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「取締り強化へ 広告の『打消し表示』」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

消費者庁は、広告の「打消し表示」について、取締りを強化する考えを示しました。今井純子解説委員。

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【広告の打消し表示というのは、どういうものですか?】
消費者庁が、モデル広告としてつくった、ダイエットのための健康食品の広告を見てみましょう。

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【新聞や雑誌などで見かけますね】
「あきらめていた服が入った」「カロリーを気にせず食べられる」「毎日たった2錠飲むだけ」と、これさえ飲めば、簡単にダイエットできると受け取れる体験談を載せています。そして、問題の打消し表示というのは、体験談の左下にあります。大きくすると・・「個人の感想です。効果には個人差があります」と書かれています。

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【確かに、このような表示は、よく見かけますね】
もうひとつ。テレビを想定して、消費者庁がつくったスーツの広告を見てみます。

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よく見ると右下に「2万円以上の商品に限ります」と書いてあります。

【気づかれないようにわざと小さく書いてあるように思ってしまいますよね】
そう受け取られてもしかたありません。このほかにも、

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▼ 例えば、インターネットの保険の広告で、最初の画面では、新しく契約をした人に抽選でプレゼントをするということだけを強調し、スクロールしていくと、ほかにも様々な条件があることが、最後の方に小さく書いてある。

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▼ 休日にコインパーキングで、「一日最大、1500円」と大きく書かれた看板を見て、とめたら、結果的に8000円を請求された。よく見たら、看板に小さく「平日のみ」と書かれていた。

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このように、新聞や雑誌、インターネット、テレビをはじめ、さまざまな広告で、いかに、効果があるか、いかに安いかということを強調した文字がある。それとあわせて、「個人の感想です」とか「例外がある」ということが表示されている。それが打消し表示です。

【気づかないこともありますね】
そうですね。自分にも効果があると信じて買ったら、効果がなかった。あるいは、安いと思って買ったら、高い料金を請求された。という相談は、全国の消費生活センターにも相次いでいます。ですが、おかしいじゃないか、おカネを返して欲しいと、事業者に言っても「個人差があるって書いてあるじゃないですか」「2万円以上って書いてあるじゃないですか」と言われてなかなか応じてもらえない。つまり、事業者が、打消し表示を、何かあったときの言い訳というか、免罪符のように使っているのが現実だというのです。

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【確かに「書いてあるでしょ」といわれると、気づかなかった自分が悪いと思います】
そうですよね。でも、それが、そうではない。打消し表示が書いてあるというだけでは、免罪符にならない。という考えを、今回、消費者庁が明確に示したのです。

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【どういうことですか?】
消費者庁は、大きく、2つの考えを示しました。一つ目は、そもそも、「多くの人が、打消し表示に気づかない」。そのような広告は、法律違反の可能性が高いという考えです。
消費者庁が、先ほど示したモデル広告を1000人に見せてアンケート調査を行ったところ、打消し表示に気づかなかった人が
▼ こちらの体験談を見た人では、およそ90%
▼ 4割引セールの表示を見た人では、およそ80%に達しました。

【自分だけではなかったのですね】
そうです。大半の人が気づいていませんでした。
▼ 文字が小さい、
▼ 動画だと、表示されている時間が、1、2秒と短い。こうしたことが理由です。

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【こうしたものは、違法だということですか?】
違法の可能性が高いということです。消費者庁は、そもそも、効果や安さを強調する表示は、それだけで中身がわかるような内容にすべきで、「打消し表示」は、例外的な場合に限って使うべきだと指摘しました。そして、その場合も、多くの人が打消し表示に気づかない場合、「実際のサービスや商品より著しく優れていると、消費者に誤解を与えるような広告を規制している」「景品表示法」という法律に違反する恐れがあるという判断を示したのです。

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【どのくらいの大きさでないとだめとか、決まったものはあるのですか?】
強調された表示とのバランスとか、表示の位置とかを見て、わかりやすいかどうか、総合的に判断するとしていますが、要するに、打消し表示をするのなら、もっと字を大きくするとか、音声で2万円以上お買い上げの方は、4割引と言うとか、誰が見てもわかるようにしなさいということです。

その上で、もう一点。特に、体験談については、たとえ、大きな文字で打消し表示があっても法律違反になる恐れがあるという考えも示しました。というのも、
▼ 消費者庁のアンケート調査の結果、体験談を読んだ人のおよそ40%が「だいたいの人に効果がある」と受け止めていて、次に「個人の感想です」という打消し表示があることを指摘した上で、改めて聞いてみても、「だいたいの人に効果がある」と受け止める人の割合がほとんど変わらなかったとしています。つまり、40%程度いる、体験談を信じる人に対しては、打ち消し表示は意味がないということがわかったというのです。

【私自身は、こうした体験談は、本当なのか、とつい疑ってしまいますが】
架空の体験談を載せることは、もともと法律で禁止されていますが、
▼ 消費者庁は、今回、たとえ「個人の感想です」という打消し表示がわかるように書いてあっても、効果が得られない人が多くいる場合、景品表示法違反の恐れがある。体験談を載せるのなら、事業者が調査をした人のうち、どのくらいの割合の人が体験談と同じような効果を得て、どのくらいの割合の人が効果を得られなかったのか。明瞭に表示すべきだとしたのです。努力義務ですが、これまでより一歩踏み込んだ形です。

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【これで、広告は変わるのでしょうか?】
消費者庁は、こうした考えを、今後、販売事業者や広告をつくる会社などに説明して、改善されなければ、積極的に摘発をするという姿勢を示しました。摘発された場合、去年できた新しい制度で、売り上げの3%分の課徴金をかけられるおそれもでてきます。これで、広告が実態を反映した内容に改善されるよう、消費者庁は、姿勢だけでなく、実際に悪質な広告については、きちんと摘発をしていってほしいと思います。

【消費者の立場でいうと、このような広告を見て、打消し表示に気づかずに買ってしまったという場合、解約しておカネを返してもらえるようになるのですか?】
打消し表示に気づかなかったというだけで、事業者に、おカネを返す義務が生じるというわけではありません。
ただ、打ち消しの表示が書いてあれば、免罪符になるわけではない。と、いうことを消費者庁が明確に示したわけですから、交渉しやすくなることは期待できます。

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直接の交渉で、事業者が返金に応じなくても、泣き寝入りをしないで、近くの消費生活センターに相談をしていただきたいと思います。全国共通で、188の番号に電話をすれば、身近な消費生活センターにつながるようになっています。あきらめずに、相談をしてください。

(今井 純子 解説委員)

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