまとまったNHK世論調査をもとに見ていきます。

◆その世論調査ですが、まず、安倍内閣の支持率には変化があったんですか?

k170912_02.jpg

◇ありました。7月に急落した内閣支持率が、回復傾向を示しています。
◇安倍内閣を支持するは先月の調査より5ポイント上がって44%、支持しないは7ポイント下がって36%でした。
◇加計学園の獣医学部新設を巡る問題などの影響で、7月に支持しないが支持するを13ポイントも上回る逆転現象が起きました。
◇このため安倍総理が反省の弁を述べたりしまして、先月、支持と不支持の差が狭まったのに続いて、今回、支持するが支持しないを8ポイント上回りました。

◆詳しく見ると、どういう変化があったんですか?

k170912_03.jpg

◇与党支持者と無党派層で、安倍内閣を支持すると答えた人の割合が徐々に増えています。
◇特に与党支持者では先月から今月にかけて6ポイント上昇で、7月に表面化した「安倍離れ」が短期間で回復に向かっています。

◆そのことと、この所の北朝鮮の危険な動きは関係あるんでしょうか?

◇関係していると思います。安倍総理は北朝鮮に対し、今は話し合いよりも圧力を強めるべきだという考えを鮮明にしています。
◇現状では北朝鮮が対話に応じる気配が無いのですから、与党支持者を中心にして厳しい対処方針を示していることに一定の評価が集まっているのだと思います。

◆それだけ北朝鮮に不安を感じている人が多いということなんでしょうね?

◇今回、日本の上空を通過する弾道ミサイルの発射や核実験といった北朝鮮の行動に不安を感じるか聞いた結果は、不安を感じるが88%と圧倒的で、感じないは9%だけでした。

◆そこで圧力強化の取り組みなんですが、国民の受け止めはどうでしょう?
◇安倍総理はアメリカや韓国の首脳らと相次いで電話会談などを行い、今は対話の時期ではなく、圧力強化が必要だとして国際社会の連携を呼びかけています。

k170912_04.jpg

◇こうした対応を評価するが全体の69%で、3分の2を超えています。
◇評価するは与党支持者では8割以上、野党支持者と無党派層でも6割を超えています。
◇もちろん圧力の中身についての考え方は様々でしょうが、北朝鮮の危険な行動を放置できないと感じている人は少なくないということです。

◆そして国連の安全保障理事会で、日本時間のけさ、新たな決議が採択されましたね?

◇北朝鮮に対する制裁決議で、当初、アメリカが示した草案に盛り込まれていた石油の輸出禁止、つまり北朝鮮に石油は渡さないという内容は盛り込まれませんでした。
◇中国やロシアの賛同を得るために「輸出量に上限を設ける」という緩やかな内容にして、全会一致で採択することを優先させました。

◆今月の調査では、この石油の輸出禁止についても聞いていましたね?

◇はい。国連の安全保障理事会の協議で、北朝鮮への石油の輸出禁止などを盛り込んだ決議の採択が焦点になっています。あなたは石油の輸出禁止が必要だと思いますか、思いませんかと聞きました。
◇結果は、必要だ49%、必要ではない12%、どちらともいえない31%でした。

k170912_05.jpg

◆ほぼ半数の人が必要だと答えているんですね?

◇北朝鮮は産油国ではないので、この制裁は相当の威力があるだろうと有効性に期待して必要と答えた人が多いと思います。
◇安倍総理の圧力重視を評価する人が多い与党支持者では6割が必要だと答え、野党支持者と無党派層でも半数近くが必要だと答えています。

◆ただ、どちらともいえないという人も少なくないですよね?

◇特に野党支持者と無党派層では3割を超えていて、注意を要するポイントです。
◇現代国家にとって石油は国民生活の生命線ですから、これを全く渡さないということになれば死活問題で、かつて日本も石油を止められたことで太平洋戦争に突入したんです。
◇石油の禁輸が北朝鮮を軍事行動に追い込みはしないかと懸念する声は、日本の国民世論の中にも存在しているわけです。

◆そういう議論があるからこそ、安保理でも決議の中身が修正されたんですね?

◇そういうことです。圧力強化と言いながらも、軍事衝突を避けて何とか話し合いで問題解決を図りたいというのが国際社会の共通の考えです。次は北朝鮮がどう応じるかです。

◆北朝鮮問題の一方で、日本国内の政治の舞台でも動きがありましたね?

k170912_06.jpg

◇民進党の代表選挙が行われ、前原さんが新しい代表になりました。
◇その直後の政党支持率がこちらで、自民党37・7%に対して民進党は6・7%です。
◇青の民進党はグラフで見ると先月よりもわずかに上向いたのですが、赤の自民党が無党派層の占める割合が減った分を吸収する形で上向いたのと比べると大きな差があります。

◆前原代表への期待感はどうでしたか?

k170912_07.jpg

◇スタートは厳しく、期待する36%に対し、期待しないが57%に上りました。
◇ただ、政権交代につなげた民主党の時代も含めて、代表が替わった直後の期待感というのは高かったり低かったりで、大事なのは時間をかけてどういう実績を積み重ねるかです。

◆あの山尾志桜里さんの離党も痛手になりましたね?

k170912_08.jpg

◇既婚男性との交際疑惑を巡る報道を受けて、山尾氏が離党したのは民進党に影響があると思いますかという質問に、影響があると答えた人が66%、3分の2に上りました。
◇確かに痛手だとは思いますが、前原さんにとっては、これを乗り越えて次の離党議員が出ないように、党内の結束を最優先にして党運営にあたることが大事です。

◆選挙のことを考えると、共産党などとの野党連携が焦点になりますね?

k170912_09.jpg

◇全体では続けたほうがいい22%、続けないほうがいい29%、どちらともいえないが41%と割れています。
◇ただ、与党支持者で続けないほうがいいが多いのは「野党連携が進むと手強い」という正直な受け止めの現れでしょうし、野党支持者で続けたほうがいいが多いのも実感に根ざしたものでしょう。
◇一方で、無党派層でどちらともいえないが多いのは、「政策の違いが大きいまま選挙の時だけ連携と言われても戸惑ってしまう」という、これも実感でしょう。

◆気になるのが衆議院の解散・総選挙の時期ですが、どうでしょう?

◇内閣支持率や自民党の政党支持率が上向くと「さあ解散だ」という声が出がちですが、どこまで国民の支持が回復しているのかは疑問です。
◇緊張感が必要な北朝鮮の問題が先行き不透明ですから、安倍総理も当面は解散のことは慎重に考えるのではないでしょうか。

(島田 敏男 解説委員)

キーワード

関連記事